ダンジョンライフ

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第10話

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あれから1ヶ月経った2月1日。
テレビ画面には元日と同じように西園寺首相が写っている。

これから曰本国民にとって大きな発表がある。
その内容はある程度察しがつくのだが、ここに至るまでに色々あった。

ダンジョンが現れた当時、日本政府は自衛隊による封鎖を行った。
各国の対応も大きく違わない。
しかし自衛隊や軍が封鎖したと言っても、それまでにダンジョンに入ったものがいないわけがない。
今の時代、スマホ1つあればその場で生放送なり動画、写真撮影等お手の物。
当然それはネット上に拡散する。
所々に垣間見得る魔物の存在や、それを運良く倒すことのできた発信者によるレベルやステータス、スキルと言った言葉がダンジョンという存在に現実味を帯びさせる。

そしてここはサブカル大国我らが曰本。
「あれはダンジョンではないのか」「ファンタジーが向こうから来た」等と大盛り上がり。

世論はダンジョンの一般公開を、という風に流れるが政府としては今すぐというのは無理筋な話。
そもそも正式にあれがダンジョンというのを公表していないわけだが、仮に一般にダンジョンを解放するとして、それによって生じる諸々の対策や制度が整っていない。
1部を除けば他国も似たような状況だった。

しかし、事は元日より2週間後に起こる。
多くのダンジョンがその国の人が集まる都市内やその近辺に出現したのだが、例えば曰本の富士ダンジョンのように辺鄙な場所に現れたものも存在する。
特に、人口が多く国土も広い中国、インド、ロシア、アメリカ、ブラジルといった国々にはそういったダンジョンが数箇所あった。
すぐに発見できればよかったが、それも叶わず2週間の間放置された結果、とうとうが起こってしまう。

そうーー魔物の氾濫ーーだ。

俺はこんなに早く起こるものなのかと驚いた。
溢れ出た魔物は人里を目指して侵攻する。
ただ、元々ダンジョンが辺境とも言える場所にあったことからゴブリンやオーク、オーガといった陸上戦力は運悪くその近くにあった集落や村、街を破壊するだけで消えていったーーそれはそれで最悪だがーー。
問題は航空戦力で、中にはドラゴンもいたという。
それが人口の多い街や都市を襲った。

俺はテトラから聞いていたし、各国政府もおそらく知っていたと思うが、魔物には銃を代表とする所謂近代兵器の類が一切通用しない。
せいぜい許されるのがボウガンぐらいだった筈。
そしてそれは魔物の強弱には一切関係なく、これはテトラ達神々によってそういう事にされているだけだ。

銃やミサイルをいくら撃とうが一切意味がない魔物によってそのエネルギーが尽きるまで無慈悲な破壊の力が人々を襲う。
その被害は数千万人から下手すると1億人以上とも言われている。
後に報道された被災地はまさに地獄絵図で、全世界の人々は恐怖した。
俺は核兵器等の最後の手段が取られなかったことに胸を撫で下ろしたな。

こういった形で魔物という存在が市民の間で確定的に明らかになり、いよいよ各国政府も選択を迫られる。
氾濫の原因は手付かずで放置された事と推測されるものの、じゃあ他のダンジョンは今のままで大丈夫なのかという事に直面する。
そして、元々都市内やその近郊で氾濫が起きた場合、その被害は想像を絶するのは想像するに難しくない。
現状、曰本ならば自衛隊や警察で協力して事にあたっているが、果たしてそれだけで1億2千万の国民を守りきれるのか。
そもそも、その自衛隊や警察の人員全てがダンジョンにかかりきりになれるわけがない。

それならある程度の危険を孕んでいるとしても、国民に自身で自衛できる力を持ってもらった方が良いのではないか、という結論に至る。

そういうわけで、この会見の話に戻る。
実はアメリカや中国といった氾濫の被害を受けた国は既にダンジョンが一般解放されている。
これは件の災害で国民が団結し立ち上がった結果だ。

日本でもいよいよその気運は高まり、国会でも寝る間を惜しんで議論が重ねられた。

「我々日本政府は昨今の世界、及び社会情勢を鑑み、〝ダンジョン〟と呼ばれる謎の建造物に対しまして新たに〝ダンジョン法〟を制定・施策することを決定しましたことをここに報告致します」

マスコミによるカメラのフラッシュが首相を包む。

「詳細につきましてはーー」

ダンジョン法に関する首相の説明が続く。
ダンジョンに関する行政機関〝ダンジョン協会〟の設立。
一般の国民へのダンジョンの解放、及び〝探索者制度〟の制定、等。



こうして世界は新たな時代へと舵を切るのだった。



~~~~~



「う~寒!」

季節は一応春となる3月中旬。
しかしまだまだ冬の寒さが続いており、布団から出るのが億劫だ。
何かもふもふしたものが一緒にいると思ったらしば太だった。
冬になってからは寒いのか良く俺の布団の中に潜り込んでくる。
可愛いから全然オッケーだけどさ。

曰本でダンジョンが市民に解放されてから1ヶ月とちょっと。
社会は空前のダンジョンブームに包まれていた。

魔石、魔物素材という新たな資源の登場によるものだ。
特に魔物肉は食べると美味しいのは勿論、美容や健康にも良いということが話題となっており、ホーンラビットの肉ですら手に入りにくい状況となっている。

お気づきだろうか。
親父とお袋の件だ。
あくまで現在は美容や健康に良いってことにしかなってはいないし、町の住民を含めて例の魔野菜の効果だと思っている。

しかし、勘の良いやつはいる。
友人の達郎だ。

先日俺に電話があり、えらく真面目なトーンでここに来て良いかと聞いてきた。
断るのも変な話なので了承したが.......。

それで達郎が来るのが今日なのだが、どうするかはまだ決めていない。
もしかしたら特に何もないかもしれないし。
ぶっちゃけ出たとこ勝負だがしょうがないか。

朝の作業を済ませて昼食をとる。
外でしば太と遊んでいると、見た事のある車がこっちに向かってきた。
車は家の前で止まり、待ち人が降りてくる。

「よう龍一。待ったか?」
「いや別に。まぁ上がれよ」

前回と同じように俺の部屋へと向かう。
お互いに向かい合って座る。

「単刀直入に聞きたい。お前の親父さんとお袋さんは魔物肉を食ってるんじゃないのか?」

来たか。
まぁとりあえず様子見かな。

「どうしてそう思う?あれはたかだか美容と健康に良いって聞いたが」

この返しが既に怪しさ満点だがしょうがない。

「美容と健康を突き詰めればその先にあるのは若返りだ。肌艶が良くなった程度ならまだしも、親父さんとお袋さんは突き抜け過ぎている。あれは日常的に魔物肉を口にしている、それもかなり前から。となるとおかしいのは魔物肉を手に入れる手段だ。ダンジョンが現れたのが元日.......辻褄が合わない」

達郎は昔から勘だけは異常によかった。
それに学校の成績はともかく頭は回るやつだった。
念を押す必要があるかもしれないが、協力してくれる友人がいる方が何かと都合が良い気がする。
俺は決断した。

「まぁそうだよな.......お前なら気づくと思った。話しても良いが、もしその気があるのなら他言はしないと約束して欲しい。ただの口約束だと思わないでくれよ?」

俺は魔力で威圧しながら達郎に問う。
魔力はこういう使い方ができるのだ。
かなり手加減はしているがな。

「わ.......わかった。お前は一体.......」
「なら良い。んじゃ、説明するぞ。これから話すのはただの事実だ」


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