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4章 三国鼎立
槃瓠族の恐ろしさ
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義賢は、しかし歩みを止めない。朝を迎え、さらに山奥へと進軍を開始する。その行手には広大な森が広がっていた。
義賢「奇襲に最適の場所がありながら麓で迎撃してきたということは、ここにも敵兵が」
牛齕「正解。正解。この牛齕様がお前らの生き血を吸いにきてやったぜ。今宵の牛切り包丁は、血を求めてやがる」
鶏欒「兄貴の気持ちもわからないでもねぇ。なんたって、ようやく俺たちの出番なんだからなぁ」
羊潜「牛齕にぃも鶏ちゃんも無理したらダメだからね」
鶏欒「ホント過保護な姉ちゃんだぜ」
張郃「今度こそ、遅れは取らぬ」
牛齕「おぅおぅ。兎臥から聞いてたがよ。弱い弱い弱い弱すぎる!」
牛齕の牛切り包丁により、剣を弾かれ、飛ばされる張郃。
張郃「ぐっ。どうして、なんで、こんなに力の差が?」
羊潜「自分すらも偽って弱さを認められない人に強さなんてついてくるのかしら。まぁ、今から死ぬ貴方には関係ないことだけどね」
張郃に迫る羊潜を止める高覧。
高覧「行かせねぇ。この俺がいる限り張郃を殺させはしねぇ」
羊潜「へぇ、あの子よりよっぽど楽しめそうな人」
張郃「高覧、待て」
牛齕「おいおい。余所見してんじゃねぇよ。俺は眼中にねぇってか?テメェみてぇな雑魚が一番気に障るんだ」
張郃「雑魚だと?この俺が雑魚だと?(いや、しかし確かに最近、そうかもしれない。晒しを巻く胸の締め付けは一層苦しいし、零陵蛮の王と名乗る慚戯には、一撃で沈められ、あまつさえ性奴隷にされかけた。そして、麓ではいきなり現れた蛮族に剣ごと吹き飛ばされた。そして今回もまた。どうして、私には勝てないというの?私が雑魚だから?ここで諦めて良いの?高覧はこんな私でも見捨てずに今も守ってくれているのに。私はこんなので良いの?強くならなきゃ。殻を破らなきゃ。高覧にまた頼ってもらえるように)」
張郃は、巻いていた晒しを解いた。
高覧「張郃、何してんだ。お前」
羊潜「あら、殻を脱皮したみたいね。牛齕にぃ、油断しちゃダメよ」
張郃「これで良いのよ高覧。河間の張儁乂、ここにあり。腕に覚えがあるのならかかってきなさい」
牛齕「へぇ、戦の中で力を解放するとは、気に入った。この牛齕様がお相手いたそう」
先ほどのように一瞬で剣が吹き飛ばされるということもなく数合打ち合いを続ける。
牛齕「この牛齕様とこんなに打ち合うとはやるじゃねぇの」
張郃「ハァハァハァハァ(私にこんな力がまだ眠っていたなんて、そうか自分を偽るか。そんなのはもうやめよ。私は女であり、河間の張儁乂なんだから)」
牛齕「どうやら力を解放したばかりでよっぽど疲れていると見える。楽しませてくれた礼だ。この場はこの牛齕様がお前に勝ちを譲ってやるとしよう。さらに研鑽を積んで、この俺を楽しませてみろ」
張郃「ハァハァハァハァ。待て、逃げるのか」
その様子を見ていた羊潜も撤退をする。
羊潜「ほら、君。早く行ってあげなよ」
高覧「お前、さっきも張郃に覚醒を促すような発言をしてたよな。敵なのにどういう了見だ」
羊潜「さぁ、でも応援したいじゃない。あぁいう、殻を破りきれてない子って」
高覧「そして、今は見逃すとかいう」
羊潜「だって、私たちの役目は終わったもの」
高覧「ん?」
高覧は羊潜の最後の言葉に疑問を覚えながらも張郃の元に駆けつける。
高覧「張郃、無事か?」
張郃「えぇ、無事よ」
高覧「いや男の口調に戻ってない。これは重症だ」
張郃「良いのよ。もう自分を偽るのはやめにしたの」
