イクジナシ

ももちよろづ

文字の大きさ
上 下
1 / 25

落としもの

しおりを挟む
「おあ~! おあ~!」


「ご免ね……ご免ね……!」


「えうっ、えうっ……」


「どうか、幸せになって……!」


「おぁあ~~~~~!!」



 ※ ※ ※ ※



「行って来まーす!」

「はーい、行ってらっしゃい、拓児たくじさん」


春の日の朝。

雲一つ無い青空。

俺は、いつもの様に、同居人の声を背に受けて、

男だらけのシェアハウスの玄関から、勤め先の会社に、出勤しようt「おあ~!」


「へっ?」


耳をつんざく様な、泣き声。

出所でどころは、どうやら、足元だ。

恐る恐る、見下ろすと。


「!? うわぁあぁあぁあああ!?」


勢い良く開けた、玄関のドアの、前に居たのは……


「あ……、


 赤……ちゃん……!?」



くるみにくるまれ、 とうで編んだかごに入れられた――




赤ん坊、だった。

しおりを挟む

処理中です...