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学園の調薬室で乾燥させた薬草を風魔法で刻んでいたら、突然扉が蹴破られた。驚いて振り向く私に、
「アイリーン・メディケルト公爵令嬢! お前との婚約を破棄する」
婚約者であるエリック殿下が婚約破棄を告げてきた。
「それは本当でしょうか……?」
王家に懇願されて結んだ婚約なので、破棄してもらえるとしたら願ってもないことだけど。
「ふんっ! 今更しおらしく振る舞っても無駄だ。お前がマチルダに変な薬を使って、嫌がらせしていることは分かっている。マチルダに対しての嫌がらせ行為を認めて、直ちに謝罪をしろ!」
「エリックさまぁ~マチルダとっても怖かったんですぅ」
甘ったるい声がする方に視線を向ければ、エリック殿下の腕にしなだれかかるマチルダ様がいた。
マチルダ様は、最近男爵家に引き取られ、学園に転入してきた男爵令嬢。鮮やかなピンク色の髪と瞳はとても可愛らしいけど、婚約者のいる高位貴族の男性に次々と声を掛けているせいで他の令嬢からは反感を買っている。
眼鏡を直してもう一度マチルダ様を見ても、学年の違うマチルダ様に会ったことはない。
「エリック殿下、婚約破棄は受け入れます。ですが、会ったこともない方に嫌がらせはしませんから、謝罪できません」
「なんだとっ! 素直に非を認めれば、お前との婚約破棄も考え直して側室にしてやったのに。やはり、その歪んだ性格は悪役令嬢と呼ぶのに相応しいな!」
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「わたしとの婚約が破棄されると、お前も公爵家も困るだろうからな! 優しい俺は最後のチャンスを与えてやる。マチルダに謝れば許してやるぞ!」
「そうですよぉ~謝ってくれれば、虐めてきたことも怖い薬を飲ませようとしたことも許してあげます」
政略結婚の意図がわからないエリック殿下を見ていると、サルーテ国の行く末が心配になる。私たちの間に恋愛感情はないのだから、結婚してからマチルダ様を妾にすればよかったのに。
でも、もう遅い。賽は投げられたのだから──
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