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第7話
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「ただいま~っと、誰もいないな」
ブルーフェニックスとの激戦の後、家に帰ると誰もいなかった。
どうやら両親は出かけたらしい。
「わんわん!」
「そうだったな。お前がいたんだった。すまんすまん」
「わふぅ」
出かけていない両親の代わりに俺を出迎えたのは一匹のわんこだった。
なでなでもふもふしてやると、目を細めて気持ちよさそうにする。
1年前、家の玄関の前でぐったりとしているのを見つけた。
手持ちのポーションを飲ませると翌日には元気になり、それ以来この佐々木家の一員となった。
今では我が家のアイドルと言っても過言では無い。
可愛らしいもふもふの雄の柴犬であり、名前は「しば太」
柴犬だからという安直なネーミングとか言わないでくれよ?
俺は結構気に入ってるんだ。
「しば太~お腹減ってるか?」
「わん!」
「そうかそうか。これをくれてやろう!」
俺は収納から肉の塊ーーオークキングの肉ーーを取り出す。
するとしば太の尻尾が激しくふりふりされる、可愛い。
「味わって食べるんだぞ」
「わんわん(ガツガツ)」
しば太がもの凄い勢いで肉にありつく。
オークキングの肉ってお高いステーキハウスのお肉よりもぶっちゃけ美味いからな。
まぁこんなもんあげてるから普通のご飯を食わなくなっちゃったが。
たくさんあるから別に良いけど、相当なグルメ犬さ。
それに、結果的に肉体強度と魔力強度が上がったせいなのか、俺の言葉をほぼ理解しているようなふしがある。
俺は自分が賢くなったとは思わないけど、動物はそっちも強化されるのかな?
「食べ終わったら外に行くぞ~」
「(ふりふり)」
しば太は俺の言葉に尻尾を振って応える。
すると、親父とお袋が帰ってきた。
「おかえり。どこか行ってたのか?」
「ご近所さんにお裾分けにね」
「あーそれか」
「急かされてしまってな」
魔物肉や例の野菜を日常的に口にし始めてから、親父とお袋は劇的に変化した。
俺のように肌ツヤが良くなったレベルではなく、ガチで若返ったとしか思えない。
二人とももう60のはずだが、どう見ても40かそこらにしか見えない。
こんなの近所の人達は当然驚く。
実家のある町は人口が年々減少しており、町というよりも村とか集落の方がしっくりくる。
結果的に住民同士の繋がりがかなり強い。
そんな場所で近所の人達が騒げばその話が町全体に広がるのは時間の問題だった。
親父とお袋は皆に相当色々聞かれたらしく、最終的に俺の作る野菜を分けてくれないかと頼まれた。
俺の実験農場も規模がかなり大きくなっていたので、この町の人達にお裾分けする程度ならと快く引き受けた。
実がなるまで成長も早く、むしろ収納内に余り気味だったしな。
そんなわけで文字通り魔改造された野菜の一部が町に出回るようになった。
親父やお袋のような劇的な変化はないものの、体調が良くなったりしているようだ。
「わん!」
「お、食べ終わったか。ちょっとしば太と外に行ってくるな」
一言両親に告げて俺はしば太と一緒に外へと繰り出した。
しば太は首輪はしているがリードはしていない。
さっきも言った通り異常に賢いし、俺の言うことは守るので必要ないのだ。
「今日はどうする?」
「わう~」
「山で鬼ごっこでもするか!」
「わん!」
「それじゃ、10秒数えるから逃げてくれ。よーいドン!」
すると、しば太がもの凄いスピードで森の中に走っていく。
柴犬がのスピードがどれぐらいかわからないが、尋常な速度じゃない。
どうせならスキルオーブとかあげてみたいのだが、残念ながらステータス情報を得られない今では無理だ。
そもそも犬が得られるのかもわからんが。
「よし、俺もいきますかね」
~~~~~
「汚れてるから綺麗にしないとな」
「わふぅ~」
森を思い切り駆け回ったあと、土で汚れたしば太を洗ってやる。
ペットショップで買ってきた犬用のシャンプーで細かいところまで丁寧に。
「ここがええんか?」
「くぅん」
ゴシゴシしてやると気持ちよさそうな鳴き声をあげる。
洗ってる俺も癒されるようだ。
しば太を綺麗にしてやり、乾かしたあとブラッシングをしてやる。
こうすることで毛艶が良くなり気持ちの良いもふもふになるのだ。
すると、車のエンジン音が家の前で止まる音がした。
