仲間がいるから、冒険が楽しい。

堕天使ピエロ

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始まりの街と仲間集め

死神

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さて、改めてティアロに擬人化魔法を習得させよう。

「では、ノアさん。ティアロをよろしくお願いします」
「はい。お任せ下さいませ。擬人化魔法の習得には、魔法の詠唱と特殊な薬剤の摂取が必要となります。習得すれば、薬剤や詠唱の必要がなく意のままに擬人化及び獣化が出来るようになります」
「1度飲んだら、その後も薬剤の効果が続くって事ですか? もしそうなら画期的ですね」
「イメージ的には、“体内にスイッチを作製する”という方が近いかも知れません。素材となる薬剤を詠唱という名の接着剤で固めてスイッチを作成します。そのため1度スイッチを作ってしまえば好きな時にON、OFFが出来るのです」

なるほど。体の中にスイッチを埋め込めば電気を点けたり消したりする要領で擬人化魔法を発動できるのか。

「その薬剤を地下から取って参りますので、少々お待ち下さい」

そう言うとノアさんが食堂から出て行く。

「ただいま戻りました」

・・・・・・速い! 部屋を出て10秒も経ってないのに。
普通の人ならどんなに急いでも5分は掛かるだろう。
やはり、ノアも一般人ではないのかもしれない。

「は、速いですね・・・ 」
「ありがとうございます。しかし、一種類薬品を切らしておりました。擬人化魔法専用の素材の為、街の店では恐らく取り扱いがありません。そのため、御手数ですが森から採取して来て頂けないでしょうか。薬草の見た目はシルト様がご存知のはずです」
「分かりました。それじゃあ、ティアロはノアさんとお留守番しててくれ。ノアさんに迷惑かけるなよ」
「うん、おじいちゃんとお留守番してるね! 」

こうして、俺と水町さん、シルトの3人で薬草採りに出掛けることになった。




「今日も良い天気だね」
「そうだな」
「こんな日のハイキングは最高ね」

森の道中、こんな話をしていると突如として森の雰囲気が変わり、声が聞こえた。

『あらあら、人と出逢うだなんて。素敵な出会いに感謝します』

美しい女性の声だ。

「ふたりとも、下がって」

シルトが俺と水町さんの前に出る。
その右手にはククリナイフが握られていた。

「そこに居るのは分かっているわ。早く姿を見せて欲しいのだけれど」
「言われなくてもそうさせて頂くつもりです」

気が付くと、道の真ん中に美しい白髪を靡かせた若い女性が立っていた。
身長は160cmほど。白いワンピースを着て、麦わら帽子を被っている。

「あなた、何者なのかしら? 」
「人に名を聞くときは、まずは自分から名乗るべきでしょう? まあ、いいです。私は死神族のモアザン・ベルドマイカです。お見知り置きを」

優しく微笑む彼女の顔は死神と言うより、むしろ天使だ。

「やはり死神族...しかし、何故ここに? あなた達はこの世界には来ることが出来ないはずなのだけれど」
「質問ばかりですね、お嬢さん。そんなに私のことが気になりますか? 」

「お嬢さんって、お前の方が年下っぽいけどな! 」

あ、やっべ。心の声が漏れた。
うわぁー、死神がこっち見てるよ。
いやでも、結構可愛いな。

よく考えると、こっちの世界での“死神”は日本での“天使”を意味するのかもしれない。

地球の天使は宗教により異なるものの“神の召使い”、“死者を天国へ連れて行く案内人”などの意味がある。
色合い的にも、死神よりも天使に近い。羽が生えていれば完璧に天使だ。

それなのに、なぜシルトはこんなにも彼女を警戒しているのだ? 
もしかしたら、シルトは邪神を信仰しているのかもしれない。
初めて会った時も暗い色の服装で、陽と陰に分けるならば陰だった。
だからこそ、陰とは相対する天使を嫌うに違いない。

これで全ての合点がついた。
身元不明の冒険者を無償で自身の別荘に住まわせ、更に水町さんの“オマケ”の立場である俺に最高級の武器を善意だけで買い与える人物が居るだろうか? 居るはずがない。

シルトの行動には、裏があったのだ。

敵は、死神ではない。目の前のククリナイフ女だ。

「目を合わせないで! 引きずり込まれるわよ! 」

シルトが俺の視界を塞ぐ。

・・・・・・ん? 俺は今、すごく馬鹿な事を考えていた気がする。思い出すことが出来ないのがもどかしい。

「引きずり込まれるなんて、お酷いですね。私はただ、皆さんを“幸せの玉手箱”にご招待したいだけですのに」
「幸せの玉手箱? そんな場所に行くのは願い下げなのだけれど」
「そうですか...それは残念です」

