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4章 三国鼎立

零陵奪還作戦(急)

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 息を潜めて待つ呂姫・張燕・魏越・成廉・太史慈の前に野営地から4人の男が飛び出してきた。呂姫はその顔を見て、山賊の頭だと皆に告げる。
 呂姫「アイツらよ」
 牛頭「見つけたぞ。もう逃さないぞ。ん?伏兵か。うりゃあ」
 魏越「なんて怪力だ。だが俺も負けてねぇ」
 牛頭「押し返されているだと。うがぁ。血が血が出ているじゃねぇか。斬られたってのか」
 牛頭の大きな巨体には、押し切られた自身の持つ大太刀が深々と突き刺さり、前のめりに突っ伏した。
 馬頭「牛頭にぃ、嘘だろ!」
 成廉「余所見してる暇はない。お前も地獄に送ってやる」
 馬頭「やれるものならやってみやがれ。おりゃあ」
 成廉「なかなかの力だな。だが、相手が悪かったな」
 馬頭「なにぃ?腕に力が入らねぇ。いや、腕だけじゃねぇ。これは血?血が出てるじゃねぇか。あばばばばば」
 馬頭の大きな身体には、成廉に弾き飛ばされた2本の双刀が胸と肩を貫いていた。
 阿傍「牛頭にぃも馬頭にぃもたわいもないな。これで、この娘は俺のもんだ」
 呂姫「恥を知りなさい!数々の女を弄んだ残酷な所業。この呂姫が決して許しません!」
 阿傍「へぇ、ますます良いね。お前、最高だよ。早く、お前の悲鳴を聞かせてくれーーーー」
 阿傍の持つ鋸を軽々と避け、呂姫が切り刻む。
 呂姫「貴方が女の子にしたみたいに、貴方の身体をゆっくりと死なない程度に切り刻んであげるから覚悟しなさい!」
 阿傍「指がぁぁぁぁぁぁぁぁ。手首はやめてくれーーーー。腕がぁぁぁぁぁぁぁぁ。足の指がぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。足首はやめてくれ、歩けなくなるだろうがーーーーー。足がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。もう許してください。お願いします。お願いしますから」
 呂姫「そう言ってた女の子に貴方は最後何をした!首を切り落としたわよね」
 阿傍「ギャァァァァァァァァァ」
 呂姫「この人間のクズが。地獄で、ずっと傷付けた女性たちに謝るのだな!」
 阿傍の身体をバラバラに解体した呂姫。その様子に多くの村人が頭を下げていた。不謹慎かもしれないが謝意である。
 羅刹「阿傍にぃまで、やられるなんて、嘘だろ!」
 太史慈「貴殿は、女性を馬のようにして乗るのが趣味だそうだな?」
 羅刹「なんだよ。だったらなんだってんだ」
 太史慈「否定はしないのだな。宜しい。では、自身が馬となって、狩人に追い立てられる側になっても文句はないな?」
 羅刹「おいおい、オッサン。誰だかしらねぇけどよ。うわっ危ねぇって。頬から血?ヒッ!」
 太史慈「どうした。逃げぬのであれば、次は命中させるが良いか?」
 羅刹「待てって、降伏するから待てって」
 太史慈「よく聞こえんな」
 羅刹「ギャァ。右のふくらはぎに矢が刺さって、上手く走れねぇ」
 太史慈「うむ。外したか。では次だ」
 羅刹「だから待てって、降伏するって言ってんだろうが!」
 太史慈「聞こえんな」
 羅刹「ギャァ、今度は左の太腿に矢が」
 バタリと倒れる羅刹。
 太史慈「やれやれ、走れなくなった馬は処分しなければならんな」
 羅刹「いやいや、待て待て。俺は馬じゃねぇ。それに馬だって走れなくなっても荷駄用になるだろうが!」
 太史慈「知らんな!お前は嫌がる女性たちを無理やり馬にして、挙げ句の果ては繁殖用の牝馬などと呼んでいた。そうだな?」
 羅刹「知らねぇ。俺はそんなことしてねぇ」
 太史慈「だそうだが?」
 女「ふざけんなこのクズ!」
 羅刹「お前も気持ち良い思いをしたんだから同意の上だろう。死にたくはないって言ってたからなぁ」
 太史慈「成程。そうやって、気に入った女を自分のものにするのがお前のやり方ということか。兄を利用して死か生かを選ばせるとは、汚い男だ」
 羅刹「ウルセェ。阿傍にぃよりマシだろ」
 太史慈「さて、では終いとしようか」
 羅刹「待て、俺は降伏するって言っただろ!それとも劉備軍は降伏する相手にこんな仕打ちをするってのか!そんなことが広まっちまって良いのかよ!」
 太史慈「安心せよ。このことを知る人間は皆死ぬ。知っているのは、お前たちに殺意を抱いているここの村人だけだ。彼らが誰かに話すと思うか?どうだ、俺と賭けをするか?」
 羅刹「待て、待てって、なっ。動けない相手を殺しても意味ないだろ?なっ。待てって。なぁ」
 太史慈「煩い奴だ。では、村人たちに判断を仰ぐとしようか?俺が手を下さなければ、劉備軍の悪評にはならんしな」
 村長「殺せ。殺せ。殺せ」
 女「こんなクズが生きてるなんて許せない!」
 男「俺の妻と娘に何をした。劉備軍が殺してくれないなら俺が殺してやる!」
 太史慈「安心せよ。お前たちの想いは俺が聞き届けた。我が殿は、民の声を大事にする御方。では、判決は出たようだ。残念だったな」
 羅刹「クソーーーーーーーーーー。どうせ死ぬならお前たちも道連れにしてやるーーーーーーーーーー。ふぐっ」
 太史慈の放った弓で右の前腕と左の上腕を貫かれ武器すら持てなくなり、へたり込んだところへトドメの一撃とばかりに頭を貫いた。
 太史慈「地獄に堕ちるがいい」
 村長や村人たちが劉備軍に御礼を言う。
 村長「こんな辺鄙な村を助けてくださり感謝致します」
 男「アンタたちがきてくれなかったらもっと地獄が続いてたと思うと」
 女「もっと早く来てくれていればと言いたい気持ちもあるけれど、これでようやくアイツらに弄ばれて死んだ友人を弔えます。ありがとう」
 太史慈「劉備軍を代表して、謝らせてもらう。こんなに遅れてしまい申し訳なかった。貴君らの我々を責めない心に感謝している。こちらこそ、感謝する」
 逃げてきた山賊も兵士たちが1人残らず討ち取り、零陵の奪還作戦は幕を閉じたのだった。
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