「ん?来客か?珍しいな」
この町の産業はうちのように農業一択で、来客があるとすれば親戚や取引先の関係者なのだが、今日はそういう話を聞いていない。
ピンポーンーー玄関のチャイムがなる。
「はいはい。どちら様かなっと」
俺は玄関の引き戸を開けた。
そこには俺にとってとても懐かしい顔があった。
「達郎?久しぶりだな!」
「龍一も元気そうで嬉しいぞ!おひさ!」
こいつは鈴木 達郎。
ここには残念ながら学校がないので、小中高と隣町まで通っていた。
そして小学生の時に出来た友人の一人がこの達郎だった。
中高も同じ学校で、当時は良くつるんでいたしうちにも来たことがある。
俺は都内の大学に進学し、達郎は実家の会社に就職したので、会うのはかなり前ににあった同窓会以来だ。
「突然どうした?」
「龍一が実家に帰ってるって聞いてよ。それならと思って来てみたわけだ」
「ん?どうして知ってるんだ?」
「うちの取引先の人から聞いたんだよ。あの会社でちょっとした事件があったって」
俺の勤めていた会社は手広くやっている総合商社だった。
一方、達郎の所は食料品の卸業を営んでおり、その関係者から例の事件について聞いたようだ。
確かにあそこにも食料品関係の部署があったし、どこにどういう繋がりがあるかわからんもんだな。
ともかく、それを聞いて気になった達郎があの会社にアポを取った所、既に俺が退職していることが判明。
どうやらそこで実家に戻ったようだと聞いたらしい。
同僚や後輩にそう言って去ったからな。
「それならうちに連絡してくれれば良いだろ。知らない仲じゃないんだから。というかもう2年も前だぞ?」
「ははは、すまんすまん。少し驚かせようと思ってな。知ったのは本当に最近なんだよ」
「まぁいいや、あがってけよ」
「おう。お邪魔しまーす」
達郎は俺の両親にも挨拶し、俺の自室へとあがる。
しば太も後ろをトコトコついてくる。
「ここに来るのも久しぶりだな」
「相変わらず何も無い部屋ですまん」
「いいってことよ。それにしてもお前変わったな」
「そうか?」
「体付きもがっしりしてるし、存在感?が凄いような」
「ずっと農作業をしてるからな。存在感は良くわからんが.......」
日中は農作業に勤しみ、ダンジョンであれだけ戦闘していれば嫌でも鍛えられる。
存在感についても心当たりはありすぎる。
といっても説明できないからな。
「まぁいいや。なぁ、龍一の父ちゃんと母ちゃんってもう60だよな?」
「お、そうだな」
「なんだありゃ。どうみたって40かそこらだぞ!」
「別に良いだろ。悪いことじゃないんだし」
「それはそうだが.......」
俺はしば太をなでなでしながらなんでもないように装う。
肉と野菜を食わしてたら若返ってましたなんて言えない。
そういう意味だとこの町全体がだいぶヤバい。
まぁ、半年後にダンジョンが現れれば気づかれるかもしれないな。
ブルーフェニックスとの激戦の後、家に帰ると誰もいなかった。
どうやら両親は出かけたらしい。
「わんわん!」
「そうだったな。お前がいたんだった。すまんすまん」
「わふぅ」
出かけていない両親の代わりに俺を出迎えたのは一匹のわんこだった。
なでなでもふもふしてやると、目を細めて気持ちよさそうにする。
1年前、家の玄関の前でぐったりとしているのを見つけた。
手持ちのポーションを飲ませると翌日には元気になり、それ以来この佐々木家の一員となった。
今では我が家のアイドルと言っても過言では無い。
可愛らしいもふもふの雄の柴犬であり、名前は「しば太」
柴犬だからという安直なネーミングとか言わないでくれよ?
俺は結構気に入ってるんだ。
「しば太~お腹減ってるか?」
「わん!」
「そうかそうか。これをくれてやろう!」
俺は収納から肉の塊ーーオークキングの肉ーーを取り出す。
するとしば太の尻尾が激しくふりふりされる、可愛い。
「味わって食べるんだぞ」
「わんわん(ガツガツ)」
しば太がもの凄い勢いで肉にありつく。
オークキングの肉ってお高いステーキハウスのお肉よりもぶっちゃけ美味いからな。
まぁこんなもんあげてるから普通のご飯を食わなくなっちゃったが。
たくさんあるから別に良いけど、相当なグルメ犬さ。
それに、結果的に肉体強度と魔力強度が上がったせいなのか、俺の言葉をほぼ理解しているようなふしがある。
俺は自分が賢くなったとは思わないけど、動物はそっちも強化されるのかな?
