最強テイマーの姉が行方不明になりました〜最弱テイマーの僕が必ず見つけます〜

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第三.五章 地下探し編

第六十話 ジシャンの一週間

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(はあ……もう日が沈むわ。今日はもったいないけど、もう休もうかしら)

 サウス王国にジシャンが着く頃には、夜がやってきていた。家に着いたジシャンは、ホースを狭い家に入れ、そのままキッチンへ向かった。

(そういえばホースってご飯食べてないわよね……食べなくても大丈夫なのかしら?)

 ジシャンは試しにホースが食べられそうな物をホースの口元に持っていった。それをじっと見つめるホース。しかし、少しして首を横に振った。

「いらないの?」

 ホースは首を縦に振った。

(驚いたわ……人間に伝わるジェスチャーをするなんて。そういえば、サフィアちゃんがテイムしてた子たちも何も食べてなかったわね。もしかして、テイマーってそういう力を持ってるのかしら? でも、エメ君はご飯食べてたし……うーん、わからないわ)

 ジシャンは考えていても仕方がない、今は自分のことに集中しようと奥から適当な物を持ってきてそれを焼いて食べた。食事を済ませると、帽子とマントを外し、帽子は机の上に置き、マントを掛け布団代わりにしてソファに横になった。そのまま灯りも消し、眠り始めた。
 夢の中、ジシャンは不思議な空間を漂っていた。

(あら……ラルド君みたいにちゃんと形になった夢が見たいわ。こんな意味不明な荒唐無稽な夢じゃなくて)

 辺りは桃色の雲に包まれており、時々泡がどこかを映し、その度弾けていく。その泡の中に入ろうと身体を動かすジシャンだが、いつも追いつく前に弾けてしまう。

(キー! 私の夢の世界はなんでいつも変なのよ!)

 すると、急にドスっと何かが落ちるような音が聞こえた。それと同時に、ジシャンは目を覚ました。ソファから落ちていた。どうやら、夢の世界で動きすぎたことで現実でも反映されてしまったようだ。

(ラルド君は夢の世界を歩き回っても現実ではずっと止まってるのに、なんで私はダメなの?)

 ジシャンは少し不貞腐れながらも、とりあえずやるべきことを最優先でやることにした。

(さーてと、地下世界を知ってそうな人を捜さなくちゃ。と言っても、一人くらいしか頼れそうな人はいないけどね)

 ジシャンは服装を整え、帽子を被り、外へ出た。朝日が気持ち良くて、背伸びをする。

(朝は出来れば早めに動きたかったけど、ちょっと起きるの遅かったかしらね。誰にも見つからないと良いけど……)

 ジシャンが向かう場所は魔法学校。そこの生徒に気づかれないよう、細心の注意を払いながら移動する。帽子は深く被り、マントで全身を隠している。
 魔法学校に着くと、校門が開いていなかった。まだ生徒が登校する時間ではないからだろう。無理やり入ることも可能だが、そうすると結界に弾かれて終わりなので、門からしか入れない。そのことを知っていたジシャンは、諦めて校門が開くのを近くで座って待つことにした。

(暇ね……私が教師をやってた頃は、この時間には開いていたのに。まあ、時間が経てば世の中は変わるわよね)
「あのー、あなたは?」

 ジシャンがマントにくるまっていると、生徒らしき者に話しかけられた。ジシャンは少し驚くが、すぐに冷静になり、おばあさんになりきることにした。

「わたしゃその辺のババアだよ。ここに用事があって来たのさ」
「おばあさん、なんの用事でここに?」
「校長先生に会いたいのさ」
「校長先生に会おうだなんて、おばあさん、僕が良く知らないだけで凄い魔法使いなんですね」
「まあね」
「門が開いたら、校長先生のいる部屋まで案内しましょうか」
「いいや、大丈夫よ。校長室はわかってるから」
「そうですか。ところでおばあさん、呪文を見せてくれませんか?」
「どうしてだい?」
「校長先生に生徒じゃなくて会えるなんて、よほどの人じゃなきゃ無理なはずです。そんなおばあさんの力を見てみたいです」
「ほーう。それじゃあ、ちょっと上を見上げてなさい」

 少年はジシャンに言われるがままに空を見上げた。ジシャンは空に向かって大火球を放った。他にも、色々な呪文を空に打ち上げた。

「……ふぅ。魔力の関係でここまでしか見せられなかったけど、期待には応えられたかな?」
「おばあさん、もしかして、ジシャン様では?」
「い、いや、わたしゃジシャンちゃんではない。なんでそんな風に思ったんだい?」
「無名のおばあさんがあんな力を持っているはずがないです。もしそんな力があるなら、学校の教師になっているはずです。ジシャン様は、ここの教師をしていたと聞きます」
(ありゃりゃ。困ったわね。完全にバレてるわ。どうしようかしら。いっそ正体を現しても良いかも……)

