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王弟殿下の選択肢がいつもおかしい
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「魔王封印お疲れさま! 乾杯!!」
ほどなくして瘴気性咽頭炎も治り、魔王城にたどり着いた勇者一行こと私たち。聖女として魔王城で眠り続ける魔王に手をかざし、教わった通りに「魔王封印」と詠唱。キラキラする光が私の手から溢れて魔王の封印はものの数分もしないうちに終わり、拍子抜けした。しばらく魔王は復活しないと聞いて安堵している。
魔王封印が夜になってしまったので、明日の早朝に転移魔法で王城に帰ることに決まった。戻ったら凱旋パレードがあり、このメンバーでゆっくりできる最後の夜に祝杯をあげる。
「ハルトしゃん……このおしゃけ、おいひい、です」
「そっかあ……サラはお酒弱かったんだね」
「そんにゃこと、ないです……っ! シャラ、よってましぇん……」
「うんうん、酔っ払いは必ずそう言うんだよ──ほら、おいで。ここなら、いつ寝ても大丈夫だよ」
ひょいと持ち上げられてハルトさんの膝の上に座らせられた。細いのに力持ちなところにもときめきが降りつもるけど。
「むむむ~よってましぇんってば~! リックぅ、エミリーしゃん、なんとか言ってくだしゃい……っ」
まだ一杯目のグラスを飲み終わっていないから、そんなに酔っ払っているわけがないのに。ハルトさんなんて、スイスイお酒を飲んでて、ずるい。横抱きは嫌じゃないけど、むしろ最後のご褒美だけど、リックとエミリーちゃんに援護射撃を求めた。
「いや、酔ってるから!!」
「いや、酔っぱらいだ!!」
息ぴったりで二人に見捨てられて、口がとんがるのがわかる。ハルトさんの鍛えた胸に思いっきり頭をぐりぐりした。慰めるようにハルトさんが頭をよしよしと、撫でてくれる。
「みんな、の、いじわるぅぅ~やさしい白へびしゃんに会いたい~~~!」
白ヘビさんと声に出したら無性に会いたくなってきた。そろそろいつもの寝る時間だからやって来るかもしれない。瘴気咽頭炎の夜以降、寝る時はいつも一緒の寝袋で寝ていた。
「ハルトしゃん……今日こそ白へびしゃんに会えるといいれすね?」
いつもハルトさんと白ヘビさんはニアミスで会えていないので、今日が会えるラストチャンス!
「サラは、王都に戻ってからも白蛇に会いたいのかな?」
「あいたいでしゅ……けど……こことは環境もちがうし……むずかしいのはわかってましゅ……うう、おわかれなんて、イヤなのに~~!」
高揚していた気持ちがしおしおと縮んでいく。あやすようにハルトさんに髪を撫でられて、こてんと頭を預けた。白ヘビさんに会えるのも、こうやってハルトさんに甘えられるのも今日が最後。
ただただ寂しくて、ぎゅっと抱きつく。今だけ、今日だけ──。
「サラ、これからもずっと白蛇と一緒にいられる方法がひとつだけあるよ」
「ふえ……?」
こてり、と首を傾げる。ハルトさんの魔法でどうにかできるのかな?
