【完結】くま好き令嬢は理想のくま騎士を見つけたので食べられたい

楠結衣

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デビュタント 7

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 お父様に知りたかった事を優美な音楽に合わせて踊りながら尋ねる。

「お父様、どうしてガイ様がお戻りになる事を知っていたのですか?」

「戻るかどうかまでは分からなかったがね。可愛い娘が泣きそうな顔をしていたんだ。戻って来なかったら婚約を解消するぞと連絡したんだよ。それくらい言っても良いだろう?」

 ふんと横を向くお父様は悔しそうな拗ねた複雑な表情をしている。

「お父様、ありがとうございます」
「鼠や虫より熊の方がずっとマシだからな……」

 お父様の愛情を感じて胸が温かくなっていると、横を向いたお父様がぼそっと呟いた。
 えっ、ネズミが無視して食う? 早口過ぎてよく分からなかったわ。
 横を向いていたお父様が温かな眼差しを私に向けていた。

「アリー、幸せになりなさい」

 お父様の温かな言葉が心に沁み渡る。目元にじわりと熱いものが込み上げ、小さく頷くと、お父様がふふっと柔らかく微笑みをうかべる。

「学生結婚は許さないし、ガイが嫌になったらいつでも婚約解消や他国の通い婚を取り入れるのもいいかもね。離縁して我が家ウィンザー侯爵家にいつでも戻って来ていいからね」

 大真面目な顔をして言うから、お父様ったら先程の感動を返して欲しくなるわ。


「やっとアリーと踊る番が回って来た!」

 花が咲いたように笑うアレクお兄様への反応に困りながらステップを踏む。
 ガイ様と見た先程のアレクお兄様の周囲を白いドレスの女性達が囲み、声を掛けられる事を期待する熱い視線を注いでいた光景を思い出し、アレクお兄様と踊りながら話し掛ける。

「あの、アレクお兄様、私以外の方と踊ってもいいのですよ?」

「嫌だ! アリー以外となんて踊らないし、踊りたくない! 後々面倒だろうし……」

 最後の嫌そうに呟く言葉に思わず納得した。
 アレクお兄様の好みはもっと年上の女性で、年の離れた妹と同い歳の幼い子には興味が湧かないのだろう。
 あ、あれ? ガイ様とアレクお兄様は同じ歳だから自分の言葉が自分にぐさりと刺さる。ふるふると脳内で頭を横に振り、ガイ様の言葉を信じようと思い直す。そんな私を見て、アレクお兄様が「小さな妹のままならずっと傍に居れたのになあ」と淋しそうに呟いたのは聞こえなかった。
 アレクお兄様が「それにしても」と話題を変えた。

「移転魔法の使用許可は取り付けたけど、ワイバーンや地竜アースドラゴンが出現してたのにな。あっという間に壊滅されるなんて、ガイは恐ろしい程に強いな」

「えっ?」

「僕が広域の移転魔法陣を新しく作って、陛下に使用許可を取り付けたんだ。これで間に合わなかったら言い訳出来ないだろうし、アリーの婚約者に相応しくないから婚約解消しようと思ってたのに……! アリー、僕の活躍をガイから聞かなかったの?」

 アレクお兄様が不満そうに口を尖らせるけど、ほんの少し耳が赤くて、私がガイ様に会える様に手を尽くしてくれた事が分かったの。

「アレクお兄様、ありがとう!」
「アリーはいつまでも僕の可愛い妹だからね。ガイが嫌になったら直ぐに教えてね?」

 嬉しくて心が温かくなってお兄様に感謝を伝えると、真面目な顔でへんなことを言ったの。もう、アレクお兄様ったら……。

 お父様とアレクお兄様は、飲み物を片手に会話が盛り上がっている。舞踏会の熱気や何曲も踊り疲れた体に、冷たい飲み物が喉を滑り落ちるのが心地よい。
 ふぅ……と深呼吸をして、周りを見渡すと中央のダンスフロアでは何組もの男女が音楽に合わせて踊り、美味しそうな食事が並ぶテーブルや壁際では会話に花が咲いている様子を眺めたの。

