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第三.五章 地下探し編

第六十五話 再集結

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 翌朝、目を覚ましたラルドは、早速レイフの家に向かう準備をしていた。

(最近ずっとカバンの中身整理してなかったからな。要るもん要らないもんしっかりわけなくちゃ)

 カバンの中身を整理する音で、エメも目を覚ました。

「ラルド、うるさいな。何やってんだ?」
「カバンの整理。うーん、魔王スゴロクはもう遊ばないよなー」
「待て。それがないと暇潰しが出来なくなる。旅には必ず必要だ」
「ただ遊びたいだけだろ。まあ一応持ってくけど」

 結局カバンの中身は変わらなかった。しかし、創造神のコンパスやナキガラからもらった紙、それを基に文章を作った紙はすぐ取り出せる場所に移すことが出来た。
 朝食の美味しそうな匂いにつれられ、二人は部屋を出た。行ってみると、既に食卓にルビーが座っていた。トパーは、まだ料理を続けている。

「父さん母さんおはよう。今日からまた外で姉さんを捜してくる。また何か用事が出来たら帰ってくるよ」
「そうか。もう俺は止めない。自分の好きなようにしろ。ただ、命が危なくなったらすぐに帰ってくるんだぞ。死なれちゃたまらないからな」
「ラルド、私はこれくらいしかしてあげられないけれど、許してね。はい、ラルドが一番大好きなたまご焼き」
「母さん……ありがとう。いただきます」

 朝食を食べ終え、家から出る。今日は珍しくルビーも見送ってくれた。

「いってきます!」
「「いってらっしゃい」」

 二人は村から出ていった。ルビーとトパーは快く見送った。

「あなた、随分と優しくなったわね。旅を許可したり、わざわざ見送ったり。何か良い夢でも見たの?」
「そうだ。ラルドがこの村の村長になって、サフィアと一緒に子どもたちにテイムのやり方を教えてる夢だ。この夢は素晴らしかった。俺たちテイマーが差別されることもないしな」
「もう、夢の一つや二つで態度変わりすぎよ。ちゃんと自分の意見をきちっと持ってなきゃダメでしょ」
「人の意見なんざコロコロ変わる。それで誰かを振り回したりしてはいけないがな」
「自分は誰も振り回してないからオーケーってこと? もしそうなら、自分勝手にも程があるわよ」
「いつから俺が自分勝手じゃない奴だと思ってたんだ? トパー。結婚したときからこんな感じだろ」
「はぁ……それもそうね。でも、ラルドをちゃんと信用出来るようになったのは褒めてあげるわ」
「さあ、あいつらはもう行ったんだ。さっさと家事をしてくれ」
「はいはい、わかりました」

 二人は自分のやるべきことをやりだした。
 レイフの家にたどり着いたラルドとエメは、早速扉をノックする。しばらくして、キャイが扉を開けにきた。

「久しぶり。全然私を呼ばなかったけど、元気にしてたかい?」
「キャイ、全然呼ばなかったのはごめんな。お前に出来そうな仕事、なかったからさ」
「私の戦闘能力も侮れないわよ。もしかしてその辺の猫と一緒の力だと思ってる?」
「そんなに強いなら、今度呼んでみるよ。それで、レイフ様はどこにいるんだ?」
「ご主人様ならいつもの部屋で座ってるわよ。他の人たちはまだ来てないわ。そんなに時間はかからないと思うけどね。それじゃあいつもの部屋に行きなさい」
「お邪魔します」
「邪魔するぜ」

 キャイが道をあけたので、二人は家の中にあがり、いつもの部屋へ向かった。
 部屋には、レイフとウォリアがいた。どうやらジシャンはまだ来ていないようだ。

「レイフ様、ウォリア様、お久しぶりです」
「久しぶり。あとはジシャンだけだな。どうする? ジシャンが来るまでに俺たちだけで成果を話し合うか?」
「うーんそうだな、待ち時間潰しがそれしかないならそれで良いかもしれん。ラルド、お前、魔王スゴロクって持ってるか? あれがまだあるなら、それで時間を潰そうと思うんだが」
「ちゃんと持ってますよ。エメに言われてカバンから出すのをやめました」
「じゃあ、それで時間を潰そう。レイフ、それで良いか?」
「どうやら成果を話したくてウズウズしてる奴もいないみたいだし、それで良いだろう。さあラルド君、早く魔王スゴロクを出してくれ」

