260 / 821
4章 三国鼎立
再び狙われる長沙
しおりを挟む
桂陽と零陵の同時侵攻を行い、手薄にしたのが災いとなった。長沙に槃瓠を首とする蛮夷の正統後継者である李杏が攻めてきたのだ。
趙範「劉丁殿、どうされるのだ?」
義賢「この展開は予想していなかった。黄忠殿と魏延殿だけで、どれほど耐えられるか」
邢道栄「俺のことを忘れてもらっては困るな」
義賢「子龍や玉鳳すら退ける化け物だ。皆に通達せよ。絶対に打って出るなと」
潘濬「しかし、城に篭っていても徐々に押し込まれるのは見えています」
義賢「わかっている。そんなことはわかっている(しかし、どうするあの化け物共を相手に、魏延殿と黄忠殿に打って出てもらうか?いや多勢に無勢だ。2人を失ってはそれこそ元も子もない。では、どうする攻城兵器は使い物にならないだろうし。白馬儀従で打って出てを繰り返すか?いや、弓をも畏れぬ蛮族の集まりだ。兄上も養子として可愛がっていて、俺も教え子として可愛がっている公孫続を討ち死にさせるわけにはいかない。いったい、どうすれば良い。何か何か策はないのか。何も思い付かない。死に戻るか。死に戻って、対策を考えるか?本当に良いのか?どこまで戻るかわからないのに賭けて、今、確実に良い方向に動いているはず。ここさえ、ここさえ、凌げれば武陵を制圧し、後顧の憂いなく益州へと侵攻できる。後一歩なのだ。益州さえ取れば、曹操との国力も逆転するはず。いったい、どうしたら良い?そもそも、なんであんな化け物共が歴史に名を残していないのか。それがわからん。なんなのだ槃瓠とやらは犬だったのではないのか?)」
潘濬「考えている間にも敵は迫っているのですよ劉丁殿」
魏延「1つだけ、アイツらを追い返す方法がある」
義賢「!?それはどんな。どんな方法なんだ!魏延殿」
魏延「俺を差し出すことだ」
義賢「!?そんなことできると思っているのか!」
魏延「しかし、俺さえ引き渡せばアイツらはきっと帰る。武陵も難なく手に入る」
義賢「何故、そこまで言い切れる?」
魏延「槃李杏」
義賢「???」
魏延「アイツの忌み嫌う名さ。槃瓠、所謂犬の血を引く化け物と子供の頃から平地では言われ。山奥に篭り、周りを自分の言うことを聞いてくれる人だけで固めた傷付きたくない裸のお姫様。そんな姫様にもなんでも話せる友人のような相手が1人居た」
義賢「魏延殿、さっきから何を」
魏延「俺もまた槃瓠の血を引く部族の生まれの者って事です。そして、槃李杏の友人。まぁ、そう思ってたのは俺だけみたいで、向こうは俺のことを融通の利く男としか思ってなかったみたいですけど。俺がアイツの元に帰れば、取り敢えずは治ります」
趙範「何故、そのような大事なことを黙っておった!」
潘濬「ここは、魏延殿を差し出すのが最良、ご決断を」
邢道栄「何言ってるんだ!今まで長沙が持ち堪えられたのは魏延殿のお陰だろうが。俺は反対だ」
金禕「えぇ、そのような不義理をすることには、賛同できかねる」
黄忠「魏延よ。お前、相変わらず不器用じゃな。要は、せっかく手に入れた自由を手放したくなかったんじゃろ。槃瓠の血が流れてるからなんじゃ。ワシにはお前に多大な恩がある。お前を差し出すぐらいなら共に死んでやるわい」
魏延「黄忠殿・邢道栄殿・金禕殿、感謝する。だが、それでも劉丁殿、ここは俺を槃李杏に差し出してください。それで、この長沙の攻撃を取りやめてくれる」
義賢「わかった」
魏延「劉丁殿、少しな間でしたが共に戦えたことを誇りに思う。劉備殿にもよろしくお伝えください」
魏延は城壁に立ち大声を上げる。
魏延「槃李杏、お前の狙う魏延はここにいるぞ」
李杏「その名前で呼ぶなって言ってんでしょうが」
魏延「知るか。俺の命がそんなに欲しいか?」
