えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

暗躍の義賢

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 俺こと劉義賢は、数ヶ月前から不思議な感覚にずっと頭を悩まされていた。
 現実世界で所属している弓道部の顧問を勤めている董先生が泣きそうな声で俺を呼ぶ声。
 曹操が暗殺される夢。
 曹仁たちが子供を人質に取られて、本心から望んでいない戦で、命を散らす夢。
 現実世界でのことは、転生した俺が昔を懐かしんで見ている夢だと思っていたが、他のことについては説明がつかなかった。
 だから、俺はそれが正夢になることを恐れて、事細かに夢で見たことを書き記した。
 その度に血反吐を吐きながら。
 恐らく俺は、病を患ってしまったのだろう。
 死期が近い。
 俺が死んでも今の兄上なら天下統一は成し遂げられるだろう。
 しかし、自分が生きている間に見届けたい。
 その想いで俺は筆を走らせた。
 その疑問が死に戻りという能力が発動した時、死にはせずとも朦朧とした状態、死に瀕した状態であれば出会うことのできる現実世界ではもう天上人となった劉玄徳の妻で二代皇帝劉禅の実母である甘氏によって、解消されたのは先程の話だ。
 どうやら俺は魂だけがこの世界に呼ばれた不完全な状態。
 現実世界の俺は勿論、生きていて、落盤事故に巻き込まれて生死の境を彷徨っているらしい。
 夢で聞こえた董先生の声は、現実世界での俺の無事を願ってのことらしい。
 優勝を決めた時も自分のことのように喜んでくれたっけ。
 本当に生徒想いの良い先生だ。
 これ以上、心配をかける前に戻って、心配をかけたことを謝らないとな。
 俺は、正夢を見た日から回避するために少しづつ動き始めた。
 先ず、俺は兄上に今までのこととこれからのことを話した。

 劉備「今の話は本当なのか丁?」

 義賢「兄上に今まで黙っていて、申し訳ありませんでした」

 劉備「お前から珍しく2人きりで話がしたいと言われて、覚悟はしていた。そうか、やはり私の弟はあの落雷でその命を失っていたのだな。目の前に存在しているお前がこの世界よりずっと先の人間で、その世界は、私でもなければ曹操殿でもなく孫堅殿でもなく司馬懿の孫である司馬炎《シバエン》なる者が統一したのか。掠め取られたことを知ったら曹操殿もさぞ残念がろう」

 義賢「兄上、いえ劉備様。こんな突拍子もない話を信じてもらえるのですか?」

 劉備「兄上で良い。お前の中身が違おうとも俺にとって、お前はたった1人の弟なのだからな。それにしても一字違いとはな。これもまた運命か。曹操殿の暗殺、曹仁殿たちが望まぬ戦で死ぬことを回避し、その上で私に天下を取らせたいと。それで構わないな?」

 義賢「はい。欲張りで申し訳ありません」

 劉備「いや。良い。お前の未来では、天下を掠め取られた我ら3人の英雄だったか?それらが手を取り合い、天下を奪い返すというのもな。私は、お前の言に従おう。お前に助けられた者たちも皆、お前と同じ気持ちだろう。今一度、皆に会ってみると良い。特にこの作戦には徐州を治めてくれている呂布の力が欠かせないだろう」

 義賢「はい。兄上。どうか、俺が道半ばで倒れても、御自身を見失わず。その歩みを止めないでください。民のことを第一に考える兄上を慕っている人たちを裏切りませんよう」

 劉備「わかっている。私のことは大丈夫だ。残りわずかな命と聞いておきながらお前を休めさせてやれない哀れな兄を許せ。丁」

 義賢「いえ、これが俺にできることですから。それに兄上の弟は俺の息子劉白として、この世に再び生を受け生きています」

 劉備「通りでやけに舞殿にばかりちょっかいをかけるませた甥だと思っていた。ありがとう。弟の身体に宿った魂がお前で良かった。最後まで、思う通りにせよ。私は全力でお前を支えてやろう義賢」

 義賢「有難き御言葉です兄上。では、失礼します」

 その場を後にする義賢、玉座の後ろに隠れていた2人の男が姿を現す。

 劉備「孔明・文若、疑問は解消できたか?」

 諸葛亮「まさか未来人だったとは、思いませんでした。通りで一度堕ちた将星が再び光り輝いたわけです。しかし、司馬懿なる者は、彼の者の話から推測するに暗躍に長け、堅実に手を打つ手合いかと。司馬懿にとって、常識の通用しない存在があの者でしょう」

 荀彧「未だに信じられませんが、策を見通されていたことの納得ができました。私は、彼の未来では曹操殿の軍師だったと聞いた時、彼と出会うまで、そう考えていた自分と照らし合わせ、これも一つの世界線なのだろうと。これだけの縁を繋いだあの者に誇れる世界を作らねばなりませんね殿」

 劉備「あぁ。全く、兄はいつまで経っても弟には勝てんよ。優秀すぎる弟にな。孔明、戦に備えて軍備を増強せよ。文若、お抱えの密偵を使い、曹丕と司馬懿の動きを逐一報告させよ」

 諸葛亮「この手は使いたくありませんでしたが一族の者を司馬懿の縁者に潜り込ませておきましょう。世間では、狗《いぬ》などと揶揄されていますが潜入に長け、相手の懐にうまく入り込むのが上手い男です。必ずや後の戦で役に立ちましょう」

 劉備「孔明の思う通りにせよ」

 諸葛亮「はっ」

 荀彧「呉郡の方に割いていた密偵の数を減らし、許昌と長安を重点的に増やして、対処します」

 劉備「許可する。弟にばかり働かせる兄では居たくないからな」

 荀彧「我々もできる限りの手伝いを。では、そのように」

 2人が退室すると劉備は一言呟く。

 劉備「丁、お前が生きてきた証は、皆の心の中で刻まれている。お前が真剣に頼めば断るものなど居ない。できるだけ多くの人の手を借りるのだ。曹丕が魏王、孫翊が呉王を名乗る前にな」

 そうこれは、三国が鼎立される少し前の話である。これを世の人は、義賢の暗躍と呼ぶ。
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