えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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1章 黄巾の乱

役職に付くも長続きしない

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 劉備軍が黄巾残党軍を瓦解させ、下邳城に戻ると陶謙に手厚く迎えられる。
 陶謙「劉備殿、おかげで助かりましたぞ」
 劉備「いえ、毌丘毅殿が黄巾軍を受け止めてくれていたお陰です」
 毌丘毅「ちゃんと俺のことまで立ててくれるとは嬉しいねぇ」
 陶謙「ささやかですが料理をご用意致しましたのでお寛ぎください」
 張飛「飯とは気がきいてらぁ」
 関羽「翼徳、太守殿に向かって失礼だぞ」
 陶謙「ハハハ。良いのです。こちらは助けられた身、気にすることなどありませんぞ」
 毌丘毅「何進様に今回のことは報告させてもらうからよ。またどっかの役人に任命されちまうかもな」
 劉備「向いてない気がしますがご厚意に感謝致します」
 夜通し続いた宴も終わり、劉備たちは下密県の丞に任命され、新しい職場へと旅立った。丞とは県令を補佐する役職である。この時劉備と出会った陶謙は、劉備の人柄と人徳に惹かれ徐州に何かあれば真っ先に援軍として劉備を頼ることを固く誓ったのである。
 毌丘毅「俺はお前さんのこと買ってるからよ。また何かで一緒したらよろしく頼むわ」
 劉備「了解いたしました。次はもう忘れないと誓いましょう」
 毌丘毅「カカカ。是非そうしてくれや。また忘れられてたら悲しいからよ」
 毌丘毅。史実では、後に曹操に仕える毌丘一族の祖と知己となったのであった。
 劉備は下密県の丞に赴任すると公平な差配で瞬く間に民の指示を集めてしまった。これを快く思わない県令は、劉備を追い出してしまった。
 劉備「あのようなものが県令なのか」
 義賢「致し方ありません。天子様を宦官どもが傀儡としているせいでしょう。宦官に賄賂を贈るものを任命しているのです」
 張飛「じゃあ宦官ってやつをぶっ飛ばそうぜ」
 関羽「待て翼徳、事はそう簡単ではあるまい。宦官に刃を向ける事は天子様に刃を向けることと同義。兄者がそれをよしとするはずはない」
 劉備「雲長の申す通りだ。これからも公正でありつつ妬まれるのであれば流浪するとしよう」
 田豫「殿らしいな。そういうところに惹かれて集まった義勇兵だ」
 簡雍「そうですねぇ。まぁのんびり行きましょうや」
 麗「あまりのんびりだと皆年寄りになってしまいますわね」
 劉備「ハハハ。お前たちがいればなんとかなりそうな気がするよ」
 高唐県こうとうけんに差し掛かった時、賊に絡まれていた高齢の県令を助けたところ大層気に入られた劉備は、尉に任命される。尉とは軍事を司る役職で現実世界でいうところの警察に当たる。治安活動の活躍が認められ県令が病気でこの世を去ると後を託された。しかしここにも宦官の手先である賄賂要求の監察官が現れる。当然の如くそんな要求に従えるわけもない。突っぱねたところ、有る事無い事を報告され、追われる。
 劉備「漢はここまで腐敗していたのか」
 義賢「兄上、十常侍という宦官の集団のやりたい放題だそうです」
 張飛「やっぱりそんな奴らいっそのことぶっ飛ばしちまおうぜ」
 関羽「よさぬか翼徳。血気にはやると取り返しがつかぬぞ」
 田豫「殿、ここは知己である公孫瓚コウソンサン殿を頼るのは如何か?」
 劉備「兄弟子殿か」
 義賢「兄上、田豫殿の言に一理あるかと」
 簡雍「確かにあの御方なら殿を手荒に扱う事はしないでしょうなぁ」
 劉備「ふむ。久々に兄弟子殿の元に参るとしよう」
 劉備一向が幽州ゆうしゅうを治めていた公孫瓚を訪ねると快く迎え入れた。
 公孫瓚「弟弟子よ。久しいな」
 劉備「兄弟子殿も御健在で何よりです」
 公孫瓚「ハハハ。そうだ、劉備よ。盧植先生には我が軍の軍師を担ってもらっている。高誘コウユウも参謀として働いてくれているぞ」
 劉備「盧植先生が兄弟子殿の軍師ですか。それに高誘兄弟子まで加わっているとは」
 盧植「久しいな劉備よ。活躍は耳にしておったよ。ゴホゴホ」
 劉備「先生。お身体が」
 盧植「流行病というやつじゃ気にする事はない」
 高誘「劉備、壮健そうで何よりだ」
 劉備「高誘兄弟子、お会いできて嬉しいです」
 義賢「初めまして、兄上の弟で劉義賢と申します」
 張飛「俺は、大兄者の義弟で張翼徳ってんだ」
 関羽「某は、兄者の義弟で関雲長と申す」
 田豫「お久しぶりです公孫瓚殿」
 簡雍「公孫瓚殿、久しいねぇ」
 続けて周倉・廖化・裴元紹・龔都・劉辟・何儀・何曼・黄邵が挨拶をする。
 公孫瓚「ハハハ。我が弟弟子も今や立派な軍団の大将のようだな。ゆっくりくつろいでくれと言いたいところだがちと問題を抱えておってな。助けてもらいたいのだ」
 劉備「問題ですか?」
 公孫瓚「あぁ、反乱を起こした張純チョウジュン張挙チョウキョに呼応して烏桓族うがんぞくのリーダー兵力居キュウリキキョの対処で劉虞リュウグ殿と揉めてしまってな。俺は、異民族は滅ぼすべきと考えていて、劉虞殿は懐柔すべきだと」
 義賢「懐柔すべきです」
 公孫瓚「!?。どうしてだ。異民族を制御する事は不可能。ならば滅ぼす方が良しとすべきではないか」
 義賢「簡単な話です。漢王朝と深く繋がっている劉虞殿の顔を立ててあげるのです。対立しても損しかありません」
 公孫瓚「腐った漢王朝に従うべきだと言うのか?」
 義賢「えぇ。腐っても漢王朝がある以上それに連なるものと些細な事で対立すべきではありません。それに懐柔できるはずがないと考えているのなら後にそれを理由に劉虞殿の方から助けを求めてくるでしょう。その時に手を差し伸べれば劉虞殿の治める土地が楽に手に入るでしょう」
 公孫瓚「ハハハ。弟弟子にここまで先を語る弟があるとはな。お前の言に乗ることにしよう。公孫越コウソンエツよ。劉虞殿に手紙を届けよ」
 公孫越「はっ兄上」
 劉備「丁が生意気を言い。申し訳ありません兄弟子殿」
 公孫瓚「良いのだ。お前の弟の言う通りだ。争う必要はなかったのだ。霞が晴れたように清々しい。ありがとう」
 劉備「そう言っていただけるのなら幸いです」
 こうして、劉義賢は、公孫瓚と劉虞の争いを止めるファインプレーをしたのである。この結果が後の劉備に多大な影響を与えることをこの時はまだ誰も知らない。
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