冷遇王女の脱出婚~敵国将軍に同情されて『政略結婚』しました~

真曽木トウル

文字の大きさ
13 / 90

13、王女は正体を見抜く

しおりを挟む
   ◇ ◇ ◇


 しばらくして……襲撃者全員確保と周囲の安全が確認されて、ようやく私は車両から降りることができた。


「……御身を危険にさらし、申し訳ございません。
 それから、先ほどお身体に触れてしまいましたこと、深くお詫び申し上げます」

「い、いえ! 緊急事態ですから!
 こちらこそ、不用意に外に出てしまい、本当にすみませんでした」


 いまだに心臓はバクバクしている。

 恐かった。ものすごく。
 男性にのしかかられたことも含めて。
 だけどあれは……。


(……狙撃されていた間、イーリアス様は私を自分の身体で守ってくれていたんだわ。
 自分の身体を楯にして)


 先に、あの楯の女性が、私に一時的な身体強化魔法をかけてくれていた。
 だからむしろ危険だったのは、生身のイーリアス様の方だ。

 一歩間違えばイーリアス様が撃ち殺されていた。
 私の軽率な行動のせいで。


「……守ってくださって、ありがとうございます。イーリアス様もご無事で、良かったです」


 ホームに目をやると、農具を振りかざしてきてカサンドラ様に倒された2人、それからイーリアス様に殴り倒された3人が後ろ手に縛り上げられて転がり、ふてぶてしい顔で私を睨みつけている。


「警備が行き届かず、まことに申し訳ございません。
 王女殿下、ホメロス将軍」


 ライオットと呼ばれた女性が、他の犯人たちを引きずるように連れてきながら、申し訳なさそうに言う。
 狙撃犯が持っていたという銃もその場に置かれる。


「いいえ。私がこちらに来るタイミングがなかなか確定しなかったので、人員配置も大変だったかと思います。皆さまが身を呈して守ってくださったこと、心より感謝申し上げます」


 私は、イーリアス様に先んじてそう返した。

 警備には人員を確保しなければならない。
 そして、銃が普及したいまの時代、どこからなら要人を狙えるか?時間をかけて精査しそれらのポイントを押さえる必要がある。
 予定がギリギリまで決まらないと警備も計画が立てづらかっただろう。私もまさか、命を狙われると思っていなかったし。


「取り調べはあとだ。
 おそらくはゼルハン島の戦いでの戦死者遺族か、あるいは彼らに雇われた者が、トリニアスへの恨みを晴らそうとしたのだろう。
 まずは殿下を安全なところまでお連れを……」

「イーリアス様。少し、彼らと話してもよろしいですか?」

「え? ええ。しかし、あまり近づくと危険ですが」


 イーリアス様に許可をいただいたので、私は農具を振っていた男たちから少し距離をとりながら、にっこり微笑んだ。

 不思議なもので、命を狙ってきた男性でも、自分に性的な目を向けていないとそこまで恐くはなかった。


「────あなたたち、トリニアス人よね?」


 トリニアス語でそう言うと、明らかに2人の────いや、ほかの者たちも含めて顔色が変わる。


「さっきの説明的なセリフ、トリニアスなまりが抜けていなかったわよ?
 あと、『ゼルハン島の戦い』とは言われていてもベネディクト王国に戦死者が出たのはもっと東の島での戦闘だったわ。
 銃もトリニアス軍が使ってるものだし」

「「……!!」」

「それでもあなたたち自分がベネディクト人だというなら、もう少しベネディクト語で何かしゃべって見せて」

「ふ、ふざけるなっ!!
 俺たちはまぎれもなくベネディクトの……!!」 

「あら、良く意味がわかったわね。
 私トリニアス語でしか話していなかったのに。
 農夫という設定なのに、トリニアス語がわかったってことよね」

「……………………あ」
「ば、ばか!! なにやってんだ!!」


 私は念のため、周囲の衛兵に聞こえないよう、声量を落とす。


「国交の回復に水を差したいとは思えないから、国王陛下の仕業ではないでしょう。
 動機は私への個人的な遺恨か、あるいは戦争の口実作りとか。
 後者なら、あなたたちの主はうちの元帥げんすいあたり?」


 また顔色がわかりやすく変わる。
 元帥か。
 ……母でなくて良かったと思うべきか。


「ベネディクト人のふりをして王女であるわたしを暗殺し、その報復を口実に戦争を仕掛ける。
 そういうつもりだったのね」


 和平条約にはイーリアス様が〈誓約魔法〉をかけている。
 そこには、両国及び両王家が爵位を与えている公国の領土への不可侵が含まれているから、もし万が一私が死んで、それを口実に軍部が戦争を仕掛けようとしても王家は追認しないはずだ。
 だけどそれを、軍部は知らない。


「どのみち死を覚悟しているのでしょうけど、元帥が失敗した者に下す制裁は酷いわよ。
 早く白状して、ベネディクト側に保護を求めた方がいいのじゃないかしら」

「……………………」


 犯人たちは次々にうなだれた。

 私はイーリアス様を振り返る。
 トリニアス語のわかるイーリアス様も、状況は把握したようだ。


「終わりました、イーリアス様。
 この度はトリニアスの者が大変なご迷惑をお掛けし、まことに申し訳ございません。
 深くお詫び申し上げますわ」


   ◇ ◇ ◇
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。

ラム猫
恋愛
 異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。  『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。  しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。  彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。 ※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