そう言うと、死神は悲しそうに目を閉じる。

「ーーーーッ!?」

次の瞬間、シルトの体がくの字にへしゃげ後方へ吹き飛ばされた。

受身を取れずに地面でワンバウンドしたシルトが重力に逆らい、宙へ打ち上げられる。
そして、今度は正常に重力が働き高速で地面に叩きつけられた。

苦しそうに嘔吐き、倒れたままで血を吐き出す。
一命を取り留めただけでも不幸中の幸いか。

「可哀想ですが、私の手を取らなかった彼女がいけないのです。さあ、おふたりは私と共に行きましょう」

死神が握手を求めるかのように手を前に出した。

(水町さん、あいつの心臓に向けて撃って! )

俺は小声で水町さんに指示を出す。

(うん、行くよ! )

死神の小さな身体には十分すぎる魔法が撃ち込まれる。

「それがあなたの答えですか? 」

躱したのか瞬時に防御魔法を発動させたのかは定かではないが、無傷の死神が立っている。

「シャイニング・グラキエース! 」

水町さんが聞き覚えのない魔法を詠唱。
これがノアが言っていた“頭に魔法名が浮かぶ”と言うやつだろうか。

青光りする無数の玉が死神を取り囲み、一斉に爆発。
この攻撃を受ければ遺灰すら残らないだろう。

「これでど?」

ドヤ顔の水町さんが俺を見てくる。

「さ、流石っす」

水町さんは敵に回さないほうが良さそうだな。
もし水町さんが本気で怒れば男子高校生...いや、人間など木っ端微塵だ。

さて、そんな事を考えているうちに砂埃が薄れてーー

「死ねよ糞ガキがァ! 」

砂埃の中から死神が飛び出してきた。
その狙いはーー

「水町さん、避けて! 」「させねェーよ! 」

水町さんを突き飛ばそうとした瞬間、死神が俺を指差す。刹那、全身の力が抜けて、俺はその場に倒れてしまった。

幸か不幸か、俺の顔の向きは水町さんを見上げる形で地面に倒れた。
もっとも、パーティメンバーの死に顔を拝める事を幸と思うか、思わないかは人次第ではある。
俺は前者だ。仲間の最期はしっかりと看取りたい。

水町さんは、1ヶ月前までは話したことも無い相手だった。だけど、今では共に生活をする家族と言ってもいい存在だ。

魔法が使えなくて、攻撃もクロスボウが無ければ何も出来ない。かと言って、度胸があるわけでもないし、誰かより頭がキレるわけでもない。

そんな俺がお金に困らないのも、立派な装備を着用できるのも、立派な屋敷に住めるのも、美味しい食事を摂れるのも、全て水町さんのお陰だ。

水町さんとパーティを組めなければ、今頃は豚小屋で生活するだけで精一杯だったに違いない。

こんなにも恩を受けたのに、俺から水町さんへ還元できた事が何か一つでもあっただろうか。

サトウ・タケルこと、愚物の塊とパーティを組んだが故に1人の少女が命を落とそうとしている。

助ける事を模索するより先に、“死に顔を拝めるだけでも良かった”などと弱気な考えを持ち、助ける事を放棄した自分が腹立たしい。

「無理だ」と考えることを放棄した者に、明るい未来は絶対に来ない。虚空感や自責の念が残るだけだ。

しかし、99.99%不可能と言われても諦めずに足掻いた者には明るい未来を引き当てる可能性が、明るい未来を過ごす権利がある。

だからーー俺は水町さんを救いたい。

正直、俺が彼女を救うことが出来る確率は万に一つもないだろう。100000分の1、あるいは1000000分の1かもしれない。
それでも、可能性はゼロじゃない。

肉体はダメ。それなら、魔法はどうだ?
アルコールランプに火を灯す程度の魔力の俺でも、奇跡を起こせるかもしれない。

しかし、詠唱が分からないーー喉の下まで何かが出てきている。
取り敢えず思い浮かんだ言葉を...

「デスゴット・サンクチュアリ! 」

俺の背後で何かが形成される。生憎、首を動かせないので何が作られたかは定かでは無い。
けど、こいつが有効打である事を本能的に感じ取る。

「ーーーーッツ!? 嘘だろ? ガキがなんでこの呪術を...」

水町さんの命を掠め取ろうとしていた死神が一転、大きく距離を取った。

心の中で、死神に当たれ! と強く念じる。

次の瞬間、死神の足元に魔法陣が展開。

「サンクチュアリでは、この距離を転送させるなど...」

死神は魔法陣から飛び出そうとするが、シールドによって抜け出せない。
俺の背後にあった気配が消えると共に、死神の頭上に大剣が現れた。

「ここまでか...畜生」

死神は魔法陣から脱出できず、大剣に潰されて死んだ。

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