「食べ終わったら外に行くぞ~」
「(ふりふり)」
しば太は俺の言葉に尻尾を振って応える。
すると、親父とお袋が帰ってきた。
「おかえり。どこか行ってたのか?」
「ご近所さんにお裾分けにね」
「あーそれか」
「急かされてしまってな」
魔物肉や例の野菜を日常的に口にし始めてから、親父とお袋は劇的に変化した。
俺のように肌ツヤが良くなったレベルではなく、ガチで若返ったとしか思えない。
二人とももう60のはずだが、どう見ても40かそこらにしか見えない。
こんなの近所の人達は当然驚く。
実家のある町は人口が年々減少しており、町というよりも村とか集落の方がしっくりくる。
結果的に住民同士の繋がりがかなり強い。
そんな場所で近所の人達が騒げばその話が町全体に広がるのは時間の問題だった。
親父とお袋は皆に相当色々聞かれたらしく、最終的に俺の作る野菜を分けてくれないかと頼まれた。
俺の実験農場も規模がかなり大きくなっていたので、この町の人達にお裾分けする程度ならと快く引き受けた。
実がなるまで成長も早く、むしろ収納内に余り気味だったしな。
そんなわけで文字通り魔改造された野菜の一部が町に出回るようになった。
親父やお袋のような劇的な変化はないものの、体調が良くなったりしているようだ。
「わん!」
「お、食べ終わったか。ちょっとしば太と外に行ってくるな」
一言両親に告げて俺はしば太と一緒に外へと繰り出した。
しば太は首輪はしているがリードはしていない。
さっきも言った通り異常に賢いし、俺の言うことは守るので必要ないのだ。
「今日はどうする?」
「わう~」
「山で鬼ごっこでもするか!」
「わん!」
「それじゃ、10秒数えるから逃げてくれ。よーいドン!」
すると、しば太がもの凄いスピードで森の中に走っていく。
柴犬がのスピードがどれぐらいかわからないが、尋常な速度じゃない。
どうせならスキルオーブとかあげてみたいのだが、残念ながらステータス情報を得られない今では無理だ。
そもそも犬が得られるのかもわからんが。
「よし、俺もいきますかね」
~~~~~
「汚れてるから綺麗にしないとな」
「わふぅ~」
森を思い切り駆け回ったあと、土で汚れたしば太を洗ってやる。
ペットショップで買ってきた犬用のシャンプーで細かいところまで丁寧に。
「ここがええんか?」
「くぅん」
ゴシゴシしてやると気持ちよさそうな鳴き声をあげる。
洗ってる俺も癒されるようだ。
しば太を綺麗にしてやり、乾かしたあとブラッシングをしてやる。
こうすることで毛艶が良くなり気持ちの良いもふもふになるのだ。
すると、車のエンジン音が家の前で止まる音がした。
「ん?来客か?珍しいな」
この町の産業はうちのように農業一択で、来客があるとすれば親戚や取引先の関係者なのだが、今日はそういう話を聞いていない。
ピンポーンーー玄関のチャイムがなる。
「はいはい。どちら様かなっと」
俺は玄関の引き戸を開けた。
そこには俺にとってとても懐かしい顔があった。
「達郎?久しぶりだな!」
「龍一も元気そうで嬉しいぞ!おひさ!」
こいつは鈴木 達郎。
ここには残念ながら学校がないので、小中高と隣町まで通っていた。
そして小学生の時に出来た友人の一人がこの達郎だった。
中高も同じ学校で、当時は良くつるんでいたしうちにも来たことがある。
俺は都内の大学に進学し、達郎は実家の会社に就職したので、会うのはかなり前ににあった同窓会以来だ。
「突然どうした?」
「龍一が実家に帰ってるって聞いてよ。それならと思って来てみたわけだ」
「ん?どうして知ってるんだ?」
「うちの取引先の人から聞いたんだよ。あの会社でちょっとした事件があったって」
俺の勤めていた会社は手広くやっている総合商社だった。
一方、達郎の所は食料品の卸業を営んでおり、その関係者から例の事件について聞いたようだ。
確かにあそこにも食料品関係の部署があったし、どこにどういう繋がりがあるかわからんもんだな。
ともかく、それを聞いて気になった達郎があの会社にアポを取った所、既に俺が退職していることが判明。
どうやらそこで実家に戻ったようだと聞いたらしい。
同僚や後輩にそう言って去ったからな。
「それならうちに連絡してくれれば良いだろ。知らない仲じゃないんだから。というかもう2年も前だぞ?」
「ははは、すまんすまん。少し驚かせようと思ってな。知ったのは本当に最近なんだよ」
「まぁいいや、あがってけよ」
「おう。お邪魔しまーす」
達郎は俺の両親にも挨拶し、俺の自室へとあがる。
しば太も後ろをトコトコついてくる。
「ここに来るのも久しぶりだな」
「相変わらず何も無い部屋ですまん」
「いいってことよ。それにしてもお前変わったな」
「そうか?」
「体付きもがっしりしてるし、存在感?が凄いような」
「ずっと農作業をしてるからな。存在感は良くわからんが.......」
日中は農作業に勤しみ、ダンジョンであれだけ戦闘していれば嫌でも鍛えられる。
存在感についても心当たりはありすぎる。
といっても説明できないからな。
「まぁいいや。なぁ、龍一の父ちゃんと母ちゃんってもう60だよな?」
「お、そうだな」
「なんだありゃ。どうみたって40かそこらだぞ!」
「別に良いだろ。悪いことじゃないんだし」
「それはそうだが.......」
俺はしば太をなでなでしながらなんでもないように装う。
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