1 / 5
死と誕生
しおりを挟む
ーーもはやこれまでか。
28歳という若さにして近衛騎士団の団長を任された俺は、魔王軍との戦争に勝つために、愛する人を守るために必死に戦った。
魔王軍に世界を支配させるものか。
魔王軍に愛する人を奪われる訳には行かない。
魔王軍により殺された多くの同胞達の仇を打つのだ。
右、左、次は頭上。一心不乱に剣を振るう。左右からの同時攻撃を身を翻して避ける。
しかし、多勢に無勢だった。
「もはや立つこともできぬか勇者よ。貴様の戦いは見事であったぞ?静かに眠るが良い。クズが。」
高笑いをしながら、魔王軍幹部が俺に向けて魔法を放つ。
こうして俺、ユークリッド・アレジオの人生は幕を閉じた。
ーー気が付くと、天井や奥行きが全くわからない真っ白な空間にいた。
「大変でしたね。お疲れ様でした。」
若い女性の声がする。
まるで直接脳内に語りかけられるような感覚だ。
「ここは何処だ...俺は死んだのか?」
「はい。貴方は魔王軍との戦闘中に戦死されました。」
また女の声が聴こえた。
「俺はまだ死ぬわけにはいかない。頼む!死に戻りさせてくれ!!」
「それはなりません。死体は死体です。如何なる場合であっても生き返らせる事は出来ません。」
躊躇なく俺の希望は切り捨てられた。
「ですが、貴方は生前に多大なる功績を残された。今の記憶をお持ちのままで先程の世界に生を受けることは出来ます。貴方はそれを望みますか?」
「当然だ」
迷うまでもない。
「分かりました」
次の瞬間、魔法陣が展開。俺の体が宙へ浮かぶ。
「な、何が起きている!体が宙に...」
「ご安心下さい。これから貴方は元の世界に産まれることが出来ます。
これから世界は更に苦しい時代に突入します。貴方が世界を変える方になると私は信じております。貴方に幸あらんことを」
ーー次の瞬間、場面は濃紫の一室に切り替わった。
天井が見える。俺は今寝ているのだろうか。
起き上がる努力をするが首が座らない。
「あらあら、イーブル目が覚めたの?」
声のする方へ首を向けると、“魔女王”シャータイン・マル・ユーベルがこちらへ近づいてくる。
「あう!」
来るな!そう叫ぼうとした。しかし呂律が回らない。
「はーい、よちよち。イーブルは大きくなったら、パパみたいな立派な魔王になるんでちゅよ?」
今、なんと言った。俺が立派な魔王になるだと?ふざけるな。
俺は世界を救いたくて、この世に戻ってきた。それなのに、魔王の息子として産まれてきてしまったというのか。
ぶつける先のない怒りに自然と涙がこぼれる。
「あああーーーー」
建物が揺れ、ガラスが割れる。壁の一部がポロポロと落ちてきた。
泣くだけでこの威力とは...
俺は今、強く決心した。
“この力は絶対に悪用しない。近衛騎士団に戻り、正義のために我が力を使う”
28歳という若さにして近衛騎士団の団長を任された俺は、魔王軍との戦争に勝つために、愛する人を守るために必死に戦った。
魔王軍に世界を支配させるものか。
魔王軍に愛する人を奪われる訳には行かない。
魔王軍により殺された多くの同胞達の仇を打つのだ。
右、左、次は頭上。一心不乱に剣を振るう。左右からの同時攻撃を身を翻して避ける。
しかし、多勢に無勢だった。
「もはや立つこともできぬか勇者よ。貴様の戦いは見事であったぞ?静かに眠るが良い。クズが。」
高笑いをしながら、魔王軍幹部が俺に向けて魔法を放つ。
こうして俺、ユークリッド・アレジオの人生は幕を閉じた。
ーー気が付くと、天井や奥行きが全くわからない真っ白な空間にいた。
「大変でしたね。お疲れ様でした。」
若い女性の声がする。
まるで直接脳内に語りかけられるような感覚だ。
「ここは何処だ...俺は死んだのか?」
「はい。貴方は魔王軍との戦闘中に戦死されました。」
また女の声が聴こえた。
「俺はまだ死ぬわけにはいかない。頼む!死に戻りさせてくれ!!」
「それはなりません。死体は死体です。如何なる場合であっても生き返らせる事は出来ません。」
躊躇なく俺の希望は切り捨てられた。
「ですが、貴方は生前に多大なる功績を残された。今の記憶をお持ちのままで先程の世界に生を受けることは出来ます。貴方はそれを望みますか?」
「当然だ」
迷うまでもない。
「分かりました」
次の瞬間、魔法陣が展開。俺の体が宙へ浮かぶ。
「な、何が起きている!体が宙に...」
「ご安心下さい。これから貴方は元の世界に産まれることが出来ます。
これから世界は更に苦しい時代に突入します。貴方が世界を変える方になると私は信じております。貴方に幸あらんことを」
ーー次の瞬間、場面は濃紫の一室に切り替わった。
天井が見える。俺は今寝ているのだろうか。
起き上がる努力をするが首が座らない。
「あらあら、イーブル目が覚めたの?」
声のする方へ首を向けると、“魔女王”シャータイン・マル・ユーベルがこちらへ近づいてくる。
「あう!」
来るな!そう叫ぼうとした。しかし呂律が回らない。
「はーい、よちよち。イーブルは大きくなったら、パパみたいな立派な魔王になるんでちゅよ?」
今、なんと言った。俺が立派な魔王になるだと?ふざけるな。
俺は世界を救いたくて、この世に戻ってきた。それなのに、魔王の息子として産まれてきてしまったというのか。
ぶつける先のない怒りに自然と涙がこぼれる。
「あああーーーー」
建物が揺れ、ガラスが割れる。壁の一部がポロポロと落ちてきた。
泣くだけでこの威力とは...
俺は今、強く決心した。
“この力は絶対に悪用しない。近衛騎士団に戻り、正義のために我が力を使う”
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる