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第四章 地下編
第八十話 サウス人の夢
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エメとジシャン以外の一仕事終えた一行は、夢の世界での戦いに疲れたのか、遺跡で横たわっていた。エメは全然平気そうで、ジシャンは驚いている。
「エメ君、レイフたちみたいに疲れたりしてないの?」
「まあ俺、何もしてないし……せいぜい荷物を運んだくらいだ」
「それでも大仕事じゃない? ウォリアの鎧なんか、私が持てないくらい重たいわよ」
「うーん、夢の世界だからか、重たくはなかった。さて、話を戻そう。めちゃくちゃな夢の世界をどうにかしたいんだったよな?」
「ええ。私に限らず、サウスの人間はみんな変な夢を見るの。エメ君なら何か対処法を知ってるんじゃないかなーって」
「それじゃあ、ジシャンだけの問題ではなく、サウス人全員の問題なのか。ホウマは普通に連れてこれたけどな」
「あの子は、生まれが特殊だもの……見た目は完全に人間だけど、中身は魔物よ」
「へー、そうだったんだ。とりあえずはなぜサウス人の夢の世界がめちゃくちゃなのかを知る必要がありそうだな。そこから考えよう」
エメはその場に座り、その辺にあった木の棒で地面に文字を書き始めた。ジシャンはかがみ、文字を見やすくする。
「えーっと、まず、サウス王国について考察するか。サウスは、はかいしんが一度暴れたときより前から存在する国だよな。そしてウストも元は王国で、両者は争っていたと」
「あの時代に魔王はいなさそうだし、共通の敵を持ってないとああなっちゃうのかもね。この時代でも、そう遠くないうちに戦争が起きるかも……」
「なぜ争っていたのか。ラルドなら知ってそうだ。おいラルド、起きろ」
「はいはい」
エメはラルドを揺すった。ラルドはめんどくさそうに返事をする。
「なんで昔のウストとサウスが戦争してたのかわかるか?」
「サウス人が夢装置っていうのを盗んだから。夢装置は、夢の中を自由に動き回れる装置だ。ダイヤが僕たちの夢を接続出来るのは、それがダイヤについてるからだ」
「ほう、つまり、サウス人が盗んだ夢装置に何かがあって、そのまま今のサウス人にも悪影響が出てると考えられるな。ありがとうラルド。核心に迫れそうだ」
「もう良いか?」
「ああ。ゆっくりしててくれ」
ラルドはまたすぐ仰向けになり、重たい身体を休めた。エメとジシャンは変わらず会話を続ける。
「夢装置のせいでサウス人の夢がおかしくなっているということは、それを断ち切れば良いんだ。ジシャンは、何か心当たりないか?」
「うーん……校長先生なら何か知ってるかしら。でも、この前話したときに何も言ってなかったから、知らないかなー」
「まあそりゃそうなるわな。そもそも夢装置が破壊されたのか今も残ってるか何もわからないし。とりあえずこの件は置いておいて、即席で出来る代替案が必要だな」
「そうね。本当はサウス人のみんなを助けてあげたいけど、それには時間がかかりすぎるでしょうしね。それで? 即席で出来る代替案ってなに?」
「俺の力で無理やり夢の世界を創り出す。これだ。正しく眠れば、きっと効果を発揮するだろう」
「どんか方法なの?」
「俺が描く魔法陣の上で寝てもらう。それだけだ。俺が呪文を発動すれば、あとはなんとかなるさ。ただ、一つだけ注意点。これは初めての試みだから、失敗するかもしれん。失敗したら、頭に多大な負荷がかかる。死にはしないが、ドンとくるような痛みがあるかもしれない。それでも良いか?」
「ええ。大丈夫よ。そのくらいなら」
「じゃあ今から試しにやってみるから、ちょっと待っててくれ」
エメとジシャンはその場を離れ、魔法陣が描ける場所へ移った。魔法陣を描き終えたエメは、ジシャンに魔法陣の上で寝転ぶように言う。
「準備オーケーだ。寝転がってくれ」
「わかったわ。催眠で眠らせる感じかしら?」
「ああ。それじゃあ、始めるぞ」
エメは催眠術をかけ始めた。効果はすぐにあらわれて、ジシャンは夢の世界へ入っていった。
ジシャンの夢の世界。ピンク色が広がり、足場のない世界。いつものめちゃくちゃな夢となんら変わりはなかった。
(あら残念。失敗しちゃったのかしら)