 私の近くで騒めきと足音が聞こえ、振り向くと腹黒さを完全に隠した爽やかな微笑みを浮かべたフェリックス殿下が立っていた。

「仔猫ちゃんは焦らすのが好きなのかい? さあアリー、わたしと踊ろう」

我が家ウィンザー侯爵家には、仔猫は居ないものですから殿下の仔猫様宛てに送り直しました。公爵家に到着したころかと?」

「なっ!」

 殿下の仔猫がどうかしたのかしらと思うけれどら私とフェリックス殿下の間にお父様とアレクお兄様が塞ぐように並び立ち、お父様が殿下とやり取りを始めた。これでは殿下の顔は全く見えない。

「覗いたら駄目だよ、アリーが減るからね」

 これは不敬に当たらないのかしらと不安に思い、アレクお兄様の肩ごしに殿下を覗こうとしているとアレクお兄様が首だけで振り向いて言ったの。
 えっ、なにか呪いの一種かしら? よく分からないけれど、とりあえず耳を澄ませる。

「ウィンザー侯爵、わたしは真実の愛を見つけてしまったのだ。そこを退いて欲しい……アリーと二人きりで話がしたいのだ」

「ほお、真実の愛ですか?」

 お父様がフェリックス殿下の言葉に愉快そうな声で応えているが、私は血の気が引くのを感じた。

 まさか殿下がお父様やアレクお兄様、それに視線を左右に動かすと聞き耳を立てている白いドレスのご令嬢が周りに沢山居たのだ。
 こんな公衆の面前で、私とガイ様の魔写真真実の愛の話をしたいなんて、契約違反だわ! もう一枚追加で魔写真を頂きたいくらいねと血の気が引いた頭で考えていると、ぐいっと力強く腰を引き寄せられた。大好きな甘い匂いに包まれる。
 
「アリー、遅くなってすまない。ああ、顔色が悪いな。少し休んだ方がいい。行こうか?」

「ガイ様! お帰りなさい! えっ、でも――」

「アレク、アリーが疲れたみたいだ。行っていいか?」

「ガイ、遅いぞ。アリーが減るから早く連れて行って」

 ガイ様とアレクお兄様で話を終えると、私はガイ様に連れられ、この場を離れる。
 フェリックス殿下が余計なことを話さないか心配でちらりと振りかえると、私の腰に回した逞しい腕に力が入り、ぐっとガイ様と距離が近くなる。

「侯爵とアレクに任せておけば大丈夫」

 驚いてガイ様を見上げると穏やかに微笑んでいた。殿下も私が居ない時に魔写真の話はしない契約だし、きっと大丈夫よね?

 ガイ様と立ち昇り始めた夏の星座を潜り抜けると、美しい庭に辿り着いたの。
 ガイ様と噴水を背にして並んで座ると、舞踏会の熱気が嘘みたいな静かな夜だった。白い花が月の光に映え、甘くどこかミステリアスな香りが暖かな風に乗って漂って来る。

「あっ、流れ星!」
「アリー、ちゃんとお願い事はしたか?」
「……もう全部叶ったの」

 ガイ様がふふっと柔らかく笑い、髪を優しく撫でながら聞かれたの。小さな声でつぶやいたのに二人きりの静かな庭ではガイ様には聞こえていたみたい。

「どんな願い事が叶ったのか聞きたい」

 恥ずかしいのにガイ様が腰に逞しい腕を回し、引き寄せるからガイ様の厚い胸板に寄り掛かる格好になる。目線をガイ様に送ると、穏やかに微笑むガイ様と目が合うの。
 夜の闇が顔の熱を隠してくれるのに励まされ、言葉をつむぐ。

「ガイ様が無事に帰ってくることと、ガイ様の隣に居てもいいこと、です」

 やっぱり恥ずかしくて、目元が潤み耳まで痛いくらいに熱い顔を見られたくなくて、ガイ様の胸板にぐいぐい顔を押し付けるようにしてしまう。

「これはやばいな」

 ガイ様が呟いたのは私には聞こえなかった。
 ガイ様が熱い大きな手を私の頬に滑らし、耳元で「アリー」と甘く掠れた声を落とした。びくっと体が動くと、頬に添えていた手がガイ様を見つめるように上を向かせる。
 恥ずかしくて、視線を逸らしたいのに、吸い寄せられるようにガイ様の甘い瞳に捕らわれてしまう……。

「アリー、好きだ」

 夏の夜空一面に煌めく星に見守られるように、私はガイ様とはじめてのキスを甘く重ねたの——
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