聖獣の卵を保護するため、騎士団長と契約結婚いたします。仮の妻なのに、なぜか大切にされすぎていて、溺愛されていると勘違いしてしまいそうです

石河 翠
恋愛
騎士団の食堂で働くエリカは、自宅の庭で聖獣の卵を発見する。 聖獣が大好きなエリカは保護を希望するが、領主に卵を預けるようにと言われてしまった。卵の保護主は、魔力や財力、社会的な地位が重要視されるというのだ。 やけになったエリカは場末の酒場で酔っ払ったあげく、通りすがりの騎士団長に契約結婚してほしいと唐突に泣きつく。すると意外にもその場で承諾されてしまった。 女っ気のない堅物な騎士団長だったはずが、妻となったエリカへの態度は甘く優しいもので、彼女は思わずときめいてしまい……。 素直でまっすぐ一生懸命なヒロインと、実はヒロインにずっと片思いしていた真面目な騎士団長の恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は、他サイトにも投稿しております。 表紙絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID749781)をお借りしております。

【完結済】隣国でひっそりと子育てしている私のことを、執着心むき出しの初恋が追いかけてきます

鳴宮野々花@書籍4作品発売中
恋愛
 一夜の過ちだなんて思いたくない。私にとって彼とのあの夜は、人生で唯一の、最良の思い出なのだから。彼のおかげで、この子に会えた────  私、この子と生きていきますっ!!  シアーズ男爵家の末娘ティナレインは、男爵が隣国出身のメイドに手をつけてできた娘だった。ティナレインは隣国の一部の者が持つ魔力(治癒術)を微力ながら持っており、そのため男爵夫人に一層疎まれ、男爵家後継ぎの兄と、世渡り上手で気の強い姉の下で、影薄く過ごしていた。  幼いティナレインは、優しい侯爵家の子息セシルと親しくなっていくが、息子がティナレインに入れ込みすぎていることを嫌う侯爵夫人は、シアーズ男爵夫人に苦言を呈す。侯爵夫人の機嫌を損ねることが怖い義母から強く叱られ、ティナレインはセシルとの接触を禁止されてしまう。  時を経て、貴族学園で再会する二人。忘れられなかったティナへの想いが燃え上がるセシルは猛アタックするが、ティナは自分の想いを封じ込めるように、セシルを避ける。  やがてティナレインは、とある商会の成金経営者と婚約させられることとなり、学園を中退。想い合いながらも会うことすら叶わなくなった二人だが、ある夜偶然の再会を果たす。  それから数ヶ月。結婚を目前に控えたティナレインは、隣国へと逃げる決意をした。自分のお腹に宿っていることに気付いた、大切な我が子を守るために。  けれど、名を偽り可愛い我が子の子育てをしながら懸命に生きていたティナレインと、彼女を諦めきれないセシルは、ある日運命的な再会を果たし────  生まれ育った屋敷で冷遇され続けた挙げ句、最低な成金ジジイと結婚させられそうになったヒロインが、我が子を守るために全てを捨てて新しい人生を切り拓いていこうと奮闘する物語です。 ※いつもの完全オリジナルファンタジー世界の物語です。全てがファンタジーです。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて何故か執着されました

古里@3巻電子書籍化『王子に婚約破棄され
恋愛
皆様の応援のおかげでHOT女性向けランキング第7位獲得しました。 前世病弱だったニーナは転生したら周りから地味でダサいとバカにされる令嬢(もっとも平民)になっていた。「王女様とか公爵令嬢に転生したかった」と祖母に愚痴ったら叱られた。そんなニーナが祖母が死んで冒険者崩れに襲われた時に助けてくれたのが、ウィルと呼ばれる貴公子だった。 恋に落ちたニーナだが、平民の自分が二度と会うことはないだろうと思ったのも、束の間。魔法が使えることがバレて、晴れて貴族がいっぱいいる王立学園に入ることに! しかし、そこにはウィルはいなかったけれど、何故か生徒会長ら高位貴族に絡まれて学園生活を送ることに…… 見た目は地味ダサ、でも、行動力はピカ一の地味ダサ令嬢の巻き起こす波乱万丈学園恋愛物語の始まりです!? 小説家になろうでも公開しています。 第9回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作品

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

このたび、あこがれ騎士さまの妻になりました。

若松だんご
恋愛
 「リリー。アナタ、結婚なさい」  それは、ある日突然、おつかえする王妃さまからくだされた命令。  まるで、「そこの髪飾りと取って」とか、「窓を開けてちょうだい」みたいなノリで発せられた。  お相手は、王妃さまのかつての乳兄弟で護衛騎士、エディル・ロードリックさま。  わたしのあこがれの騎士さま。  だけど、ちょっと待って!! 結婚だなんて、いくらなんでもそれはイキナリすぎるっ!!  「アナタたちならお似合いだと思うんだけど?」  そう思うのは、王妃さまだけですよ、絶対。  「試しに、二人で暮らしなさい。これは命令です」  なーんて、王妃さまの命令で、エディルさまの妻(仮)になったわたし。  あこがれの騎士さまと一つ屋根の下だなんてっ!!  わたし、どうなっちゃうのっ!? 妻(仮)ライフ、ドキドキしすぎで心臓がもたないっ!!

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

処理中です...