李杏「欲しいわよ。いけない。ここまでするほど欲しいのよ。わかってよ」
魏延「俺が投降すると言えば長沙の攻撃を取りやめ、武陵からも撤退し、山奥に戻ると約束するか?」
李杏「えぇ、それなら勿論。うん。魏延が帰ってきてくれるなら。やめまーす」
魏延「わかった。では、今すぐ攻撃をやめよ。投降してやる」
李杏「えっホント。はーい、みんな~お仕事ご苦労様~。帰るよ~」
鯨胡「御意」
猿鴎「やれやれ、ようやく終わったか」
牙狼「ようやく帰れるぜ」
兎臥「姫様~良かったねぇ」
羊潜「帰って水浴びしなきゃ」
牛齕「ちと暴れたらねぇが姫様の命令なら仕方ねぇ」
鶏欒「えっ帰るのか?マジで」
???「邪魔な奴らも排除できましたし、これで良いでしょう」
???「零陵蛮の奴らもあの山賊も目に余りましたからなぁ」
李杏「うんうん。狐娘《コジョウ》ちゃんと狸老《リロウ》の爺ちゃんも協力ありがとね」
狐娘「良いのですよ姫様のためでしたら」
狸老「姫様の満足できる結果となったのならそれで良いのじゃ」
これを城壁の上から見る面々。
義賢「嘘だろ?アイツら、城攻めをただのピクニックだとでも思ってんのか?」
潘濬「遠足?それは何ですか?」
義賢「あっいや。見晴らしの良いところでご飯を食べるぐらいの気分で城攻めしてたのかよって思ってな」
潘濬「なるほど、確かに。魏延殿が投降すると言った一言で攻撃が止みましたから」
趙範「何はともあれ、これで少しは安心だ」
邢道栄「後味の良いものではないがな」
金禕「魏延殿を身代わりに平和を得るなど屈辱でしかない」
魏延「では、劉丁殿・黄忠殿、世話になった。これにて、ごめん」
魏延が李杏の元に行き、長沙に攻め寄せた蛮夷が撤退したのだった。
趙範「劉丁殿、どうされるのだ?」
義賢「この展開は予想していなかった。黄忠殿と魏延殿だけで、どれほど耐えられるか」
邢道栄「俺のことを忘れてもらっては困るな」
義賢「子龍や玉鳳すら退ける化け物だ。皆に通達せよ。絶対に打って出るなと」
潘濬「しかし、城に篭っていても徐々に押し込まれるのは見えています」
義賢「わかっている。そんなことはわかっている(しかし、どうするあの化け物共を相手に、魏延殿と黄忠殿に打って出てもらうか?いや多勢に無勢だ。2人を失ってはそれこそ元も子もない。では、どうする攻城兵器は使い物にならないだろうし。白馬儀従で打って出てを繰り返すか?いや、弓をも畏れぬ蛮族の集まりだ。兄上も養子として可愛がっていて、俺も教え子として可愛がっている公孫続を討ち死にさせるわけにはいかない。いったい、どうすれば良い。何か何か策はないのか。何も思い付かない。死に戻るか。死に戻って、対策を考えるか?本当に良いのか?どこまで戻るかわからないのに賭けて、今、確実に良い方向に動いているはず。ここさえ、ここさえ、凌げれば武陵を制圧し、後顧の憂いなく益州へと侵攻できる。後一歩なのだ。益州さえ取れば、曹操との国力も逆転するはず。いったい、どうしたら良い?そもそも、なんであんな化け物共が歴史に名を残していないのか。それがわからん。なんなのだ槃瓠とやらは犬だったのではないのか?)」
潘濬「考えている間にも敵は迫っているのですよ劉丁殿」
魏延「1つだけ、アイツらを追い返す方法がある」
義賢「!?それはどんな。どんな方法なんだ!魏延殿」
魏延「俺を差し出すことだ」
義賢「!?そんなことできると思っているのか!」
魏延「しかし、俺さえ引き渡せばアイツらはきっと帰る。武陵も難なく手に入る」
義賢「何故、そこまで言い切れる?」
魏延「槃李杏」
義賢「???」
