えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
450 / 821
4章 三国鼎立

間話⑦ 呂姫と袁燿

しおりを挟む
 劉備が益州を平定した後、徐州都督となった呂布が本拠地としている下邳城にて、呂布の娘である呂姫と劉備の養子である袁燿の婚姻が執り行われようとしていた。

 呂姫「父上、母上、今まで育ててくださりありがとうございました」

 呂布「我が姫よ。俺は、てっきり劉丁殿のことが好きなのだと思っていたが袁燿殿を選ぶとはな。心境の変化でもあったか?」

 厳氏「まぁまぁ旦那様ったら。そのようなことをお聞きになるなんて無粋ですわよ」

 貂蝉「厳様の言う通りです。人の心は移り変わるものです」

 呂姫「父上のおっしゃる通り、義賢様に恋をしておりました。でも義賢様と董白様の間に入ることなんて、敵いませんもの。理想のお二人です」

 呂布「劉丁殿も罪な御人だな。色々な女性に好意を寄せられようとも董白様一筋なのだからな」

 厳氏「董卓に育てられていては、あぁはならないでしょう。あのツンとした態度と劉丁殿にだけデレるところなんて可愛らしいですもの」

 呂布「女性陣から見たらそういうものか」

 呂姫「えぇ。あの態度が全員だと何愛嬌振り撒いてんのよとか思いますけどあくまで義賢様にだけですから」

 貂蝉「心得ておられるのでしょう。霊帝様も良き孫娘を育てられましたね」

 呂布「その人物を董卓として、義父の敵と殺す運命にならなかったこと。劉備様には感謝しかない。例えこの身に変えようともこの徐州は死守する所存だ」

 荀攸「叔父上にこの徐州の軍師を任されている俺がいる限りそうはなりませんから御心配なく」

 呂布「全く、自信は良いが慢心はするなよ荀攸」

 陳登「呂布様、劉備様たちが張遼殿と共に到着したそうです」

 呂布「承知した。陳登、お前にも苦労をかけた。引き続き、孫翊の動きの警戒を任せたぞ」

 陳登「はっ。お任せを」

 呂布「待て、陳登。孫堅殿や孫権殿にも恨みはあるだろうが今は共に劉備様を支える仲間だ。許せとは言わないが徐州を守る上で、劉備様の治める荊州と交州を治める孫堅殿との協力は大事だ」

