イクジナシ

ももちよろづ

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対面

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「この度は、本当に、申し訳ございませんでした!」


シェアハウス、トキワ荘。

俺の目の前では、会社の同僚の多賀 かなえと、

彼女の妹だったらしい、俺の大学時代の元カノが、深々と頭を下げている。

「……いや、ホント、ウチの愚妹ぐまいが、皆さんに、ご迷惑を……」

のぞみ 君!」

「拓児 先輩……!」

大学のサークルの後輩で、俺の元彼女だった、多賀 望 君。

会うのは、大学生以来だけど、何も変わっていない。

いや、若干、生活感が出ちゃってるかな?

「……あ! いつぞや、オレが歌舞伎町でナンパしたコ!」

「あっ、貴方……」

「何だ、星夜、顔見知りか?」

「あぁ、前に、歌舞伎町でチラッと、な。

 拓児の、元カノだったとは……!」

「望さん、貴女、前に一度、ウチを覗きに来てましたよね?」

「あ、あの時の……」

「瞳ちゃんもかよ」

俺とだけ、ニアミスで、れ違ってたのか。

「……ずっと、きたかったんだ。

 どうして、あの時、俺の前から、突然、姿を消したんだ?」

「だって……子供が出来たなんて言ったら、流石さすがに先輩でも、

 あたし、捨てられる、って思って……」

「いや、後でこじらせて家迄調べて、えい児置き去りにする方がヤベーって」

星夜が、かさず突っ込みを入れる。

「ウチのシェアハウス前に、赤ちゃん……夢ちゃんを、捨てたのは?」

「……先輩に、夢を、育てて欲しかったから。

 先輩の性格なら、拾ってくれると思って」

「学生時代から変わってねーのか、拓児」

「……ほら、夢。 貴方の、パパよ」

「だぁ、だぁ」

うーん。

俺の、子供、かぁ……。

「まだ、実感、湧かないや」

「もう、責任取って、結婚しろよ」

「えっ?」

「それしか無ぇだろうよ。 男なら、腹括れや」
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