えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

文字の大きさ
597 / 821
5章 天下統一

黄元の異変

しおりを挟む
 牢屋の中で独り言をずっと呟く黄元。

 黄元「俺は悪く無い。悪く無い。あの女は、あの御方を危険に晒す存在。危険に晒す存在。あの御方のために排除しただけ。排除しただけ。あの御方って、誰だ?うぅ。何も何も思い出せん。あの難民に屈辱を味合わされたことまでは覚えているのだが。その後の記憶がごっそりと。どうして、俺はここに?」

 牢屋の兵「さっきからブツブツと煩いぞ!この国家転覆罪の極悪人が!」

 黄元「国家転覆罪?俺が?一体、何の話をしてるんだ?うぐぐ。まただ。また。頭の中で何者かの声が」

 ???『解放せよ。内に眠る劉備への猜疑心を。真の皇帝への信仰心を示せ。真の皇帝とは、始皇帝なるぞ』

 黄元「ククク。そうであった。我が主は、あの御方のみ。この瓶を飲み干せば。はぅ。しまった。瓶を」

 カシャンと割れて、中から飛び出す火鼠かそ

 火鼠『やっと出られたよぉぉぉぉ。暗いところ怖かったよぉぉぉぉ。左慈様、何処に居るのぉぉぉぉ?』

 牢屋の兵士「瓶から鼠?コイツ、これを飲もうとしていた?しかし、いったい何処から短剣が?」

 梟「騒がしてすまなかった。劉備様より、此奴の監視を密かにするように命じられていた。梟と申す」

 牢屋の兵士「ふ、梟様!?劉備様の表の親衛隊が陳到様なら裏の親衛隊と称される影に潜む男!?お会いできて、大変嬉しいです。どうぞどうぞ。何処までも監視を。勿論、今あった事なんて何も見てませんよ」

 梟「心遣いに感謝しよう。して、黄元よ。落とした物の説明をしてもらおうか?」

 黄元「うっ。はっ。俺はいったい何を?落とした物?うわぁぁぁぁぁ。何だこの鼠、あっちいけ!俺は鼠が大嫌いなんだ!」

 梟「ん?先程の様子と何やら違うか?」

 牢屋の兵士「コイツはここに入って、もうすぐ5日になりますがあの調子でコロコロと性格が豹変するんです。精神を病んでいるのかと」

 梟「ふむ。鼠を見て取り乱す男が鼠を丸呑みしようとするであろうか?」

 牢屋の兵士「あの様子からしたらあり得ないかと」

 そこに入ってくる1人の男。

 ???「全く、左慈方士様も俺を何だと思ってるんだ。昔の誼って、怖い体験ばっかさせられただけってんだ。俺はこれでもこの国の首相を務める劉玄徳の義理の弟だってんだ。それをこき使いやがって。まだ劉丁の奴は良い。それなりに愛のある弄りもしてくれる。だけど、あのジジイときたら。ブツクサ。ブツクサ」

 梟「誰かと思えば麋芳殿では無いか?」

 麋芳「ヒィィィィィィィ。突然話しかけてくるんじゃねぇよ!いや、まぁ良いや。変なこと聞くけどよ。この辺りで鼠を見なかったか?」

 梟「鼠ならそこの牢屋の中で、今踏みつけられているが?」

 火鼠『イタイよぉ。イタイよぉ。どうして、踏みつけられるのぉぉぉぉ?僕、何も悪いことしてないのにぃぃぃぃ』

 麋芳「何やってくれてんじゃお前!その鼠様は、左慈方士様の大事な愛玩動物やぞ!いなくなって困ってるっちゅうて。昔の誼かなんか知らんけど探してくれって頼まれとったんじゃ!きさん、何してくれとんねん!」

 黄元「ハァ。ハァ。ハァ。ハァ。そんなことは知らん。大嫌いな鼠を俺の前で見せるから悪いんだ。これに懲りたら。はっ?俺の足が燃えてる。アツイ。アツイ。アツイ」

 麋芳「言わんこっちゃない。こりゃアカンわ。もうお前さんの足は使い物にならん」

 黄元「ふざけんな。ふざけんな。何で、俺がこんな目に。こんな目に」

 火鼠「左慈方士様、何処?」

 麋芳『おい、聞こえるか火鼠?暫く鼠のフリして死んだフリしとけ。俺が左慈方士様のところに運んだるさかい』

 火鼠『麋芳ちゃんの声が聞こえるよぉぉぉぉ。兎に角、身体がイタイよぉぉぉぉ』

 この火鼠も左慈の使う式の一つで、普段は南方の山にある決して燃えない木の中に生息しているとても珍しい火を纏った鼠である。
 よく左慈に戦闘目的ではなく暖炉代わりに呼び出される愛玩動物である。
 だが、この火鼠も妖怪に属する怪物の一頭であり、その炎を一度受ければ、その部分だけ、黄元の足のように炭と化してしまう。
 扱い方を間違えたら最後、人間の身体なんて、燃やし尽くしてしまう。
 少し前から左慈の呼びかけに応えず動向も不明だったため昔の誼から麋芳に捜索依頼を出していたというのが事の経緯である。

 黄元「俺の右足が。右足が」

 火鼠にすごい勢いで燃やされ、それと共に止血まで完了させていたので、片足だけが綺麗に無くなった黄元はバランスを失いその場に倒れ込むしかできなかった。

 梟「麋芳殿、その瓶について詳しく聞きたいのだが構わないか?」

 麋芳「瓶のことは全く知らないから左慈方士様から聞いた推測って話しかできねぇけどよ。最近、こういう事案が増えてるらしくてな。温厚だった人間が突如豹変して女を攫って犯して猿の子を孕ませるとか。飲み水が突如として毒に変わって、村一つ滅んだとかな。まぁ、あり得ないことが起こってんだわ。それに関係しているのが何れもその場に残されていた瓶の容器らしい」

 梟「では、やはり黄元が?」

 麋芳「いや、コイツも何も知らされてねぇだろうな。まぁ、予想の話になるがよ。瓶の中身を飲んで、炎でここを燃やし尽くすのが目的だったんじゃねぇか。まぁ、何にしても気絶したコイツが目を覚ましたら話を聞くしかねぇよ。俺は左慈方士様に報告もしなきゃならねぇからその後こっちに戻ってくるよ」

 梟「承知した」

 こうして、梟の危険探知能力と左慈に使いパシリにされていた麋芳によって、水面下でとんでもないことを阻止していたのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

処理中です...