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一日目リノ、夫役
2、顔合わせ
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トンネルの中は一本道であったが、ただまっすぐ進むのではなくくねくねと曲がりくねっていたため、まるで迷路のようだった。
不思議なことに、建物の中を歩いているような感じはしなかった。
リノが見知らぬ森の中に迷い込んでしまったかのような不安を感じはじめた頃、ようやくひとつの扉の前に出た。
手にした杖から灯りがまっすぐのびて、扉の鍵穴に入り込むとすぐにがちゃりと鍵の開く音がする。
「はー、すごいな。この小さな杖に鍵開けの魔法まで入ってるのか」
リノが中に入ると、部屋の中にはすでに誰かがいて、机の上に置かれた箱を開いているところだった。
「やあ、今日はよろしく」
普段のリノなら、きっとおどおどしながら「……こ、こんばんは」というのが精一杯だっただろうが、いまのリノはリノであってリノではない。
できるだけ明るくて気のいい人物であると思ってもらえるよう、気安い感じを装って、その人物に声をかけた。
「……こ、こんばんは」
びくりとしながら箱のふたを取り落とした誰かは、後ろにいるリノを振り返り、おどおどとしたようすで挨拶を返してくる。
まるで、普段のリノならと考えていた通りの反応が返ってきて、リノとしてはびっくりするより他にない。
自分と同じような生徒が、同じ学年にいるとは知らなかった。
「こんばんは」
平静を装いながらリノが挨拶を返せば、ほっとしたのか控えめな笑顔が返ってくる。
リノはそれを、可愛らしいなと思い、実技の相手が彼でよかったとも思った。
顔がはっきりわからずとも、彼がとても可愛らしい人物であることだけは、わかったからだ。
導きの杖は、持った人物と一番相性のよい人物のところへ案内してくれるという話だったが、なるほどこういうことなのか、とリノは感心していた。
「よろしく、お願いします」
ぺこりと頭を下げ、控えめに微笑む彼を見ながら、リノは駆け出すように早くなっていく鼓動を感じていた。
彼となら、うまくいくまでがんばれると素直に思える。
むしろ、彼となら合格できずに、居残り補習を受けることになったとしても悪くはないと思えてしまった。
リノは、自分がそのようなことを考えていることなどおくびにも出さず、彼が開いた箱の横に置かれた自分宛の箱を開く。
中には小さな魔法石がついた輪と棒状の魔法具、それから小瓶に入ったピンク色の液体が入っていた。
その下には、薄くて少し透けた服のようなものがたたんでしまわれている。
隣の彼を見れば、箱の中には同じようなものが入っているようだった。
「中身は同じなんだ」
「今日と明日で、役割を交代する予定ですからね」
「ああ、それもそうだね。今日は、どっちがどっちなのかな」
「今日は、ぼ、ぼくが女性の役のようです」
「そう、わかった。……その、優しくするから、ね」
リノは頬を赤らめてうつむく彼のあごを掬い上げ、少し潤んだように濡れた美しい琥珀色の瞳を見つめた。
吸い込まれてしまいそうな美しい瞳だ。
リノのありふれた青色の瞳とは、輝きからして違う。
この瞳は、きっと彼の本当の姿なのだろう。
その美しさを心に刻みながら、リノはゆっくりと微笑んだ。
「……お願い、します」
リノの瞳を見つめ返しながら、まぶたを閉じた彼の唇にリノは自分の唇をそっと重ね合わせる。
今夜、この部屋で行われるのは、新婚初夜に妻となる女性との性行為を成功させるため実践を交えて学ぶ閨の授業だ。
リノは、彼とここで初めての性行為を行う。
不思議なことに、建物の中を歩いているような感じはしなかった。
リノが見知らぬ森の中に迷い込んでしまったかのような不安を感じはじめた頃、ようやくひとつの扉の前に出た。
手にした杖から灯りがまっすぐのびて、扉の鍵穴に入り込むとすぐにがちゃりと鍵の開く音がする。
「はー、すごいな。この小さな杖に鍵開けの魔法まで入ってるのか」
リノが中に入ると、部屋の中にはすでに誰かがいて、机の上に置かれた箱を開いているところだった。
「やあ、今日はよろしく」
普段のリノなら、きっとおどおどしながら「……こ、こんばんは」というのが精一杯だっただろうが、いまのリノはリノであってリノではない。
できるだけ明るくて気のいい人物であると思ってもらえるよう、気安い感じを装って、その人物に声をかけた。
「……こ、こんばんは」
びくりとしながら箱のふたを取り落とした誰かは、後ろにいるリノを振り返り、おどおどとしたようすで挨拶を返してくる。
まるで、普段のリノならと考えていた通りの反応が返ってきて、リノとしてはびっくりするより他にない。
自分と同じような生徒が、同じ学年にいるとは知らなかった。
「こんばんは」
平静を装いながらリノが挨拶を返せば、ほっとしたのか控えめな笑顔が返ってくる。
リノはそれを、可愛らしいなと思い、実技の相手が彼でよかったとも思った。
顔がはっきりわからずとも、彼がとても可愛らしい人物であることだけは、わかったからだ。
導きの杖は、持った人物と一番相性のよい人物のところへ案内してくれるという話だったが、なるほどこういうことなのか、とリノは感心していた。
「よろしく、お願いします」
ぺこりと頭を下げ、控えめに微笑む彼を見ながら、リノは駆け出すように早くなっていく鼓動を感じていた。
彼となら、うまくいくまでがんばれると素直に思える。
むしろ、彼となら合格できずに、居残り補習を受けることになったとしても悪くはないと思えてしまった。
リノは、自分がそのようなことを考えていることなどおくびにも出さず、彼が開いた箱の横に置かれた自分宛の箱を開く。
中には小さな魔法石がついた輪と棒状の魔法具、それから小瓶に入ったピンク色の液体が入っていた。
その下には、薄くて少し透けた服のようなものがたたんでしまわれている。
隣の彼を見れば、箱の中には同じようなものが入っているようだった。
「中身は同じなんだ」
「今日と明日で、役割を交代する予定ですからね」
「ああ、それもそうだね。今日は、どっちがどっちなのかな」
「今日は、ぼ、ぼくが女性の役のようです」
「そう、わかった。……その、優しくするから、ね」
リノは頬を赤らめてうつむく彼のあごを掬い上げ、少し潤んだように濡れた美しい琥珀色の瞳を見つめた。
吸い込まれてしまいそうな美しい瞳だ。
リノのありふれた青色の瞳とは、輝きからして違う。
この瞳は、きっと彼の本当の姿なのだろう。
その美しさを心に刻みながら、リノはゆっくりと微笑んだ。
「……お願い、します」
リノの瞳を見つめ返しながら、まぶたを閉じた彼の唇にリノは自分の唇をそっと重ね合わせる。
今夜、この部屋で行われるのは、新婚初夜に妻となる女性との性行為を成功させるため実践を交えて学ぶ閨の授業だ。
リノは、彼とここで初めての性行為を行う。
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