異世界バカッター

yu.hato56

文字の大きさ
18 / 21

第十八話「シシカの研究成果」

しおりを挟む
 自称研究者の女の後に続いて、目立つ看板のあるレストランに入ろうとする。きらびやかな看板は、かつてのこのレストランの賑わいを表しているようだったが、今は見る影もない。
 レストランに近づいても料理の香りが鼻腔をくすぐることもなく、談笑の声も聞こえない。まさしく、この街の現状を表しているようなレストランに同情を示していると女は、俺に構うことなくレストランの中へ突き進んで行く。 
 店内はやはりスペースに対しての密度が少なく寂しい印象を受ける。それでも店員は皆笑顔で俺たち三人を大きな声で迎え入れてくれた。
 店員は、俺たちにメニューを渡す。研究者の女は、メニューを見るまでもないのかさっさと注文を済ましてしまった。

 「ロロットは何を食べるんだ?」

 俺はロロットに尋ねてみるが、肝心のメニューは殆どが品切れ表示がされており、パンとスープやオートミールなど、保存が聞きそうメニューしか残っていない。仕方がないので、研究者の女と同じく、オムレツセットを頼むことにした。
 テーブルに着いて各々適当に食べたいものを注文し一息つくと、俺は自己紹介から会話の糸口を作ろうと口を開く。

 「俺はユウタだ、冒険者をやっている。こっちはロロット、旅の仲間だ」
 「ロロットです。よろしくお願いします」

 俺たち二人が言い終わるのを確認し、一呼吸置いて自称研究者の女も自己紹介をし始めた。

 「あたしは、世界の不思議を科学的に解き明かすことに人生を掛けている研究者、名前はシシカ。よろしく!」

 そう挨拶してきた女性は、目を輝かせてエレミアの現状を語りだした。シシカの話ではエレミアの活気のなさは海の荒れが収まらないことであり、その原因でシシカが科学的に分析していることを教えてくれた。

 「早速本題だけど、海が荒れ始めたのは約半年前。何の前触れも無く波が常時高くなったらしくてね。その頃はまだ潮が引いている時間帯を狙って航海できていた記録がある。しかし、それからひと月もするともう航海できるような状態ではなくなってしまった。今と状態はあまり変わっていないようだね。あたしが来てから二ヵ月になるが、悲しいことにその間では特に変化は観測できてはいない」

 船着き場で聞いた情報と間違いもないし、好奇心のまま動いていそうで彼女の言うことは何となく信頼できそうだったため、この際疑問に思うことを色々聞いてみることにした。

 「町の様子も全然変わらないのか?」
 「いいや、町はもう半壊状態だね。どうにか海から波の干渉を受けないよう、港を拡張して魚を養殖する計画もあるらしいが上手く場所を作れていないみたいだし。余程の地元愛のあふれてる奴らか、この街で生きていく他ない奴ら以外は他の町に移り住んでるはずさ」

 町としてできることはやっている感があるが、自然の力には逆らえないのだろう。
 俺がどうにかできる問題じゃなさそうだなと思い始めていた。

 「シシカが考えている対策とかはあるのか?」
 「んー、もう一通り検討したがどれもダメ。今は再びデータ集めさ」

 そこまで話したところで料理が運ばれ、シシカが食べることを優先してしまったため俺たちもまずは食事を楽しむこととした。
 おそらく材料も手に入らない中、今手に入る材料で最高の技術を込めた料理は、とても美味しく、本当にシェフには尊敬の念しか抱かない。いつか、この街が本来の姿を取り戻した時にもう一度食べに来よう。そう心に誓いながら食事を進めた。


 「ふいーっ、ご馳走様でした。ユウタ君、ほんとに奢ってもらっちゃって悪いねー」

 一人で三人前くらいは食べていたシシカは集る気満々、全部で五人分位の金額を払うこととなった。しかも、結局最初の話以上の有益な情報は得られなかった。
 つまりシェイヤ国に行くという目的に関しては無駄足に終わってしまったのだ。
 だが、より詳しく分かった事もある。一つがこの海の荒れ具合は二か月間でマシになる日はなかったことだ。今日のような風の強くない晴れの日も、窓に響く雨音で外に出るのも億劫になる雨の日も海の様子は変わらなかったらしい。これで俺たちは、この町で海が落ち着くのを待つ選択肢を捨てることができた。
 もう一つが海の荒れとは関係あるのかわからないが、シェイヤ国では革命を画策する勢力が居たらしいことだった。これはシェイヤ国から船に乗ってこの町に来た人物から聞いたと言う。何人かこの町に来ているようなので、出来ることなら話を聞いておきたいと考えてしまう。

 「いいや、大事な研究の情報を教えて貰えたんだ安いものだ」

 とりあえずそう答えておくが、明らかに支払った金額と得られた情報は釣り合ってないぞ。でも、俺の社交辞令を本気にしたシシカはニコニコしながらこんな事を言う。

 「そう? じゃあまた何か分かったら教えるからご飯奢ってよ!」

 こんな大食い女に何度も飯を食わすのは財布に悪いので、しばらくは会いたくないがどうも優秀そうなんだよな。普段はへらへらしているのに研究の話だと妙にキリッとするところとか……

 「ああ、またどこかで会ったら聞かせてくれ」
 「冒険者のユウタ君にロロットちゃんね、ギルドに行けば分かるだろうし楽しみにしてていいぞ、バイバイ」

 そう言ってシシカは俺たちと分かれ、満腹になったお腹をポンポン叩きながら、どこかへと歩いて行った。なんとなく、この先あと五回くらいはタダ飯をたかられそうそうだなと覚悟をした。
 俺は話を聞いた時から気になっていたシェイヤ国出身の人物について調べようと思い、ロロットのほうを見る。

 「なあ、ロロット。シェイヤ国の情報をもっと調べておきたいんだが」
 「もしかしてシェイヤ国出身の人を探すんですか?」

 ロロットは被せ気味で俺の考えていることを一発で当てて見せた。

 「顔に出ていたので流石に分かりますよ。私も手伝いますね」
 「ああ、助かる。じゃあ店の前から左右に分けて聞き込みをしよう。見つかったらまた後で話に行くとして、一時間後にまたここで落ち合うってのはどうだ?」

 ロロットが俺の提案に頷く。俺たちはシェイヤ国人を探すために散開した。

 
 大体町を一通り回った後にレストラン前まで戻ってくると、既にロロットは待ち合わせ場所で待機していた。

 「ユウタさんおかえりなさい。どうでした?」
 「いや、俺のほうでは見つけられなかった。ロロットは見つけられたのか?」
 「んー見つけたというか、いる場所がわかったって感じですね。私の魔法覚えていますか?」

 あれ? ロロットの魔法ってなんだっけ?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...