えっ俺が憧れの劉備玄徳の実の弟!兄上に天下を取らせるため尽力します。

揚惇命

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5章 天下統一

5年の月日が経過する(徐州編)

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 ここ、徐州では、揚州北部を治める袁燿の補佐をしている張遼から報告を受けた呂布が驚きを隠せずにいた。

 呂布「張遼、その話は真なのか?」

 張遼「はい。劉丁殿が青州に赴任されるのは、間違いないそうです」

 呂布「馬鹿な!?義賢は、寝たきりだったのだぞ!劉備様は何を考えているのだ!文句を言いに行く。供をせよ!」

 飛び出した呂布は城下で鍛治を営む妹とぶつかる。

 呂布「す、すまない」

 呂舞「こちらこそ。って兄さん!?」

 呂布「舞か。すまない急いでいるんだ。これで失礼する」

 呂舞「張遼将軍まで連れて、どうしたのよ?」

 呂布「そ、それは。いや、お前も聞いておくべきだろう。聞いて驚くなよ。義賢が青州に赴任するそうだ。病の人間を最前線に送るなど断じて認められん。文句を言いに行くのだ」

 呂舞「その事ね。問題ないわよ。娘の顔を見につい先日訪ねてきたもの。病なんて嘘ってぐらいピンピンしてお爺ちゃんをしてたもの」

 呂布「ここに来ていた?何故、俺の元に顔を出さない」

 呂舞「兄さんのことだから聞いたら何としても止めようと考えるからじゃない。あの病が精神的なものって聞いても納得できないものね。あんなに辛くて苦しそうな表情の義賢のことを見たのだから」

 呂布「当然だ。だから、文句を言いに」

 呂舞「それが今、本当に兄さんがするべきことなの?」

 呂布「な、何を言って?」

 呂舞「義賢の負担を減らしてあげたいなら、できる事はあるんじゃない?一時とはいえ兗州は兄さんの土地だったんでしょ」

 呂布「お前は何を言って?」

 呂舞「まだわからない?張遼将軍、袁燿はなんて?」

 張遼「妹君様。袁燿様なら淡々とお聞きした後、遠くを見つめて、わかった。なら、こちらは軍備の増強をすると」

 呂布「馬鹿な!?甥なら叔父が危険なところに行こうとしてるのを止めるべきだろう!」

 呂舞「歳を取って、守りに入ったのは兄さんの方かもね。昔の兄さんなら間違いなくこう言ってたわ。義賢の危険となり得る障壁を先に取り除いてやるってね」

 呂布「!?お、俺が守りに入っているというのか」

 侯成「殿、やっと追いついた。一度、頭を冷やされるべきかと。話を聞いただけで現状は何も」

 呂布「ハ、ハハ。確かに舞の言う通りだな。侯成、迎えに来てくれて感謝する。城に戻るぞ」

 侯成「殿、やはり考えは変わりませんか?かくなる上は己の身体で。って、えっ?城に戻る。は、はい。直ちに」

 呂舞「兄さん、義賢のこと、お願いね」

 呂布「当然だ。過ちを犯そうとしていた俺のことを止め。義父殺しなどと蔑まれていた俺に平穏な暮らしを与えてくれ友となってくれた。アイツのためなら無理をしてでも兗州を再び曹操から奪う。そのための軍議を始めないとな」

 呂舞「ありがとう兄さん」

 呂布は、城に戻ると直ぐに重臣を集めた。
 軍師を務める荀攸。
 軍師補佐の王凌。
 参謀の陳羣・陳登。
 呂布の元で将軍を務める高順・成廉・魏越・侯成・魏続・宗憲。

 呂布「皆、集まってくれた感謝する。今日は婿殿の代理として張遼にも来てもらっている。張遼、議題の説明を」

 張遼「はっ。劉備様と曹操との間で5年の停戦が結ばれた事は、皆ご存知の事と思う。袁燿様は、5年後を見据え、軍備の増強を進めることを決められた」

 ざわざわする面々。

 荀攸「一旦、静かにせよ。張遼殿、袁燿殿の考えは、豫州への侵攻か?」

 張遼「いかにも」

 王凌「馬鹿な!?揚州北部だけで豫州を落とすことなど不可能だ!」

 荀攸「そうともいえまい。袁燿殿は、劉丁殿の塾に通い叔父からも手解きを受けた賢人だ。何の考えもなく、豫州の攻撃を考える奴ではない」

 陳羣「確かに義父が手解きしてるのなら幾分か可能性は高いだろうね」

 孫登「しかし、そうならば支援が必要では?」

 荀攸「いえ、支援は必要ないかと。それよりも」

 呂布「兗州攻めだな?」

 荀攸「殿。言葉を奪わないでほしいのだが。まぁ良い。その通りだ。攻められる箇所が多ければ、それだけ曹操も守る箇所を増やすしかない。豫州も兗州も攻められることで、曹操が青州に回す兵力にも少なからず影響を与えるはず」

 会話に参加できない武官たちが頷いている。

 高順「攻めるとなれば我らは強い。先鋒は俺にお任せを」

 魏越「おい高順、抜け駆けはゆるさねぇぞ」

 成廉「待て待て、俺が」

 王凌「落ち着くのだ。今すぐに攻めるわけではないのだぞ!」

 陳羣「この場合、軍備の増強に努めるのが吉だね」

 荀攸「うむ。5年という期間を1日たりとて無駄にはできん。曹操とて、必ず魏国の混乱を鎮め、巻き返しを図る。大国になったと油断すれば足元を掬われるのは我らの方であろうな」

 呂布「大国になったか。フッ」

 荀攸「何がおかしい?」

 呂布「いや、こうやって、各地方を切り取って信頼して治めさせてくれている。ここだけを見れば大きいとは言えないのではないかと思ってな」

 荀攸「そ、そうか。だから早くから劉丁は、地方を分け、軍団編成を取り入れたのか。治めている者が、国が大きくなったと驕らぬために。事実、袁燿殿も殿も率先して動こうとしている」

 呂布「いや。俺は歳を取って、丸くなったそうだ。先ほど、妹から注意を受けたところだ」

 陳羣「確かにこの分割統治は、今にして思えば理に適っているね。こうして皆がこの国のために動いているんだからさ」

 陳登「な、成程。では、我らも軍備を増強し來るべき時に備えると?」

 呂布「うむ。高順ら武官は、兵の訓練と徴兵に努めよ。荀攸ら文官は、内政を努めよ(フッ。かつて陳宮に騙され、多くの忠臣を失った兗州にまた攻め込むことになるとはな。皆、俺の勇姿を見守ってくれ)」

 こうして、呂布もまた義賢の負担を減らすために兗州への侵攻を画策するのだった。
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