えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

阿斗、動きます

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 白毦の者を宮仕に潜入させて数日、特にこれといって目立った報告はない。

 劉備「私の杞憂だったのなら良いのだが。アイツと会った時、上手くは言えないが何か不気味な気配を感じたのだ」

 劉禅「父さん、いつになったら尚香お姉ちゃんと練師お姉ちゃんを僕にくれるの?」

 劉備「お前はまた入ってくるなり、そんなことか。2人とも私の大事な嫁だと言ったはずだが」

 劉禅「僕は諦めない。この気持ちがいつか2人に届くまで」

 劉備「無理だから諦めろ。2人ともお前のことは大事な弟だと」

 劉禅「それは父さんの手前、恥ずかしがっているんだよ」

 劉備「いや、違うと思うが」

 劉禅「絶対そうだよ」

 劉備「いや、違うと思うが」

 劉禅「あっ。寇封兄からさ手紙が来て、元気にしてるってさ。そろそろ、こっちに戻してくれないかな。僕は全然怒ってもないし。大事な兄さんだし」

 劉備「ダメだ。表向きには全て黄皓のせいにしたが反乱を起こしたのは事実。お咎めなしにはできん。死罪のところ霊帝様の御慈悲で、継承権を完全に無くしただけで済んだのだ」

 劉禅「ホント、そういうところは父さん頑固だよね」

 劉備「お前が飄々としすぎなだけだ。で、何の用だ?まさか本当に尚香と練師を譲れと言いに来ただけではあるまいな?」

 劉禅「まっさか。そんなわけ無いじゃん。父さん、お願いがあるんだけど後継者の勉強って必要じゃん。だからさお願い。警ら隊の指揮権を1ヶ月だけくれないかな」

 劉備「ハァ。確かに後継者としての勉強は必要かもしれんな。わかった。警ら隊の隊長の張嶷にはこちらから話を通しておこう」

 劉禅「マジ、感謝」

 ノリノリで出ていく我が子を見て劉備は溜め息を吐く。

 劉備「はぁ。本当にアイツが後継者で良いのであろうか?」

 そこに入ってくる1人の男。

 ???「劉備様がお呼びと聞き、馳せ参じました」

 劉備「阿斗の奴め。こういう時だけ早い。ゴホン。張嶷か。入ってきてくれ」

 張嶷「はっ」

 劉備「お前を呼びに行った阿斗の奴から既に話を聞いているかもしれないが」

 張嶷「我々、警ら隊の仕事を見学したいというお話ですが、快くお受け致します」

 劉備「すまない。面倒をかけると思うが馬鹿息子のことを頼む」

 張嶷「承知しました」

 その頃、阿斗こと劉禅は1人の女性と会話していた。

 劉禅「お前も本当に物好きだな」

 ???「私の心を救ってくださいました阿斗様にお仕えするのは当然です。お湯加減は、如何ですか?お背中、お流ししましょうか?」

 劉禅「もうやめろ。そうやって尽くしても俺がお前をもう抱くことはない。難民の中に紛れ込んでいた敵の密偵だったお前を垂らしこんだだけで、好意すら無い」

 ???「それでも身も心も救ってくださいました。阿斗様が私のことを疎んじていても私はここを離れません」

 劉禅「だったら密偵らしく俺の役に立てよ」

 ???「それは、どういう?」

 劉禅「黄元って奴を蜀漢のために排除したいんだけどさ。証拠も何も無いわけ。探って来いよ。良い情報を持ち帰れたらまた抱いてやるよ」

 ???「それは本当ですか?」

 劉禅「あぁ」

 あの時の言葉は、何気なく放った一言だった。
 本当に潜入して黄元のことを探ろうとするなんて思わなかったんだ。
 愚かな俺を許せとは言わん。
 だが、目の前でお前が傷付き倒れている姿を見ると胸が張り裂けそうだ。
 どうやら一緒に過ごすうちに俺はお前にすっかり情を抱いていたようだ。
 そんな事に今更気付くなんてな。
 だが、この出血量では、助からないだろう。
 人のことをここまで気にかけるなど馬鹿な暗愚を装う俺らしくも無い。
 だが、俺のために命を投げ出したコイツのためにもコイツが救ってくれたなどという格好らしい俺を見せていたい。

 劉禅「黄元、貴様何をした?」

 黄元「これは、これは暗愚皇太子」

 劉禅「俺は皇太子などでは無い。蜀漢の政を司る父の後継者に推薦されただけのこと」

 黄元「何をいうかと思えば。そうやって、霊帝様が亡くなるのを待ち、その後釜を強かに狙っている薄汚い野良犬が、貴方ですよ」

 劉禅「何とでも言え。お前はどうして、官女を斬り殺した」

 ???「(官女。そうよね。阿斗様にとって、私は)」

 劉禅「いや。黄元よ。俺がお前のことを探らせていた人間だ。そして、そこにいる女は、俺の大事な内縁の妻だ。お前は殺人未遂を犯した。大人しく連行させてもらうぞ」

 黄元「成程。成程。全く、暗愚皇太子もお人が悪い。何をいうかと思えば、襲いかかってきた女を斬り殺したまでのこと。正当防衛が妥当かと思いますが」

 劉禅「罪を認めぬということだな?」

 黄元「このような暗愚皇太子を押し付けられて、警ら隊の皆さんも大変だ。ハッハッハ」

 張嶷「口を慎め黄元。身柄を拘束させてもらうぞ」

 黄元「どうぞ。どうぞ。立件できると良いですねぇ。ヒヒヒ」

 劉禅「その余裕面、必ず後悔させてやる」

 警ら隊によって、黄元が連れていかれる。
 その場に残された劉禅は、女の元に向かい膝を折って、涙を流す。

 劉禅「すまなかった。俺があんなことを言ったばかりにお前をこんな目に泣いて許されることでは無いとわかっている。だが、本当にすまない」

 ???「阿斗様、大好き!」

 劉禅「へっ?お前、何で血は?」

 ???「これですか?お料理に使うトマトですよ。でも本当に危なかったぁ。一歩反応が遅かったらザクりでした。死んだフリして、やり過ごした後、阿斗様に情報をお届けしようとしてたのに。阿斗様が愛の告白。ううん婚姻発表なんてしてくれるものですから顔が真っ赤になっちゃって」

 劉禅「この大馬鹿者が!暗愚の俺の上を行く大馬鹿者だ」

 ???「なら暗愚と大暗愚で、ちょうど良いかもしれませんね」

 劉禅「本当にお前は物好きだ」

 ???「お前は嫌です。名前で」

 劉禅「いや、お前の名前なんて知らんわ!」

 ???「そもそも、ありませんからね」

 劉禅「なら、名無しから取って菜々ナナだ」

 菜々「ありがとうございます阿斗様。貴方は、私の英雄です。暗愚じゃありませんよぉ」

 劉禅「はいはい(本当に無事で良かった。にしてもあの状態で咄嗟に機転が効くとは、実はできる奴なのでは?)」

 こうして黄元を捉える事に成功したが、口を割ることはなく、尋問が続くのであった。
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