えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
454 / 821
5章 天下統一

雍闓・朱褒の反乱に与しない高定

しおりを挟む
 南蛮軍と睨み合いをしていた雍闓・朱褒・高定の3人が張任によって、劉璋が討たれたのを知った直後。

 雍闓「張任のクソ野郎が!!!劉璋様への恩を忘れて、劉備なんぞに尻尾を振って、闇討ちしやがって、絶対に殺してやる」

 朱褒「待たれよ雍闓殿。このまま攻め上がっても今や戦況は覆せん。ここは、忌々しい南蛮と和睦して、益州郡へと帰り、劉備に従わずに反乱を起こすのが良い。勿論、高定殿も越巂郡に戻り、共に戦ってくれますな?」

 高定「えぇ、勿論、劉璋様に受けた御恩に報いましょう」

 雍闓「そうと決まればとっとと和睦するぞ。使者は高定、お前んところの鄂煥にやらせろ。情があるみたいだしな」

 高定「心得ました。鄂煥、頼めるか?」

 鄂煥「高定様の頼みとあれば」

 高定「待て、鄂煥」

 高定は鄂煥を呼び止めると耳元で鄂煥にだけ聞こえるように何かを呟いた。

 鄂煥「承知しました」

 高定「頼んだぞ」

 鄂煥が使者として旅立つ。

 雍闓「こそこそ何話してたんだよ」

 高定「和睦するにあたって、揉めないように全面的に要求を飲むようにと」

 雍闓「何、勝手に決めてやがんだ!蛮族如きに頭下げれるかよ!」

 朱褒「雍闓殿、待たれよ。南蛮がまだ劉璋様の死を知っていない今だからこそ多少の損を取ったとしても早急に和睦して、領内へと戻り劉備に抗う必要があるだろう」

 雍闓「チッ。高定、テメェが多く支払え」

 高定「言い出しっぺなのだから甘んじて受け入れよう」

 雍闓「ケッ。気に食わねぇ。俺は今すぐにでも劉璋様の仇を取りたいってのによ。お前の顔は冷静すぎなんだよ!」

 高定「もう劉璋様は、既に死んでいるというのに急ぐ必要などない。劉備は反乱軍によって迎え入れられ。いや、勝てば官軍だな。勢力図も大きく変わり、我々は益州郡と越巂郡のみとなり、今度は我々が反乱軍となるのだから」

 雍闓「ふざけんじゃねぇ!この益州の主は、劉璋様だけだ。劉璋様に仕えている俺たちこそが官軍だ。勝てば官軍などとふざけたことを抜かすんじゃねぇぞ」

 朱褒「その通りだ。高定殿、今の言葉は、我々の士気が大きく下がることを御理解していただきたい」

 高定「すまなかった。だが、現実を理解していない雍闓殿に腹が立っただけだ。相手は強大な劉備軍。南蛮と通じていた可能性もある。そうなれば、我らは挟み撃ちとなり、殲滅されるのを待つだけだ。それゆえ、南蛮の和睦条件を全面的に飲むようにと厳命したのだ。それに、反乱軍だった者たちは、劉備を快く迎え入れ、益州の統治を頼むだろう。それに引き換えこちらは担ぐ神輿すらない」

 雍闓「神輿が必要なら劉璋様の息子を立てれば良いだけだろうが!さっきからテメェには、やる気が全く感じられねぇんだよ。わかってんのか?劉璋様の敵討ちするってんだ。日和ってんじゃねぇよ」

 伝令から2人に更なる情報がもたらされる。

 伝令「会議中、失礼します。劉璋様が亡くなられた知らせを受けた劉循様が劉備に降伏」

 高定「こちらが反乱軍になることが決まったな」

 雍闓「クソッタレが。劉璋様を殺した相手に降伏するとか何考えてんだ!こうなったら皆殺しだ。劉璋様もあの世で寂しくしてるだろうからな」

 朱褒「だが担ぐ神輿を失ったのは大きい。孤立した我らが各個撃破されるのも時間の問題だ。ここは、攻めるのを辞めて籠城するのが1番可能性が高いだろう。俺と雍闓殿は、益州郡にて。高定殿は越巂郡にて」

 高定「反論の余地はなさそうだ。承知した」

 雍闓「クソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソクソがーーーーーーーーーー」

 その頃、高定から命を受けて、南蛮の元に和睦の使者として現れた鄂煥。

 阿会喃「おぅおぅ。俺たちの本部に1人で殴り込みか?さぞかし良い悲鳴を聞かせてくれんだろうなぁ」

 董荼那「退屈からの解放、いざ戯れようぞ」

 金環三結「死合おうぞ」

 孟獲「やめろやめろ馬鹿兄弟共。そこのお前、先程は、コイツらを相手に見事な戦いだったな。で俺に用があるんだろう?」

 鄂煥「ようやく話のわかるニンゲンが出てきてくれて助かったと思ったが。そうか貴殿が大王か」

 孟獲「まぁ、そう呼ばれることもあるな。話を聞こうか」

 鄂煥「我々は貴殿と和睦したい」

 孟獲「まぁ、妥当だわな。劉璋が死に切羽詰まってるってところか」

 鄂煥「!?どうしてそれを?」

 孟獲「おっ図星だったみてぇだな。たまにはカマをかけてみるもんだ。劉璋が死んだのがわかって、俺が引く利点は無いわな。だがそうだな。益州と越巂の2つから全面撤退するってんなら和睦に応じてやっても良い」

 鄂煥「越巂だけで勘弁してもらいたい」

 孟獲「ほぉ。お前の主の名前は、何だ?」

 鄂煥「高定様だ」

 孟獲「合格だ。民のために働く者を我らの真の王はお見捨てにはならない。貴殿の和睦に応じよう。だが、わかっているな。愚かな決定を下した残りの2人に関して、どうすれば良いか?」

 鄂煥「高定様に伝えよう。して、真の王とは?」

 孟獲「さぁ、それは楽しみにとっておくが良い」

 2人の中で読み合いが行われていたのだ。鄂煥は、高定から南蛮に寝返りの算段を付けるようにと命じた。高定は南蛮の動きを見て、誰かと連動していることを理解していた。その相手は、反乱軍を束ねる法正や呉懿ではなく、もっと大物だと。劉備に近しい人間か劉備自身ではないかと当たりを付けていた。孟獲は、鄂煥の越巂だけという言葉で察したのだ。多くを語らないのは情報が漏れないように細心の注意を払っているからだろうと。高定は、雍闓の反乱に加担するフリをして、劉備側へと寝返ったのである。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

強制ハーレムな世界で元囚人の彼は今日もマイペースです。

きゅりおす
SF
ハーレム主人公は元囚人?!ハーレム風SFアクション開幕! 突如として男性の殆どが消滅する事件が発生。 そんな人口ピラミッド崩壊な世界で女子生徒が待ち望んでいる中、現れる男子生徒、ハーレムの予感(?) 異色すぎる主人公が周りを巻き込みこの世界を駆ける!

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

処理中です...