ジシャンがそう思っていると、いつものように泡の中に世界が映されていた。それをいつも通り掴んでみようと、ジシャンは腕を伸ばした。いつもなら触れた瞬間に弾ける泡。しかし、今回は掴むことが出来た。
「やった!」
しかし、そこからどうすれば良いのかわからず、そのうち泡はジシャンの手の中で消えた。何度も同じことを繰り返し、ジシャンはがっかりし始めていた。
「もう、全然ダメだわ。エメ君の力でもダメだなんて、呪いか何かなのかしら。昔の人を恨んでもしょうがないけど、腹が立つわ」
ジシャンは泡を掴むことを諦めて、目覚めた。思ったより早く起きたジシャンを見て、エメは失敗を憂いていた。
「ダメだったか。何がダメだった?」
「世界を映す泡を掴むところまでは良かったんだけど、掴んでからどうすれば良いのかわからなくて……」
「泡?」
「私の見る夢はね、世界が映った泡がところどころに浮かんでるの。それに触れようとすると今まで届かなかったけど、今回は届いたの」
「そうか……そうなると、安定した夢の世界の泡を掴む必要がありそうだな。あるいは、ダイヤの花畑が映る泡を掴んでみるとか」
「じゃあ、今度はダイヤ君に協力してもらおうかしら。ダイヤ君を連れてくるわね」
「あいつ、立てるかな……」
ジシャンはダイヤを呼びに行った。
しばらくして、昼頃、ジシャンがダイヤを連れてきた。
「エメ君、ごめんね。説得するのに時間かかっちゃって」
「おいおい、今はゆっくりさせてくれよ……俺は機械だけど、人間の記憶が戻ってるから精神的に疲れてるんだよ」
「それじゃあさっさと終わらせてやる。ほれ、早く早く」
ダイヤとジシャンは横になった。ダイヤは疲れからか何もせずに眠った。ジシャンはエメの催眠術で眠った。
再び夢の世界。ジシャンは花畑の泡を探して夢の中をさまよっていた。起きている間に訊いた景色を参考に探す。少しして、ジシャンは花畑の泡を見つけた。
(きっとあれね……急いで掴みにいかなくちゃ)
ジシャンは必死に泳いで、その泡を追いかけた。やがて追いつき、泡を掴んだ。そして、泡に呼びかける。
「ダイヤ君、ジシャンよ! 私をあなたの夢の世界に入れて!」
「! この声は……一体どこからしているんだ」
どうやらダイヤの夢の世界を見つけたようだが、肝心のダイヤはジシャンを捜して奔走する。急がなければ、泡がいつ弾けてしまうかわからない。ダイヤもジシャンも慌てる。声を頼りにジシャンを捜すダイヤ。
泡がどんどん膨張して弾けかける。これまでかとジシャンは諦めかけたが、ついにジシャンから見える場所にダイヤはたどり着いた。ダイヤが空を見上げると、大きくジシャンの顔があった。ダイヤはジャンプし、ジシャンの手を掴み、自分の夢の世界に引きずり込んだ。二人はそのまま花畑に落ち、ダイヤの上にジシャンが乗っかる。ジシャンはダイヤに抱きついた。
「ダイヤ君、ありがとう! これで私も、役に立てるわ!」
「わ、わかったわかった。恥ずかしいからどいてくれ」
「あら、王子様ってそんなお年頃だったの?」
「う、うるさい……とにかくこれで夢が接続出来るようになったことがわかったから、さっさと目覚めるぞ」
二人は目を覚ました。目覚めた二人に、エメは問いかける。
「成功したか?」
「ああ。成功した。でも、これって手間じゃないか? わざわざ魔法陣描いて、しかも良く捜さなくちゃいけないなんて。やっぱりジシャンを夢の世界に連れていく必要はなさそうに思うが」
「いや、絶対行くわよ。ダイヤ君、よろしくね」
「いちいち魔法陣を描くのも面倒だから、その対策も考えておかなくちゃな」
「おい、なに連れていく方向に話が進んでるんだよ」
「ダメ?」
「ダメか?」
「……ああ、もう良い! 他の奴らの意見を聞いて決めろ。俺の言うことなんか聞くつもりないことはわかったから」
ダイヤは不貞腐れて一行の元へ戻っていった。
「とりあえず次の夢は、ここに魔法陣を残しておいて行くか。描くんじゃなくて、敷く魔法陣が欲しいところだな」
「それなら、私が作ろうか? 呪文を上手く使えば使い回しのきく魔法陣が作れるわよ」
「それじゃあ、今地面に描いてあるこれを使って使い回しのきく魔法陣を作ってくれ。それまで俺はラルドたちにあんたを連れていって良いかどうか聞いてくるから」
「わかったわ。うふふ、ようやく私も役に立てるのね。嬉しいわぁー」