 四人は魔王スゴロクで遊び始めた。
 一方ジシャンは、二人は乗せられないとホースに断られたため、徒歩でレイフの家に向かっていた。

「ジシャン様、一体僕をどこに連れて行くのですか?」
「レイフの家よ」
「レイフ……勇者ですね。彼に殺された怨念が地下世界にはたくさんいました。僕の中にも少し彼を怨む怨念が入ってるかも……」
「あら、それで暴れたりしないでよ? 私の家よりは圧倒的に広いけど、装飾品や豪華な物がたくさん置いてあるから、弁償しなきゃいけなくなっちゃうわ」
「ジシャン様、僕の中の怨念は既に消えています。安心してください。戦いでも起こらない限り、僕が力を解放することもありませんでしょうし」
「まあ、今さら戦いなんかしないでしょうね。少なくとも現実では。それにしても、ホースに乗っての移動と比べると、だいぶかかるわね……あーあ。誰か都合良く私たちを運んでくれる子が来ないかしら」

 ジシャンはわずかに天に祈ってみた。すると、何かがジシャンたちのもとに落ちてくる。

「あ、あれは……」
「ジシャン様、こ、怖いです……」

 二人は立ち止まり、空を見上げる。落ちてきたのは、ニキスだった。

「やあ、ジシャン。私がお前たちをレイフの家に運んでいってやろう。さあ、背中に乗れ」
「ジシャン様、この竜はなんですか?」
「ラルド君のテイムしてる竜よ。敵じゃないから安心して」
「ホウマ、そう怯えるな。私の背中は乗り心地が良いぞ」
「なぜ僕の名前……あぁ。そういうことか。とにかく敵じゃないなら良かった。背中に乗せてもらう」

 ニキスの背中に乗った二人は、すぐにレイフの家の庭に着いた。突然ベッサに入ったため、周りの人々が怯えて逃げ出した。

「キャー! レイフ様の家に竜が出たわ!」
「竜だと! ……あれ、もういなくなってる……?」
「あなたたち、きっと見間違いよ。竜なんていないわ」
「ジシャンさんがそう言うなら、やっぱり私たちの見間違いかしら……ごめんなさいね、騒いじゃって」

 ニキスは既に人間の姿になっており、竜には思われなかった。逃げた人々だが、少ししてまた普通に道を歩き出した。

「はぁ、襲わないというのにあの慌てっぷりだ。まあ、竜だから警戒されるのは当然か」
「さあ、面倒ごとも済んだことだし、早くレイフのところへ行きましょ?」

 ジシャンは裏扉をノックした。
 コンコンコン。扉を叩く音を聞いたレイフは、魔王スゴロクを片付けるようラルドたちに言い、裏扉に向かった。キャイが開けようとしていたが、レイフがやってきたことでキャイは別の場所に行った。

「よお、ジシャン。遅いなーと思ったら、急に来たな」
「ニキス君がわざわざ私たちを運んでくれたの」
「私……? あ、本当だ。後ろに誰か隠れてるな」

 レイフは足元を見て、四つ足があるのを確認した。ジシャンの後ろからこっそり覗くように、ホウマはレイフを見る。

「客人を連れてくるとは……ジシャン、この子の名前は?」
「それもこれも後で話すから、待っててちょうだい。みんなの成果を話し合うのでしょう?」
「まあ、そうだな。それじゃあ君、俺かジシャンについてきてくれ。ニキス君も何をしてたか教えてくれよな」
「もちろん。大したことはしてないがな」

 三人を家に招いたレイフは、いつもの部屋に全員を集めた。
 全員集合したところで、それぞれ成果を話し合うことにした。順番は、レイフ、ウォリア、ニキス、ラルドとエメ、ジシャンというふうになった。

「じゃあ、まずは俺から。図書館の本を読み漁ったが、変なのしか出てこなくて成果はなかった。以上だ」
「え……レイフ、お前本当にそれだけなのか?」
「それだけだ。許してくれ。俺は何も手がかりを掴めなかった」
「じゃあ、次は俺だな。俺は、情報屋に行って部下たちを助けた後、イース国王に抗議をした。すると、王は無償で提供する学校を作ると言った。だが、肝心の情報屋はなにも情報を見つけられなかった」
「お前、地下世界について調べる時間を国を変える時間に割いたんだな……。まあ、時間の使い方は決めてなかったから、それでも良いが」
「いやな、一週間前、ジシャンに言われて国を変えなくちゃって決心してな。……そんな話はどうでも良いや。ニキス、お前は何をしてた?」
「私は、スカイ王と天界の竜たちに情報を訊いたが、何一つ情報を得られなかった。それからは創造神と一緒にお前たち全員の行動を観察していた」
「だから、私のところに来てくれたのね」
「……まあ、勘で行ったんだけど、たまたま場所が合ってたのさ。創造神、お前たちを観るための水晶を割っちゃったんだ。今、創造神は水晶を作り直してる」
「あとは、ラルド君とエメ君、ジシャンとその子だけだな。双方、何か成果がありそうに見えるぞ」
「いやー、レイフ様。僕の方は大したことない成果ですよ」
「大小構わない。とにかく情報があれば共有してほしい」
「わかりました。今から話します」

 ラルドはカバンを漁り、例の紙二枚を取り出した。
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