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本編
婚約破棄?
しおりを挟む「エリーゼ嬢、婚約はなかったことにして欲しい」
真実の愛を謳歌する小説のような学園の卒業パーティーでも舞踏会でもなんでもない。
私のヒビスクス伯爵家の馬車の中。
まもなく我が家に到着するハイビスカスの花が咲きはじめたお気に入りの道にさしかかったところで別れを言い渡された。
「アラン様、理由をお聞かせいただいても?」
モブール男爵家の次男であるアラン様の瞳が驚いたようにゆれ、初夏らしい暑さを感じるのにアラン様の身体は震えているようにも見えた。
別れの予感がなかったわけじゃない。
アラン様の態度がよそよそしくなったことは気づいていた。
学園に通う馬車では、となりに座っていたのに距離を置くように向かい合うように座るようになっていたし、一緒に食べていた昼食の時間も避けられるようになっていた。
ただ、どれほど考えても、どうしてアラン様に嫌われてしまったのか理由が思いつかなくて首をわずかに傾ければ空色の髪がさらりと流れる。
「それは――真実の愛だからだ」
私は空色の瞳をとじて小さなため息をこぼした。
「わかりました」
私がそれ以上の質問をしないとわかると、アラン様はまるで憑き物が取れたようにすっきりした顔に変わり震えはすっかりおさまっていた。
馬車がヒビスクス伯爵家に到着して、アラン様とお別れを告げる。
これから学園で会うアラン様はもう恋人ではないのね、とひっそりため息をつきながらヒビスクス伯爵家に植えている鮮やかな赤色のハイビスカスの花に視線をうつした。
この美しいハイビスカスの花も明日には恋が終わるみたいに枯れてしまうのだろうかーー?
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