(戦いが終わってからついてこられてもちょっとなぁとは思うが、まあいっか)
エメは一行の場所へと戻っていった。
「エメ君、レイフたちみたいに疲れたりしてないの?」
「まあ俺、何もしてないし……せいぜい荷物を運んだくらいだ」
「それでも大仕事じゃない? ウォリアの鎧なんか、私が持てないくらい重たいわよ」
「うーん、夢の世界だからか、重たくはなかった。さて、話を戻そう。めちゃくちゃな夢の世界をどうにかしたいんだったよな?」
「ええ。私に限らず、サウスの人間はみんな変な夢を見るの。エメ君なら何か対処法を知ってるんじゃないかなーって」
「それじゃあ、ジシャンだけの問題ではなく、サウス人全員の問題なのか。ホウマは普通に連れてこれたけどな」
「あの子は、生まれが特殊だもの……見た目は完全に人間だけど、中身は魔物よ」
「へー、そうだったんだ。とりあえずはなぜサウス人の夢の世界がめちゃくちゃなのかを知る必要がありそうだな。そこから考えよう」
エメはその場に座り、その辺にあった木の棒で地面に文字を書き始めた。ジシャンはかがみ、文字を見やすくする。
「えーっと、まず、サウス王国について考察するか。サウスは、はかいしんが一度暴れたときより前から存在する国だよな。そしてウストも元は王国で、両者は争っていたと」
「あの時代に魔王はいなさそうだし、共通の敵を持ってないとああなっちゃうのかもね。この時代でも、そう遠くないうちに戦争が起きるかも……」
「なぜ争っていたのか。ラルドなら知ってそうだ。おいラルド、起きろ」
「はいはい」
エメはラルドを揺すった。ラルドはめんどくさそうに返事をする。
「なんで昔のウストとサウスが戦争してたのかわかるか?」
「サウス人が夢装置っていうのを盗んだから。夢装置は、夢の中を自由に動き回れる装置だ。ダイヤが僕たちの夢を接続出来るのは、それがダイヤについてるからだ」
「ほう、つまり、サウス人が盗んだ夢装置に何かがあって、そのまま今のサウス人にも悪影響が出てると考えられるな。ありがとうラルド。核心に迫れそうだ」
「もう良いか?」
「ああ。ゆっくりしててくれ」
ラルドはまたすぐ仰向けになり、重たい身体を休めた。エメとジシャンは変わらず会話を続ける。
「夢装置のせいでサウス人の夢がおかしくなっているということは、それを断ち切れば良いんだ。ジシャンは、何か心当たりないか?」
「うーん……校長先生なら何か知ってるかしら。でも、この前話したときに何も言ってなかったから、知らないかなー」
「まあそりゃそうなるわな。そもそも夢装置が破壊されたのか今も残ってるか何もわからないし。とりあえずこの件は置いておいて、即席で出来る代替案が必要だな」
「そうね。本当はサウス人のみんなを助けてあげたいけど、それには時間がかかりすぎるでしょうしね。それで? 即席で出来る代替案ってなに?」
「俺の力で無理やり夢の世界を創り出す。これだ。正しく眠れば、きっと効果を発揮するだろう」
「どんか方法なの?」
「俺が描く魔法陣の上で寝てもらう。それだけだ。俺が呪文を発動すれば、あとはなんとかなるさ。ただ、一つだけ注意点。これは初めての試みだから、失敗するかもしれん。失敗したら、頭に多大な負荷がかかる。死にはしないが、ドンとくるような痛みがあるかもしれない。それでも良いか?」
「ええ。大丈夫よ。そのくらいなら」
「じゃあ今から試しにやってみるから、ちょっと待っててくれ」
エメとジシャンはその場を離れ、魔法陣が描ける場所へ移った。魔法陣を描き終えたエメは、ジシャンに魔法陣の上で寝転ぶように言う。
「準備オーケーだ。寝転がってくれ」
「わかったわ。催眠で眠らせる感じかしら?」
「ああ。それじゃあ、始めるぞ」
エメは催眠術をかけ始めた。効果はすぐにあらわれて、ジシャンは夢の世界へ入っていった。
ジシャンの夢の世界。ピンク色が広がり、足場のない世界。いつものめちゃくちゃな夢となんら変わりはなかった。
(あら残念。失敗しちゃったのかしら)
ジシャンがそう思っていると、いつものように泡の中に世界が映されていた。それをいつも通り掴んでみようと、ジシャンは腕を伸ばした。いつもなら触れた瞬間に弾ける泡。しかし、今回は掴むことが出来た。
「やった!」
