えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟！兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章　天下統一

警ら隊に追われる郭脩

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　黄元を良いように使い蜀漢を混乱させている間に劉備もしくは後継者と目される劉禅のどちらかの暗殺を成功させるつもりだった郭脩だが思う通りにはいかなかった。

　郭脩「全く、反乱一つ起こせないとは、人選を見誤ったか。それどころか言動まで怪しくなるとは。これでは、郭昱様からの御褒美が」

　そんなことを考えながら潜伏している難民キャンプを歩き回る郭脩。

　難民A「お前、聞いたか？」

　難民B「何の話だ？」

　難民A「警ら隊が難民を調べてるって話だ」

　難民B「なんでまた」

　難民A「どうやら俺たちの中に宮仕の奴と話してた奴が居るらしくてな」

　難民B「何で俺たちみたいな文無しが宮仕と話せるってんだよ。言いがかりなんじゃねぇのか？」

　難民A「どうやら、警ら隊の新人の証言があるらしい」

　難民B「勘弁してくれよ。せっかく戦に巻き込まれないように逃げてきたってのに、今度は犯罪者扱いかよ」

　難民C「仕方あるまいて。こうして、安住の地をもらえてるだけ劉備様は噂に違わぬ懐の広い御方じゃろう。それどころか我らに支援もしてくださっておる。やましいことが無ければ調べられて困るようなことは無かろう」

　難民A「爺様の言う通りだな」

　難民B「一部のくだらん馬鹿のせいで、俺たちまで割を食うとか最悪だってんだ」

　難民たちの声が聞こえてきた郭脩は、舌打ちする。

　郭脩「チッ。反乱一つ起こせないどころか尾けられるとかマジで使えないポンコツだったか。ここも安全ではない。何処かに身を」

　？？？「警ら隊だ。難民の皆には、申し訳ないがこの中に宮仕の黄元と結託して、劉備様の命を狙った者がいるとのことだ。少し、調べさせてもらう。抵抗をすれば、やむを得ず拘束するゆえその場を動かぬように」

　難民A「劉備様の暗殺！？」

　難民B「よりにもよって暗殺とか何考えてんだよ。関係ない俺たちまで巻き込みやがって。とっとと名乗りでやがれ」

　難民C「喚くでない。どうぞ、警ら隊の皆様、心ゆくまでお調べくだされ」

　？？？「感謝する長老。俺は、警ら隊の隊長を務めている張嶷と申す。皆の者、許可は出た。調べを進めよ」

　警ら隊「はっ張嶷様！」

　その場から後ずさろうとする難民に気が付く馬忠。

　馬忠「何処に行こうとしてるんです？」

　怪しげな難民A「！？いや、アッシはちょっともよおしちゃいまして。漏らすのもアレなんで、森の中へ行こうかと。ハハッ」

　馬忠「そういうことでしたか」

　怪しげな難民A「ヘイ。では、これで」

　馬忠「一緒に行きますよ」

　怪しげな難民A「はい？いやいや、俺のしてるところを見るとか変態でやすか？」

　馬忠「そういうわけではありませんよ。目を離した隙に逃げられては、元も子もありませんから」

　怪しげな難民A「逃げるだなんて、アッシがそんなことするわけ」

　馬忠「なら付いて行っても問題ありませんね？」

　怪しげな難民A「いや、それは下のことですし」

　馬忠「わかりました。では、難民の皆様、少し協力してもらえませんか？」

　難民B「何だよ」

　馬忠「この方がもよおしたそうなのですが。見られるのが恥ずかしいそうなので、隠せるようなものはありませんか？」

　難民D「そういうことでしたら大きな布がいくつかありますので、繋ぎ合わせて、簡易的なものなら作れますわ」

　馬忠「それは助かります。お願いできますか？」

　難民D「えぇ、勿論」

　突如として豹変して難民を人質に取ろうとする怪しげな難民を取り押さえる張翼。

　張翼「全く、お前という奴は、敢えて身を晒すとは」

　馬忠「こういう人は、追い込まれたら必ず現状を打破するために手を出すと思ったからね」

　怪しげな難民A「何故、わかった！」

　馬忠「難民にしては小綺麗な靴かな。他の人のは擦り切れてるのに君のは新品のように綺麗だ。とてもここまで逃げてくるのに苦労した人には見えない」

　怪しげな難民A「くっ。蜀漢の人材は、末端まで優秀ということか。そう。ゴポポポポポポ」

　この後に続く言葉を勝手に想像した郭脩の手は既に動いていた。
　暗器の一つである小さい短剣を喉元に投げ込み、口封じしたのである。

　郭脩「あの馬鹿め。主に対して、申し訳ありませんなどと呟くつもりであったのだろう。影の風上にもおけん愚図だ。だが、これで」

　？？？「いやはや迷ってしまいました。こんなことなら陶商殿に城内まで案内してもらうのでした。入ればわかるなどと過信した私の悪い癖です」

　郭脩「！？(見られた？まずい、コイツも殺さなければ)」

　？？？「(何だか、目の前の人から殺気を感じますね)」

　郭脩の投げたナイフを身体を反らして回避する謎の男。

　？？？「いきなり何です。危ないじゃないですか？随分なご挨拶ですね」

　郭脩「馬鹿な！？(俺の暗器を躱しただと)」

　？？？「驚いているところ申し訳ありませんがその隠せない殺気では、私を殺すと明言しているようなものです。当然、危険回避はさせてもらいますよ。それに良いんですか？蜀漢の警ら隊は優秀ですよ」

　郭脩「フン。何をいうかと思えば、今もあの死体の調査に。うぐっ」

　張嶷「難民殺害の現行犯及び殺人未遂の現行犯で逮捕する。それにしても費禕殿は、どうしてこちらに？」

　費禕「張嶷殿でしたか。いやはや、劉備様のところに向かっていたはずなのですが迷ってしまいまして。アハハ」

　張嶷「相変わらずの方向音痴っぷりのようで。このものを引き渡すついでに御案内しましょう」

　費禕「大変、助かります」

　こうして、方向音痴の費禕の手伝いもあり、難なく郭脩を逮捕することに成功した警ら隊であった。

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