「サラが白蛇と結婚すればいいんだよ」
告げられたあまりに突拍子もない方法に、くすくす笑ってしまう。
「ハルトしゃんも、酔ってます……ね?」
「ふふっ、ちっとも酔ってないよ。サラは鈍感だよね」
「むう、そんなことありましぇん……!」
「そうかな? ねえ、僕と白蛇の色の特徴は似てない? どうして白蛇と僕は会わないのかな? 僕が蛇の言葉が話せるって不思議に思わなかった? それに、蛇はうわばみだって聞いたことない?」
くすくす笑いながらお酒の入っているコップを飲み干して、じっと白ヘビさんと同じ金色の瞳で見つめてくる。
「んんん~? やっぱりハルトしゃん、酔ってますよ……? だって、その言い方だとハルトさんが蛇みたいですよね……?」
ぺちぺちハルトさんの腕をたたいて答えれば、ハルトさんが嬉しそうに笑う。
「それが正解だよ、サラ」
「へ?!」
「僕はね、ヘビ獣人なんだよ──見てて?」
優しく膝の上から下ろされる。すぐに、ハルトさんの身体が不思議なくらい縮んでいき、白ヘビさんになった。
「~~~っ?!?!!」
チロチロな舌も、くりくりの瞳も間違いなく毎日会っている白ヘビさん。あまりの驚きに目を見開いていると、目の前の白ヘビがハルトさんに戻っていく。
「うん、驚いてるサラも可愛いね」
流れるようにハルトさんの膝の上に戻されて、頭を優しく撫でられる。思考が停止している間も、やわらかな手つきで髪を何度も撫でられて、梳いていく。
「えっと、白ヘビさんがハルトさんで、ハルトさんが白ヘビさん……ってこと?」
「そうだよ。驚いた?」
ハルトさんの問い掛けにこくこく頷いた。
「ふふっ、素直でかわいいね。それでサラ、ずっと白蛇と一緒にいられる方法はどうするつもり?」
「……っ!」
先ほどの「サラが白蛇と結婚すればいいんだよ」の言葉を思い出して、ぶわりと熱が頬に集まる。嬉しいのに恥ずかしくて、両手で顔を隠す。
「サラ……?」
「っ、ご、ごめんなさい……そ、の……、結婚なんて言われると思っていなくて……」
心臓の音がうるさいくらい鳴っていて、なんて答えていいのかわからなくて上手く言葉が出てこない。
「……っ!」
ハルトさんの大きな手がそっと私の手を引き剥がす。思わずハルトさんを見れば、まっすぐに熱のこもった瞳で見つめられていた。
「僕はね、頑張り屋のサラがずっと愛おしくてたまらない。素直なところも、照れるところも、ちょっと鈍感なところもかわいいと思っているよ──自惚れじゃなければ、サラも同じ気持ちだと思ってたけど、違うかな?」
ハルトさんの声が真剣で、私の手を握る力が、ぎゅっと強くなった。
「サラ──魔王討伐の褒章として妻に望まれるのと、不敬罪で娶られるのと、星空の下でプロポーズされるのと、どれがいいかな?」
もう、またハルトさんの選択肢がおかしい。絶対におかしいのに──!
「えっ、なんで、不敬罪……?」
「王弟の僕を毎夜寝所に誘い込み、同衾して身体を撫でまわして、キスも散々してたよね。責任を取らないなら不敬罪になるんじゃないかな?」
「い、言い方……!」
エミリーちゃんに呆れたような目で見られていた理由ってヘビだからじゃなくて、ハルトさんだって気づいていたから!? お、教えてよ……! そんな思考に浸っていると、「無理やり監禁はしたくないんだけどな……」という危険な呟きが聞こえてきた。
「──っ、ほ、星空の下でプロポーズされる、でお願いします」
「ふふっ、よろこんで聖女様」
金色の瞳が甘く細められて、頬に手を添えられる。
「サラ、愛してる。僕と結婚してください」
「……はい。わ、私もハルトさんのことが好きです」
勇気を出して伝えれば、頭をするりと撫でられた。
「サラ、顔が真っ赤だね。もしかして、まだ酔っ払ってる?」
「も、もう……びっくりしすぎて、酔ってないです……」
きっと顔が真っ赤だけど、この熱はお酒ではない。くすくす笑うハルトさんをじとりと睨むと、はちみつを溶かしたみたいな甘やかな瞳と視線がぶつかる。
近づくハルトさんの唇に自然とまぶたが落ちて、優しいキスを交わした。途端に──!
