ヴェスパラスト大陸記

揚惇命

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一章 動乱期

衝撃が走る!

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 ヴェスパラスト歴2006年、南半球における人類統一国家オズマリア帝国が建国される。だが、最後の王国であったツリー王国の徹底抗戦を受け、100万もの兵を失った。このままでは、北半球の人類未到の地である魔物蔓延る土地への出兵はできない。オズモンド王も国から帝国へと変わった事により初代オズマリア皇帝に就任する。そんな最中、各国の王宮兵を奴隷とし、北の魔物との境界線に大きな長い壁を作る事にする。これを万里の魔物壁と名付けた。だがツリー王国側は、住民・王宮兵、その全てが徹底抗戦により、亡くなったため。オズマリア帝国から罪人たちに罪の減刑を条件に、送り込む事にした。そして、レインクラウズクリア王国と魔物との境界線には、レインクラウズクリア王国の王宮兵たちが集められていた。そう、奴隷である。オズマリア帝国により滅ぼされた国の王宮兵は奴隷とされた。そして、ここにレインクラウズクリア王国の皇子カイルも居た。
「父上、鷹は大丈夫でしょうか?」
「ルイスよ。案ずるな。賢い故、無事に逃げたであろう」
「なら良かったです」
 ルイスとは、カイルの偽名である。この時、カイル5歳。皇子の名前が万が一相手側に知られていたことを考えルーカスと名乗ったランダスが咄嗟の起点で息子という事にしたのである。鷹狩りの最中に国が滅び。奴隷とされたカイルは、鷹のことを案じていた。自身の方がこれからよっぽど辛いのに鷹の心配をしていたのだ。
「ここだ。喜べお前たちは、今日からここでオズマリア帝国による人類を守るための万里の魔物壁を築城してもらう」
 捕虜を率いていたオズマリア帝国の兵がそう宣言した。
「さぁ、ここに入れ」
 オズマリア帝国の駐屯兵が1000程。その他は、レインクラウズクリア王国の国民達であった。その姿を見たランダスとカイルは、父上と母上を信じ、奴隷とされた国民達だと思った。だが、違ったのだ。その守るべき国民達から王宮兵に対して浴びせられる罵声の数々。石まで投げつけられた。
「この売国奴の手先ども。俺たちの怒りを思い知れ」
 売国奴?国民達は、何を言っているのだ?母上と父上がこの国を売るわけがない。何かの間違いだ。そう言いたい気持ちを我慢して、石と罵声に必死に耐えるカイル。5歳の少年にこの仕打ちである。そして、この後、映る映像でカイルはさらにドン底に落とされる。オズモンド王の隣で裸にされている母上。そして、ファイン王の首。カイルは、この時初めて父上の死を知った。父上を殺した男に媚び諂い愛おしそうにキスをし、憎き男の膨張したモノを深々と迎え入れながら国民達に挨拶をする母上の姿であった。
「チュパ。国民の皆様、レインクラウズクリア王国の元王妃イーリスです。あぁん。今日もこうして、愛してもらっています。あぁん。オズモンド皇帝陛下様が、申した通り、魔物との境界線における万里の魔物壁の。あぁん。築城は最優先事項です。ハァハァ。奴隷となった王宮兵の皆様、皇帝陛下様は、約束してくださいました。完成した暁には、逆らった罪を許してくださると。あぁぁぁぁぁぁぁ。もうダメ」
 母上は恍惚の顔を浮かべながら気絶した。
「この通り、イーリスは、気絶してしまったのでな。続きはワシが言ってやろう。万里の魔物壁が完成した暁には、お前たち王宮兵を帝国兵として、迎え入れてやろう。元レインクラウズクリア王国の国民たちには、何の罪もない。悪いのは、全て、レインクラウズクリア王国の王ファインと王妃イーリスだ。レインクラウズクリア王国は、魔物の襲撃からお前達を守れなかった。だがワシは違う。お前達を守ってやろう。この万里の魔物壁で、看守として働くというものには、月1万G出そう。近くにいる我が兵に名乗り出るが良い。以上じゃ」
 カイルは、この映像の後、ショックのあまり泡を吹いて倒れた。父上の死。父上を殺した男に媚び諂う母上。一瞬で敵に回った守るべき国民達。5歳の少年に耐えられるわけが無い。レインクラウズクリア王国の元国民達は、こぞって看守になりたいと名乗り出た。この国における1万Gとは、月、生きていくのに充分なお金だったのだ。だが多いと勿論だ抽選制となる。この後、10年の長き間。人気の職業となる。そして、これは、各国同様であった。そう、国民を守っていた兵士たちが敵意を剥き出しにした守るべき国民達に監視されるのだ。そう、これがオズモンド皇帝陛下の狙いだった。兵士たちの反乱する意思を削ぎ、その国に必要な帝国兵の兵数を減らす。そして、この辛い奴隷生活を乗り切れば帝国兵となれる。それは、今敵意を向けている国民達よりも上の立場になれるのだ。そのことに気付いた兵士は、ガムシャラに働く。そう、オズマリア帝国における。階級制度は、絶対である。1番上に皇帝陛下、その下に帝国兵、その下に商人、その下に帝国市民、その下が奴隷である。貴族がない事にも理由がある。貴族は、私腹を肥やし国を貪る癌だ。それゆえ、オズマリア帝国には貴族はいない。それゆえ、国家の金が潤っている。商人には、高い関税を課す、必要以上に私腹を肥させないためだ。帝国市民には、税金が課されるが付く仕事に応じて、金額が変動する。帝国兵は、支払う給金から税金が引かれる。必要以上の贅沢を許さないという事である。そして、オズモンド皇帝陛下は、その金の使い方がとても上手い。国を育てるために、使うのだ。そう、この傑物に6カ国の王が勝てる要素など一つもなかったのである。武力も全国で右に出るものは、居ない。知力も全国で右に出るものは、いない。そして、政治手腕ですら全国で右に出るものは、いないのである。そして女遊びにおいても、全国で右に出るものは、いない。まさに稀代の傑物である。惜しむべきところがあるとするのなら大事のためならば、自分の子供の命や国民の命ですら必要と思えば、冷酷に捨て去るという点だろう。これは、稀代の傑物に、カイルが父が何故死ななければならなかったのか。母がどうして父を殺した男に媚び諂うのか。絶望に抗い。真実に向き合う物語である。
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