しかし、そこからどうすれば良いのかわからず、そのうち泡はジシャンの手の中で消えた。何度も同じことを繰り返し、ジシャンはがっかりし始めていた。
「もう、全然ダメだわ。エメ君の力でもダメだなんて、呪いか何かなのかしら。昔の人を恨んでもしょうがないけど、腹が立つわ」
ジシャンは泡を掴むことを諦めて、目覚めた。思ったより早く起きたジシャンを見て、エメは失敗を憂いていた。
「ダメだったか。何がダメだった?」
「世界を映す泡を掴むところまでは良かったんだけど、掴んでからどうすれば良いのかわからなくて……」
「泡?」
「私の見る夢はね、世界が映った泡がところどころに浮かんでるの。それに触れようとすると今まで届かなかったけど、今回は届いたの」
「そうか……そうなると、安定した夢の世界の泡を掴む必要がありそうだな。あるいは、ダイヤの花畑が映る泡を掴んでみるとか」
「じゃあ、今度はダイヤ君に協力してもらおうかしら。ダイヤ君を連れてくるわね」
「あいつ、立てるかな……」
ジシャンはダイヤを呼びに行った。
しばらくして、昼頃、ジシャンがダイヤを連れてきた。
「エメ君、ごめんね。説得するのに時間かかっちゃって」
「おいおい、今はゆっくりさせてくれよ……俺は機械だけど、人間の記憶が戻ってるから精神的に疲れてるんだよ」
「それじゃあさっさと終わらせてやる。ほれ、早く早く」
ダイヤとジシャンは横になった。ダイヤは疲れからか何もせずに眠った。ジシャンはエメの催眠術で眠った。
再び夢の世界。ジシャンは花畑の泡を探して夢の中をさまよっていた。起きている間に訊いた景色を参考に探す。少しして、ジシャンは花畑の泡を見つけた。
(きっとあれね……急いで掴みにいかなくちゃ)
ジシャンは必死に泳いで、その泡を追いかけた。やがて追いつき、泡を掴んだ。そして、泡に呼びかける。
「ダイヤ君、ジシャンよ! 私をあなたの夢の世界に入れて!」
「! この声は……一体どこからしているんだ」
どうやらダイヤの夢の世界を見つけたようだが、肝心のダイヤはジシャンを捜して奔走する。急がなければ、泡がいつ弾けてしまうかわからない。ダイヤもジシャンも慌てる。声を頼りにジシャンを捜すダイヤ。
泡がどんどん膨張して弾けかける。これまでかとジシャンは諦めかけたが、ついにジシャンから見える場所にダイヤはたどり着いた。ダイヤが空を見上げると、大きくジシャンの顔があった。ダイヤはジャンプし、ジシャンの手を掴み、自分の夢の世界に引きずり込んだ。二人はそのまま花畑に落ち、ダイヤの上にジシャンが乗っかる。ジシャンはダイヤに抱きついた。
「ダイヤ君、ありがとう! これで私も、役に立てるわ!」
「わ、わかったわかった。恥ずかしいからどいてくれ」
「あら、王子様ってそんなお年頃だったの?」
「う、うるさい……とにかくこれで夢が接続出来るようになったことがわかったから、さっさと目覚めるぞ」
二人は目を覚ました。目覚めた二人に、エメは問いかける。
「成功したか?」
「ああ。成功した。でも、これって手間じゃないか? わざわざ魔法陣描いて、しかも良く捜さなくちゃいけないなんて。やっぱりジシャンを夢の世界に連れていく必要はなさそうに思うが」
「いや、絶対行くわよ。ダイヤ君、よろしくね」
「いちいち魔法陣を描くのも面倒だから、その対策も考えておかなくちゃな」
「おい、なに連れていく方向に話が進んでるんだよ」
「ダメ?」
「ダメか?」
「……ああ、もう良い! 他の奴らの意見を聞いて決めろ。俺の言うことなんか聞くつもりないことはわかったから」
ダイヤは不貞腐れて一行の元へ戻っていった。
「とりあえず次の夢は、ここに魔法陣を残しておいて行くか。描くんじゃなくて、敷く魔法陣が欲しいところだな」
「それなら、私が作ろうか? 呪文を上手く使えば使い回しのきく魔法陣が作れるわよ」
「それじゃあ、今地面に描いてあるこれを使って使い回しのきく魔法陣を作ってくれ。それまで俺はラルドたちにあんたを連れていって良いかどうか聞いてくるから」
「わかったわ。うふふ、ようやく私も役に立てるのね。嬉しいわぁー」
(戦いが終わってからついてこられてもちょっとなぁとは思うが、まあいっか)
エメは一行の場所へと戻っていった。
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