「ひゅー! おめでとうー!」
「きゃー! やったわねー!」
突然、リックとエミリーちゃんの歓声が響く。二人が近くにいたことを思い出し、両手で顔を覆う。恥ずかしすぎて、身体を羞恥が駆け巡っていると、ハルトさんに抱きしめられる。
「まったくお前たちは……。ひと足先に王都に戻ってろ──転移魔法」
「えー! 俺たちが協力してたのにー!」
「えー! サラ、また王都で話を聞かせてね!」
二人の周りだけ青い光がキラキラまとい始め、あっという間に目の前から消えた。魔法、本当にすごい……。
「邪魔者はもういないから、サラは安心して僕にキスされて」
「っ……!」
言い終わると同時に、またキスが唇に落ちてきた。ハルトさんの手が私の髪を撫でながら、ついばむようなキスに胸が甘く震えていく。
「ハルト……さん……、っ!」
何度もキスを交わして、ちょっと息が切れた頃、ハルトさんが私の額に自分の額をくっつけて、囁く。
「サラ、好きだよ」
「うん、……ハルトさん、私も好き……」
金色の瞳が、愛おしそうに細められて唇が塞がれる。深いキスに酸素が足りない。クラクラして、ただハルトさんにすがりつく。平和になった星空の下で、流れ星みたいにキスが次々と落ちてきて、胸が幸せでいっぱいになった。
⋱⚘⋰ ⋱⚘⋰ ⋱⚘⋰
王都に帰還した私たちは、盛大な凱旋パレードで迎えられた。王弟と聖女の婚姻は喜ばれ、あっという間にハルトさんと婚姻を結んで、彼の屋敷で幸せに暮らしている。
あれから数ヶ月。リックとエミリーちゃんは相変わらず元気で、私の大切な友達だ。ハルトさんは王弟の仕事をこなしつつ、毎朝白蛇の姿で私の枕元に「プレゼント」を置いてくれる。今日も小さな白い花があって、押し花のコレクションが増えた。
「ハルトさん、ありがとう」
「どういたしまして」
白ヘビから人間の姿に戻ったハルトさんの金色の瞳に見つめられる。
「サラ──キスと甘いキスと蕩けるキス、どれがいいかな?」
ハルトさんの選択肢は今日もおかしい。おかしいのに、胸が甘く高鳴っていく。
「…………ぜんぶ、でお願いします」
「ふふっ、欲張りなのも、かわいいね。サラ、今日はお休みだから覚悟してね」
にっこり笑うハルトさんの瞳には甘やかなゆらめきが灯っている。目を閉じれば、髪を撫でられ、キスがそっと落とされた──。
おしまい
ほどなくして瘴気性咽頭炎も治り、魔王城にたどり着いた勇者一行こと私たち。聖女として魔王城で眠り続ける魔王に手をかざし、教わった通りに「魔王封印」と詠唱。キラキラする光が私の手から溢れて魔王の封印はものの数分もしないうちに終わり、拍子抜けした。しばらく魔王は復活しないと聞いて安堵している。
魔王封印が夜になってしまったので、明日の早朝に転移魔法で王城に帰ることに決まった。戻ったら凱旋パレードがあり、このメンバーでゆっくりできる最後の夜に祝杯をあげる。
「ハルトしゃん……このおしゃけ、おいひい、です」
「そっかあ……サラはお酒弱かったんだね」
「そんにゃこと、ないです……っ! シャラ、よってましぇん……」
「うんうん、酔っ払いは必ずそう言うんだよ──ほら、おいで。ここなら、いつ寝ても大丈夫だよ」
ひょいと持ち上げられてハルトさんの膝の上に座らせられた。細いのに力持ちなところにもときめきが降りつもるけど。
「むむむ~よってましぇんってば~! リックぅ、エミリーしゃん、なんとか言ってくだしゃい……っ」
まだ一杯目のグラスを飲み終わっていないから、そんなに酔っ払っているわけがないのに。ハルトさんなんて、スイスイお酒を飲んでて、ずるい。横抱きは嫌じゃないけど、むしろ最後のご褒美だけど、リックとエミリーちゃんに援護射撃を求めた。
「いや、酔ってるから!!」
「いや、酔っぱらいだ!!」
息ぴったりで二人に見捨てられて、口がとんがるのがわかる。ハルトさんの鍛えた胸に思いっきり頭をぐりぐりした。慰めるようにハルトさんが頭をよしよしと、撫でてくれる。
「みんな、の、いじわるぅぅ~やさしい白へびしゃんに会いたい~~~!」
白ヘビさんと声に出したら無性に会いたくなってきた。そろそろいつもの寝る時間だからやって来るかもしれない。瘴気咽頭炎の夜以降、寝る時はいつも一緒の寝袋で寝ていた。
「ハルトしゃん……今日こそ白へびしゃんに会えるといいれすね?」
いつもハルトさんと白ヘビさんはニアミスで会えていないので、今日が会えるラストチャンス!