 陳登「御安心を。もう私情に流される事はありません。亡き父にも固く言い含められましたから」

 呂布「陳珪殿か。最後の最後まで劉備様の天下を望んでおられたな。だがこのご時世において、戦ではなく寿命による天寿を全うされたことは、喜ばしい事だ」

 陳登「はい。俺もそのように思います。では、孫翊の警戒に戻ります。呂布様、此度の姫様と袁燿様の婚姻、おめでとうございます」

 呂布「ありがとう陳登。守りは任せたぞ」

 陳登「はっお任せください。徐州の地に孫翊を踏み込ませはしません」

 劉備たちの到着を知らせた陳登は、孫翊の抑えのためにお祝いの言葉だけを述べて、戻っていく。

 張遼「呂布様、御無沙汰しております」

 呂布「よく来たな張遼。袁紹との戦いでは、徐晃と共に関羽殿の補佐を務めた事、この徐州にまで轟いていたぞ」

 張遼「良い経験ができたと思っております。この度、荊州の郡の一つを預かる太守となりました。揚州北部を任される事となった袁燿様共々、呂布様の補佐を出来れば」

 呂布「そう堅くなる必要はない張遼よ。お前が側に太守として、いる事心強く思う。今日は来てくれて感謝する」

 張遼「姫様の晴れ舞台を見ないわけにいきませんからな。元傅役として」

 呂姫「あっ張遼。袁燿は?」

 張遼「姫様!それが。先程から緊張しておりまして、劉丁殿と何やら会話しておられました」

 呂姫「そうなんだ。何を緊張しているのかしら?」

 張遼「その。何と言いますか。ちょっとナヨっとしておりましたな」

 呂姫「ふーん」

 その頃、袁燿は養父である劉備ではなく、叔父でありヨシカタ塾の先生でもある義賢に泣きついていた。

 袁燿「叔父上~。あんなに綺麗な人が僕の妻だなんて、その初めての夜の事とか。満足させてあげられるかとか色々、考えてしまうと、うっうぅ」

 義賢「はぁ。まぁ、そうだよな。俺が董白と結婚した時は、ん?俺、祝言あげたっけ?」

 袁燿「叔父上!それはどうなんですか!董白叔母、ゴホン、董白姉様は、何も?」

 義賢「まぁプロポーズはしたな。あっ婚約の誓いな」

 袁燿「成程。失礼でなければどのように?」

 義賢「俺の妻になってくれだったかな?」

 袁燿「叔父上、直球ですね」

 義賢「まぁ、それ以外の言葉を知らなかったしな。まぁ、断られたんだがな」

 袁燿「えっ?それなのにどうして今、2人は一緒に?」

 義賢「妻は嫌だと側室なら良いってな。でも、俺は董白以外に妻を取るつもりはない。そういう意味では、婚約はしてないのか?よくわからん俺も。だが、そんなものだ。そんな中、お前は呂姫と祝言を上げるんだ。後のことなんて考えず今を楽しめ」

 袁燿「なんか叔父上より俺の方がまともな気がしてきました。ありがとうございます」

 義賢「いや、それどういう意味だ袁燿?」

 袁燿「何でもありません」

 義賢「まぁ、良いか。袁燿、結婚おめでとう。幸せにな」

 袁燿「叔父上、袁術の子でありながら。ヨシカタ塾で色々と御指導くださったこと忘れません。ありがとうございました」

 義賢「お前はいつまでも過去に囚われすぎだ」

 袁燿「父の罪を背負いこむ覚悟ですから」

 義賢「難儀な性格だな」

 袁燿「えぇ、俺もそう思います」

 ようやく吹っ切れた袁燿と呂姫の婚姻の儀が執り行われる。

 劉備「このめでたき日に我が息子が祝言をあげる事、とても嬉しく思う。袁燿、呂姫殿を大切にせよ。揚州北部の統治はお前に任せる。前任である紀霊と共に民に優しい統治をせよ」

 袁燿「はっ。父上の期待に応えられるように善処いたします」

 呂姫「夫を誠心誠意お支えします」

 劉備「うむ。2人の幸せを祈って乾杯」

 張飛「待ってたぜ」

 呂布「張飛殿、飲みすぎるなよ」

 張飛「めでたい席で酔わないなんて男じゃねぇ!」

 関羽「翼徳よ。呂布殿も飲むなとは言っておらんだろう。羽目を外しすぎるなと」

 張飛「兄者まで固いってんだ。俺は飲むぜ。何たって、兄者の子供と苦労した呂布殿の娘の婚姻なんだからよ」

 呂布「張飛殿。そう言われては何も言えませんな。暴れたら俺が止めよう」

 関羽「やれやれ、仕方ない。某も手を貸しますぞ呂布殿」

 呂布「感謝する」

 飲んで騒いで呂姫と袁燿の2人を祝う。

 呂姫「袁燿、どうしたの?」

 袁燿「りょりょりょ呂姫!?!?」

 呂姫「何慌ててるのよ」

 袁燿「叔父上には敵わないなって、呂姫はどうして叔父上ではなく俺を選んでくれたの?」

 呂姫「そんなの決まってるじゃない。愛するよりも愛される方が幸せだから。義賢様は、女が手を出しちゃダメな典型例よ。1番大切な人しかあの人の目には映らないんだから」

 袁燿「俺の目には呂姫しか映ってないよ」

 呂姫「もう、さりげなくそういうこと言うんだから。でもありがと。さっきはあんな言い方したけど袁燿の事、好ましいと思っているわ。そうじゃなければ、結婚しないわよ」

 袁燿「俺を選んでくれた事、後悔させないように頑張るよ」

 呂姫「ほんと袁燿は真面目ね。ヨシカタ塾で一緒に習った時から全く変わってないんだから。大丈夫よ。袁燿が苦手なことは私がやるから。一緒に成長しましょ」

 袁燿「うん」

 こうして、呂姫と袁燿は夫婦となり揚州北部を統治することとなった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

処理中です...