旅人ケンギ

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第七章

第二十七話 因縁

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 霧の平原まで来たケンギたちは、前に来た道を思い出しながら歩いていた。

「凄いわね。あれもこれも全部シグマさんの幻惑呪文の効果なんでしょ?」
「うん。ちょっとおちゃらけるときもあるけど、実力はきっと最強クラスだと思ってる。」

二人のシグマ賛美にヒイデはイライラした。

「ケッ、そんなに俺の仇を褒めやがって。強くて当然なんだよ、あいつは。」
「当然? どうしてだ?」
「……それが何故だか言えないんだ。漠然とめちゃくちゃ強いことだけは覚えてる。でも、俺は必ずあいつを倒してみせる。カテイ様もその方が喜ばれるはずだからな。」

 その後、三人はシグマの家にたどり着いた。

「さあ、着いたよ。ここがシグマさんの家だ。」
「この中にシグマがいるのだな? それじゃあ、さっさと扉を開けねばな。」
「私は初対面だから礼儀正しくしなくちゃね。」
「じゃあ、開けるよ……。」

扉がギシギシと音を出しながら開かれる。部屋の真ん中に正座で待つシグマがいた。

「ケンギ、聞いたぞ。今日はたくさん人が来るらしいな。」
「はい、俺と一緒に旅人をやってるロウコと、あと、こいつ。ヒイデって奴。」
「ロウコです。初めまして、シグマさん。」
「フン。こんな間抜けな顔をしてる奴がお前の師匠かよ。」
「おいヒイデ! 魔物だからって口悪くていい決まりなんてないぞ!」
「うーんと、ハーピーの子がロウコちゃんで、そこの魔物がヒイデ君か。それで、魔物である君が俺になんの用があるんだ?」
「お前を殺しにきた。カテイ様の仇だ。」
「あ、殺し合い? いいよ、少し待っててな。」

なにやらタンスを漁り始めたシグマ。

「ハハハ! 敵の前で背中を見せるとは、バカだな!」

背後から攻撃を狙い突撃したヒイデ。小刀がシグマの背中に突き刺さった。

「……それで、攻撃はおしまいか?」
「な、こんなに深く突き刺してるのに、出血すらしてない……。」

確かに小刀は突き刺さっているはず。しかし、シグマは全く痛がる素振りを見せない。

「不意打ちをされたのだから、反撃させてもらう。はぁ!」
「グァァ!」

シグマの斬撃が、ヒイデの体を真っ二つに引き裂いた。

「い、いってぇ……どうする、殺すつもりか?」

死ぬのが怖いのか、泣き声で尋ねるヒイデ。しかし、シグマは予想外な返事をした。

「殺しはしない。今の君はイマイチ本気を出せてないように見えるから、もっと本気でできるときに来なさい。」

ヒイデの上下にわかれた体をくっつけるシグマ。ヒイデは混乱していた。

「なんで俺を殺さないんだ! 俺はお前の弟子を殺しちまう可能性があるんだぞ!」
「こんなところまでのこのこ案内されてる時点でもう君に殺気はないようなものだよ。ここに来る途中で何か食べたでしょ?」
「……あいつが作った焼きリンゴを食べた。食欲には勝てずに。」
「うんうん。光由来の食いもんを食えばこうなるのは自然だ。」
「光由来の食い物だと?」
「本来魔物であるなら絶対食べない物をお前は食べた。そうするとお前は魔物ではいられなくなっちまうんだ。」
「じゃあ、俺は何者で、何をすべきなんだ? 魔物でも人でもないなんて……。」
「とりあえず大酒場で仲間探しだな。いくらか人の食いもん食って旅人になった奴らがいるはずだからな。」
「……わかった。とりあえず探してみる。今度こそは必ず倒してやるからな。」
「おう、次はこっちも本気でいくからなー。」

ヒイデは一足先に大酒場へと戻っていった。
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