「サラは、王都に戻ってからも白蛇に会いたいのかな?」
「あいたいでしゅ……けど……こことは環境もちがうし……むずかしいのはわかってましゅ……うう、おわかれなんて、イヤなのに~~!」
高揚していた気持ちがしおしおと縮んでいく。あやすようにハルトさんに髪を撫でられて、こてんと頭を預けた。白ヘビさんに会えるのも、こうやってハルトさんに甘えられるのも今日が最後。
ただただ寂しくて、ぎゅっと抱きつく。今だけ、今日だけ──。
「サラ、これからもずっと白蛇と一緒にいられる方法がひとつだけあるよ」
「ふえ……?」
こてり、と首を傾げる。ハルトさんの魔法でどうにかできるのかな?
「サラが白蛇と結婚すればいいんだよ」
告げられたあまりに突拍子もない方法に、くすくす笑ってしまう。
「ハルトしゃんも、酔ってます……ね?」
「ふふっ、ちっとも酔ってないよ。サラは鈍感だよね」
「むう、そんなことありましぇん……!」
「そうかな? ねえ、僕と白蛇の色の特徴は似てない? どうして白蛇と僕は会わないのかな? 僕が蛇の言葉が話せるって不思議に思わなかった? それに、蛇はうわばみだって聞いたことない?」
くすくす笑いながらお酒の入っているコップを飲み干して、じっと白ヘビさんと同じ金色の瞳で見つめてくる。
「んんん~? やっぱりハルトしゃん、酔ってますよ……? だって、その言い方だとハルトさんが蛇みたいですよね……?」
ぺちぺちハルトさんの腕をたたいて答えれば、ハルトさんが嬉しそうに笑う。
「それが正解だよ、サラ」
「へ?!」
「僕はね、ヘビ獣人なんだよ──見てて?」
優しく膝の上から下ろされる。すぐに、ハルトさんの身体が不思議なくらい縮んでいき、白ヘビさんになった。
「~~~っ?!?!!」
チロチロな舌も、くりくりの瞳も間違いなく毎日会っている白ヘビさん。あまりの驚きに目を見開いていると、目の前の白ヘビがハルトさんに戻っていく。
「うん、驚いてるサラも可愛いね」
流れるようにハルトさんの膝の上に戻されて、頭を優しく撫でられる。思考が停止している間も、やわらかな手つきで髪を何度も撫でられて、梳いていく。
「えっと、白ヘビさんがハルトさんで、ハルトさんが白ヘビさん……ってこと?」
「そうだよ。驚いた?」
ハルトさんの問い掛けにこくこく頷いた。
「ふふっ、素直でかわいいね。それでサラ、ずっと白蛇と一緒にいられる方法はどうするつもり?」
「……っ!」
先ほどの「サラが白蛇と結婚すればいいんだよ」の言葉を思い出して、ぶわりと熱が頬に集まる。嬉しいのに恥ずかしくて、両手で顔を隠す。
「サラ……?」
「っ、ご、ごめんなさい……そ、の……、結婚なんて言われると思っていなくて……」
心臓の音がうるさいくらい鳴っていて、なんて答えていいのかわからなくて上手く言葉が出てこない。
「……っ!」
ハルトさんの大きな手がそっと私の手を引き剥がす。思わずハルトさんを見れば、まっすぐに熱のこもった瞳で見つめられていた。
「僕はね、頑張り屋のサラがずっと愛おしくてたまらない。素直なところも、照れるところも、ちょっと鈍感なところもかわいいと思っているよ──自惚れじゃなければ、サラも同じ気持ちだと思ってたけど、違うかな?」
ハルトさんの声が真剣で、私の手を握る力が、ぎゅっと強くなった。
「サラ──魔王討伐の褒章として妻に望まれるのと、不敬罪で娶られるのと、星空の下でプロポーズされるのと、どれがいいかな?」
もう、またハルトさんの選択肢がおかしい。絶対におかしいのに──!