 ジシャンがそんなことを考えてるうちに、魔法学校の校門が教師によって開かれた。教師は胸に名札をつけており、これのおかげで結界を無視して学校に侵入出来るのだ。ジシャンは既に名札の効果が切れているため、入ろうとしなかった。

「ホウマ、今日もお前が一番乗りだ。勉強熱心で、先生たちはお前の活躍を期待しているぞ」
「ありがとうございます」
「ところで、そのおばあさんは誰だ?」
「ああ。なんだか、校長先生に会いたいみたいでここに来たようです」
「あのー、おばあさん? 得体の知れない人を校長先生に会わせるわけにはいかないのですよ。大人しく帰ってください」
「先生、このおばあさん、きっとジシャン様です。さっき凄い呪文を見せてもらいました」
「おばあさん、本当にあなたはジシャン様なのですか?」
「……(もう、明かすしかなさそうね)」

 ジシャンはマントを握る手を離し、深く被っていた帽子を上げて、正体を現した。

「あぁ……やっぱりジシャン様だったんですね!」
「ジシャン様、なぜ正体を隠していたのですか?」
「ほら、私って人気者でしょう? そんな私が学校にいたら、他の子たちが興奮して勉強に集中出来ないわ。でも、今は教師のあなたとホウマ君しかいないから、隠すことをやめたわ。さあ、他の子たちが来る前に校長先生に会わせてちょうだい」

 校門を通ろうとしたジシャンを、ホウマが止めた。
「ジシャン様、お待ちください! あの、もし良かったら……僕と戦ってくれませんか?」
「時間がないわ。また今度ね」
「今度っていつですか」
「わからないわ」
「じゃあ、今戦わせてください。お願いします」

 ホウマが深々と頭を下げる。ジシャンは少し悩んだが、さっさと終わらせれば大丈夫と、ホウマと戦うことにした。

「それじゃあ、急いで戦いの場へ行きましょう」

 教師、ホウマ、ジシャンの三人は戦いの場へ向かった。
 教師がストッパーをすることになった二人の戦い。ジシャンは最初から本気でいくことにした。

(この子には申し訳ないけど、しょうがないわね)
「では、戦いを始めます。よーい……スタート!」

 ジシャンは爆発呪文をホウマに放った。辺りは光に包まれ、しばらくして光が収まった。しかし、煙の中、ホウマは余裕そうに立っていた。

「あら、結界を張れるのね」
「いやー、危なかったです。結界がヒビだらけですよ。それじゃあ、今度はこっちからいきます!」

 ホウマも爆発呪文を唱えた。ジシャンは急いで結界を張り、攻撃を防いだ。ジシャンの結界もホウマと同じくらいヒビが入る。

(うそ……私と互角……これは申し訳ないけれど、本気の本気を出さなくちゃいけないわね)
「ジシャン様、挨拶は済んだことですし、本気できてください。さっきの爆発呪文、明らかに本気じゃありませんでしたよね?」
「そうね。ここからが本番よ!」

 ジシャンは七色の呪文を使い分け、ホウマに次々と攻撃する。ホウマ側も、その呪文を打ち消すように攻撃する。両者とも一歩も譲らない試合が続いた。
 気がつけば周りにはギャラリーが集まっており、ホウマは応援されまくっている。ジシャンの願いは、叶うことはなかった。

「ホウマ様ー! 頑張ってー!」
「ジシャン様に勝ったらいよいよだな。あいつ、すげーよ」
(まさかここまでやるとは思わなかったわ。本気の私を止められるなんて。だけど、まだ最終手段は使ってないわ)
「ジシャン様! 僕はまだまだいけますよ!」
(仕方ないわ。魔王を倒す用にとっておいたあの技を撃つときね)

 ジシャンは腰から杖を取り出し、それで円を描いた。すると、ジシャンの周りが特殊な結界に包まれた。それは、呪文を反射する結界だった。ずっとフルパワーで呪文を撃ち続けていたホウマは、全て自分の元に返ってきて大ダメージを受けた。後ろへ倒れ、白目をむいていた。

「ホウマ君! 大丈夫か!」
「教師さん、私が回復させますので焦らないでください」

 ジシャンは腰からポーションを取り出し、ホウマの口を開けて飲ませた。すると、目が元に戻り、ジシャンの膝枕から起き上がった。

「うぅ……ジシャン様、最後のあれはいったいなんだったのですか?」
「あなたは賢そうだから、敢えて教えないわ。自分で考えなさい」
「そうですか……ジシャン様、また戦える機会があれば、アレの対策を考えておきます」
「頑張ってね」
「はい!」

 ジシャンは立ち上がると、たくさんの生徒に名前を呼ばれながら、校長室へ向かった。
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