高覧「馬鹿野郎、そんなことしたら俺だけの張郃じゃなくなるだろうが」
張郃「高覧、いつも私のことを守ってくれてありがとう。大好きだよ。これで良い?」
高覧「おっおぅ。俺も大好きだぜ張郃。いや儁乂」
その頃、義賢本隊は猿鴎の急襲を受けていた。
義賢「なんて爺さんだ」
猿鴎「どうしたどうした若いの。その程度かいの」
黄忠「劉丁殿」
鶏欒「おーっと、猿鴎爺ちゃんのところにはいかせねぇぜ」
義賢の弓をとんでもない反射神経で避けて、確実に近づいて、攻撃を加える猿鴎だが、義賢には当たらない。義賢の乗る黝廉が的確に攻撃を逸らしていたのだ。
猿鴎「良い馬に乗っておるな」
義賢「黝廉のことか」
猿鴎「ほぅ、馬に名を付ける若者が居ようとは、動物を大事にするとは、良い若者じゃ。感動した。良いぞ良いぞ。その動物愛に敬意を称して、ここは退いてやろう」
義賢「待て、散々、兵らを惨殺しておいて、退くだと。許せると思っているのか!」
猿鴎「何を言っておる?お前は戦で人が死なぬとでも思っておるのか?甘い甘い甘すぎる。そんなので、この槃瓠族に喧嘩を売るとは、この馬鹿者が」
猿鴎の拳が義賢を捉え、吹っ飛ばされる。
猿鴎「甘ったれるなよ小僧。仮にもこの大軍を預かる将であろう。コイツらの想いを汲んで立ち上がったのであろう。なのに、なのになんだその腑抜けた心は、戦を舐めているのか?この阿呆が」
黄忠「劉丁殿、貴様どくのじゃ」
鶏欒「嫌だなぁ」
黄忠「劉丁殿、もう暫く耐えるのじゃ(なんというすばしっこい男じゃ。弓が全く当たらぬ)」
鶏欒「まぁ、もう良いけどね。猿鴎の爺ちゃんが撤退を命じたからよぉ」
鶏欒も武装を解き退いていく。黄忠は吹っ飛ばされた義賢に近付く。
義賢「うっ」
黄忠「良かった。まだ息があるわい。安心せい。黝廉とやら、お前の御主人様は死んでおらん」
黝廉「ヒヒーン(良かった。良かった。義賢様に何かあったら董白ちゃんになんて言えば良いのかと)」
やがて目を覚ました義賢は、周りを見てまた驚愕する。4万居た兵のうちの1万がまた屍となって築かれていたのだ。
義賢「奇襲に最適の場所がありながら麓で迎撃してきたということは、ここにも敵兵が」
牛齕「正解。正解。この牛齕様がお前らの生き血を吸いにきてやったぜ。今宵の牛切り包丁は、血を求めてやがる」
鶏欒「兄貴の気持ちもわからないでもねぇ。なんたって、ようやく俺たちの出番なんだからなぁ」
羊潜「牛齕にぃも鶏ちゃんも無理したらダメだからね」
鶏欒「ホント過保護な姉ちゃんだぜ」
張郃「今度こそ、遅れは取らぬ」
牛齕「おぅおぅ。兎臥から聞いてたがよ。弱い弱い弱い弱すぎる!」
牛齕の牛切り包丁により、剣を弾かれ、飛ばされる張郃。
張郃「ぐっ。どうして、なんで、こんなに力の差が?」
羊潜「自分すらも偽って弱さを認められない人に強さなんてついてくるのかしら。まぁ、今から死ぬ貴方には関係ないことだけどね」
張郃に迫る羊潜を止める高覧。
高覧「行かせねぇ。この俺がいる限り張郃を殺させはしねぇ」
羊潜「へぇ、あの子よりよっぽど楽しめそうな人」
張郃「高覧、待て」
牛齕「おいおい。余所見してんじゃねぇよ。俺は眼中にねぇってか?テメェみてぇな雑魚が一番気に障るんだ」
張郃「雑魚だと?この俺が雑魚だと?(いや、しかし確かに最近、そうかもしれない。晒しを巻く胸の締め付けは一層苦しいし、零陵蛮の王と名乗る慚戯には、一撃で沈められ、あまつさえ性奴隷にされかけた。そして、麓ではいきなり現れた蛮族に剣ごと吹き飛ばされた。そして今回もまた。どうして、私には勝てないというの?私が雑魚だから?ここで諦めて良いの?高覧はこんな私でも見捨てずに今も守ってくれているのに。私はこんなので良いの?強くならなきゃ。殻を破らなきゃ。高覧にまた頼ってもらえるように)」