「えっ、なんで、不敬罪……?」
「王弟の僕を毎夜寝所に誘い込み、同衾して身体を撫でまわして、キスも散々してたよね。責任を取らないなら不敬罪になるんじゃないかな?」
「い、言い方……!」
エミリーちゃんに呆れたような目で見られていた理由ってヘビだからじゃなくて、ハルトさんだって気づいていたから!? お、教えてよ……! そんな思考に浸っていると、「無理やり監禁はしたくないんだけどな……」という危険な呟きが聞こえてきた。
「──っ、ほ、星空の下でプロポーズされる、でお願いします」
「ふふっ、よろこんで聖女様」
金色の瞳が甘く細められて、頬に手を添えられる。
「サラ、愛してる。僕と結婚してください」
「……はい。わ、私もハルトさんのことが好きです」
勇気を出して伝えれば、頭をするりと撫でられた。
「サラ、顔が真っ赤だね。もしかして、まだ酔っ払ってる?」
「も、もう……びっくりしすぎて、酔ってないです……」
きっと顔が真っ赤だけど、この熱はお酒ではない。くすくす笑うハルトさんをじとりと睨むと、はちみつを溶かしたみたいな甘やかな瞳と視線がぶつかる。
近づくハルトさんの唇に自然とまぶたが落ちて、優しいキスを交わした。途端に──!
「ひゅー! おめでとうー!」
「きゃー! やったわねー!」
突然、リックとエミリーちゃんの歓声が響く。二人が近くにいたことを思い出し、両手で顔を覆う。恥ずかしすぎて、身体を羞恥が駆け巡っていると、ハルトさんに抱きしめられる。
「まったくお前たちは……。ひと足先に王都に戻ってろ──転移魔法」
「えー! 俺たちが協力してたのにー!」
「えー! サラ、また王都で話を聞かせてね!」
二人の周りだけ青い光がキラキラまとい始め、あっという間に目の前から消えた。魔法、本当にすごい……。
「邪魔者はもういないから、サラは安心して僕にキスされて」
「っ……!」
言い終わると同時に、またキスが唇に落ちてきた。ハルトさんの手が私の髪を撫でながら、ついばむようなキスに胸が甘く震えていく。
「ハルト……さん……、っ!」
何度もキスを交わして、ちょっと息が切れた頃、ハルトさんが私の額に自分の額をくっつけて、囁く。
「サラ、好きだよ」
「うん、……ハルトさん、私も好き……」
金色の瞳が、愛おしそうに細められて唇が塞がれる。深いキスに酸素が足りない。クラクラして、ただハルトさんにすがりつく。平和になった星空の下で、流れ星みたいにキスが次々と落ちてきて、胸が幸せでいっぱいになった。
⋱⚘⋰ ⋱⚘⋰ ⋱⚘⋰
王都に帰還した私たちは、盛大な凱旋パレードで迎えられた。王弟と聖女の婚姻は喜ばれ、あっという間にハルトさんと婚姻を結んで、彼の屋敷で幸せに暮らしている。
あれから数ヶ月。リックとエミリーちゃんは相変わらず元気で、私の大切な友達だ。ハルトさんは王弟の仕事をこなしつつ、毎朝白蛇の姿で私の枕元に「プレゼント」を置いてくれる。今日も小さな白い花があって、押し花のコレクションが増えた。
「ハルトさん、ありがとう」
「どういたしまして」
白ヘビから人間の姿に戻ったハルトさんの金色の瞳に見つめられる。
「サラ──キスと甘いキスと蕩けるキス、どれがいいかな?」
ハルトさんの選択肢は今日もおかしい。おかしいのに、胸が甘く高鳴っていく。
「…………ぜんぶ、でお願いします」
「ふふっ、欲張りなのも、かわいいね。サラ、今日はお休みだから覚悟してね」
にっこり笑うハルトさんの瞳には甘やかなゆらめきが灯っている。目を閉じれば、髪を撫でられ、キスがそっと落とされた──。
おしまい
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