私の女の子

神崎翼

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私の女の子

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 ベランダから、まるで踊るように落ちていく女の子の幻覚をよく目にする。
 何の変哲もないマンション九階の一室。ふとベランダに続く窓を見ると、その向こう、手すり壁の上で、ひらひらとスカートをひらめかせて、危なげなく楽し気に女の子が踊っている。くるくるくるくる。洋館に住むお嬢様のような、シックで上品で、丈の長いスカート。女の子の顔は見えない。スカートと同じように舞う女の子の長い黒髪が、流されるまま不思議と彼女の顔を見通せなくしている。それを、異常事態とも思わずに私はぼんやりと見守っている。女の子はベランダの手すり壁の上を左右にくるくるくるくる。そうして真ん中に辿り着いたとき、当たり前のように足を踏み外して、仰向きにベランダの向こう側に落ちて行った。暫く経っても、何かがぶつかる音はしない。女の子が落ちたあと、残像がまだ踊っているかのように私はベランダの手すり壁の上を見つめ続けて、遠くで鳥の鳴く声が聞こえてようやく腰を上げた。窓を開けて、裸足でベランダに出る。手すり壁の上を一瞬躊躇した後に触れて、やや身を乗り出すようにしてベランダの向こう側の真下を見る。案の定、そこには何もない。いつも通りツツジの低木がマンションの周りを覆っている。その向こうの石畳の通路には人一人いなかった。
 ぼんやりとそれを眺めてから、やがて私は部屋の中に戻った。すべて、私の見た幻覚の話だ。
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