張郃は、巻いていた晒しを解いた。
高覧「張郃、何してんだ。お前」
羊潜「あら、殻を脱皮したみたいね。牛齕にぃ、油断しちゃダメよ」
張郃「これで良いのよ高覧。河間の張儁乂、ここにあり。腕に覚えがあるのならかかってきなさい」
牛齕「へぇ、戦の中で力を解放するとは、気に入った。この牛齕様がお相手いたそう」
先ほどのように一瞬で剣が吹き飛ばされるということもなく数合打ち合いを続ける。
牛齕「この牛齕様とこんなに打ち合うとはやるじゃねぇの」
張郃「ハァハァハァハァ(私にこんな力がまだ眠っていたなんて、そうか自分を偽るか。そんなのはもうやめよ。私は女であり、河間の張儁乂なんだから)」
牛齕「どうやら力を解放したばかりでよっぽど疲れていると見える。楽しませてくれた礼だ。この場はこの牛齕様がお前に勝ちを譲ってやるとしよう。さらに研鑽を積んで、この俺を楽しませてみろ」
張郃「ハァハァハァハァ。待て、逃げるのか」
その様子を見ていた羊潜も撤退をする。
羊潜「ほら、君。早く行ってあげなよ」
高覧「お前、さっきも張郃に覚醒を促すような発言をしてたよな。敵なのにどういう了見だ」
羊潜「さぁ、でも応援したいじゃない。あぁいう、殻を破りきれてない子って」
高覧「そして、今は見逃すとかいう」
羊潜「だって、私たちの役目は終わったもの」
高覧「ん?」
高覧は羊潜の最後の言葉に疑問を覚えながらも張郃の元に駆けつける。
高覧「張郃、無事か?」
張郃「えぇ、無事よ」
高覧「いや男の口調に戻ってない。これは重症だ」
張郃「良いのよ。もう自分を偽るのはやめにしたの」
高覧「馬鹿野郎、そんなことしたら俺だけの張郃じゃなくなるだろうが」
張郃「高覧、いつも私のことを守ってくれてありがとう。大好きだよ。これで良い?」
高覧「おっおぅ。俺も大好きだぜ張郃。いや儁乂」
その頃、義賢本隊は猿鴎の急襲を受けていた。
義賢「なんて爺さんだ」
猿鴎「どうしたどうした若いの。その程度かいの」
黄忠「劉丁殿」
鶏欒「おーっと、猿鴎爺ちゃんのところにはいかせねぇぜ」
義賢の弓をとんでもない反射神経で避けて、確実に近づいて、攻撃を加える猿鴎だが、義賢には当たらない。義賢の乗る黝廉が的確に攻撃を逸らしていたのだ。
猿鴎「良い馬に乗っておるな」
義賢「黝廉のことか」
猿鴎「ほぅ、馬に名を付ける若者が居ようとは、動物を大事にするとは、良い若者じゃ。感動した。良いぞ良いぞ。その動物愛に敬意を称して、ここは退いてやろう」
義賢「待て、散々、兵らを惨殺しておいて、退くだと。許せると思っているのか!」
猿鴎「何を言っておる?お前は戦で人が死なぬとでも思っておるのか?甘い甘い甘すぎる。そんなので、この槃瓠族に喧嘩を売るとは、この馬鹿者が」
猿鴎の拳が義賢を捉え、吹っ飛ばされる。
猿鴎「甘ったれるなよ小僧。仮にもこの大軍を預かる将であろう。コイツらの想いを汲んで立ち上がったのであろう。なのに、なのになんだその腑抜けた心は、戦を舐めているのか?この阿呆が」
黄忠「劉丁殿、貴様どくのじゃ」
鶏欒「嫌だなぁ」
黄忠「劉丁殿、もう暫く耐えるのじゃ(なんというすばしっこい男じゃ。弓が全く当たらぬ)」
鶏欒「まぁ、もう良いけどね。猿鴎の爺ちゃんが撤退を命じたからよぉ」
鶏欒も武装を解き退いていく。黄忠は吹っ飛ばされた義賢に近付く。
義賢「うっ」
黄忠「良かった。まだ息があるわい。安心せい。黝廉とやら、お前の御主人様は死んでおらん」
黝廉「ヒヒーン(良かった。良かった。義賢様に何かあったら董白ちゃんになんて言えば良いのかと)」
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