魏延「アイツの忌み嫌う名さ。槃瓠、所謂犬の血を引く化け物と子供の頃から平地では言われ。山奥に篭り、周りを自分の言うことを聞いてくれる人だけで固めた傷付きたくない裸のお姫様。そんな姫様にもなんでも話せる友人のような相手が1人居た」
義賢「魏延殿、さっきから何を」
魏延「俺もまた槃瓠の血を引く部族の生まれの者って事です。そして、槃李杏の友人。まぁ、そう思ってたのは俺だけみたいで、向こうは俺のことを融通の利く男としか思ってなかったみたいですけど。俺がアイツの元に帰れば、取り敢えずは治ります」
趙範「何故、そのような大事なことを黙っておった!」
潘濬「ここは、魏延殿を差し出すのが最良、ご決断を」
邢道栄「何言ってるんだ!今まで長沙が持ち堪えられたのは魏延殿のお陰だろうが。俺は反対だ」
金禕「えぇ、そのような不義理をすることには、賛同できかねる」
黄忠「魏延よ。お前、相変わらず不器用じゃな。要は、せっかく手に入れた自由を手放したくなかったんじゃろ。槃瓠の血が流れてるからなんじゃ。ワシにはお前に多大な恩がある。お前を差し出すぐらいなら共に死んでやるわい」
魏延「黄忠殿・邢道栄殿・金禕殿、感謝する。だが、それでも劉丁殿、ここは俺を槃李杏に差し出してください。それで、この長沙の攻撃を取りやめてくれる」
義賢「わかった」
魏延「劉丁殿、少しな間でしたが共に戦えたことを誇りに思う。劉備殿にもよろしくお伝えください」
魏延は城壁に立ち大声を上げる。
魏延「槃李杏、お前の狙う魏延はここにいるぞ」
李杏「その名前で呼ぶなって言ってんでしょうが」
魏延「知るか。俺の命がそんなに欲しいか?」
李杏「欲しいわよ。いけない。ここまでするほど欲しいのよ。わかってよ」
魏延「俺が投降すると言えば長沙の攻撃を取りやめ、武陵からも撤退し、山奥に戻ると約束するか?」
李杏「えぇ、それなら勿論。うん。魏延が帰ってきてくれるなら。やめまーす」
魏延「わかった。では、今すぐ攻撃をやめよ。投降してやる」
李杏「えっホント。はーい、みんな~お仕事ご苦労様~。帰るよ~」
鯨胡「御意」
猿鴎「やれやれ、ようやく終わったか」
牙狼「ようやく帰れるぜ」
兎臥「姫様~良かったねぇ」
羊潜「帰って水浴びしなきゃ」
牛齕「ちと暴れたらねぇが姫様の命令なら仕方ねぇ」
鶏欒「えっ帰るのか?マジで」
???「邪魔な奴らも排除できましたし、これで良いでしょう」
???「零陵蛮の奴らもあの山賊も目に余りましたからなぁ」
李杏「うんうん。狐娘《コジョウ》ちゃんと狸老《リロウ》の爺ちゃんも協力ありがとね」
狐娘「良いのですよ姫様のためでしたら」
狸老「姫様の満足できる結果となったのならそれで良いのじゃ」
これを城壁の上から見る面々。
義賢「嘘だろ?アイツら、城攻めをただのピクニックだとでも思ってんのか?」
潘濬「遠足?それは何ですか?」
義賢「あっいや。見晴らしの良いところでご飯を食べるぐらいの気分で城攻めしてたのかよって思ってな」
潘濬「なるほど、確かに。魏延殿が投降すると言った一言で攻撃が止みましたから」
趙範「何はともあれ、これで少しは安心だ」
邢道栄「後味の良いものではないがな」
金禕「魏延殿を身代わりに平和を得るなど屈辱でしかない」
魏延「では、劉丁殿・黄忠殿、世話になった。これにて、ごめん」
魏延が李杏の元に行き、長沙に攻め寄せた蛮夷が撤退したのだった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?
九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。
で、パンツを持っていくのを忘れる。
というのはよくある笑い話。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる