【完結】顔面が好きすぎて何も話が入ってこない件について

海月くらげ

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第一話

顔が好きなだけだったのに12






――…顔がいい。

声になるという寸前でぺろりと上唇を舐められる。
生々しい感触にぞわりと背筋が震える。落合恭哉の手が私の腰に伸び、シャツをつんつんと引っ張る。
どくんと心臓が大きく震えた。身動ぎするともう片方の手で繋ぎ留めるみたいにして抱き寄せられる。
密着する身体に、いよいよ心拍数が上がる。
落合恭哉と接点が出来てからも、心臓がどうこうするというより思考がフリーズすることの方がよっぽど多かった。
落合恭哉を目の前にして冷静ではいられないのに、頭の隅で呪文のように彼が綺麗だということを全世界に訴えかけたくなる。思考と肉体が分けられる瞬間。それが今ひとつになろうとしている。

シャツを捲られ、素肌に落合恭哉の指先が触れる。

まさかとは思うが、女たらしはこんなところでもコトに及べるのか!?と白目を剥きそうになった。といっても抗うという道はなく、もうこうなったらされるがままになるしかないと早々に諦めがついたのは、その顔の美しさ一点において他ならない。
こんな間近でこのご尊顔を拝む機会がもう二度とないと思う。
そういうはしたなさが自分にも間違いなく存在した。

ごめん色んな女子。落合恭哉を甘く見ていました……。

好みの男に抱かれるというのはこういうことなのか、とまだ服一枚脱いでいないのに悟った。

落合恭哉の指は冷たくもなく、かといって熱いというわけでもなかった。ただ異様にすべすべしている(この思考回路がおっさん臭いということには暫く気付かなかった私であった)。

唇を食むようにして重ねられる。深くなるキスの合間に、落合恭哉の舌が表面を舐めて、その度にびりびりと全身にほのかな電流が走るようだった。


「ん……っ」


甘く触れ合うキスを繰り返しながら、シャツのボタンが外されていく。夏は脱がすものが少なくて楽だろうなと、また途方もないことを考えた。


「下着可愛い」


120%他の女にも同じことを言っているとわかる台詞に、思わず笑いそうになった。
けれど少し身動ぎしただけで鼻先がぶつかる距離で、落合恭哉の顔を見ると何もかもが引っ込んだ。
そもそも手癖が悪いのは有名だったし、今更嫌悪感も何もない。
寧ろこんな上等な顔を持っている人は、他の人より選ぶ余裕があって当然なのだ。
ただ、台詞があまりにも定番で面白かっただけで。



「するの?」



唇が離れた隙にまろびでたのはそんな質問。この期に及んでまだ喋ることが出来る自分に感動さえ覚えた。
落合恭哉は目を細めて、悪戯っぽく微笑んだ。



「するよ?」



するんだ…………。



後は野となれ山となれ。
我が人生に一遍の悔いなし。
心の中で十字を切った。



私が納得、理解を得たと思ったのか、また深く口付けられる。
目を閉じた落合恭哉はラブシーンを撮影している若手俳優のようだった。

さぞ人気が出ることでしょう。

明後日の方向に思考が持って行かれるところで、ボタンが全部外される。

外気に触れる素肌は既に汗ばんでいて、自分の思考よりも身体の方がずっと素直なんだなあと他人事のように思った。落合恭哉の手が下着の上から膨らみに触れる。


「っん……んん……」



触れられたことのない箇所に誰かの手があるなんて不思議だ。
それがしかもあの落合恭哉だなんて。一時間前の自分が聞いたら鼻で一笑して終わりだろう。

目を閉じながらだとそんな風に思える。よし、もうこのまま一生目を開かないでいこう。内なる己との対話。偉人と呼ばれるすごい人たちはみんなそうしてきたはず。禁欲はこうやって生まれたのだ……。


「ひぅ」



キスの隙間からあられもない声が飛び出て自分でびっくりする。下着の上から指先が頂きに触れたのだ。びっくりついでに目をかっぴらきそうになったが、堪えた。偉い。


ごく普通に立つことしか出来なかった太腿の隙間に長い(とされる、間違いない)脚が割り込んでくる。性急さにじとりとした汗が滲み出た。


――…処女、まじで捧げるのか。


なんだか現実味を帯びてきて、身体が固くなる。

処女喪失だとか、初夜だとかに大層な夢を抱いてきたわけじゃない。寧ろ想像もしていなかった。元々そう性欲の強い方じゃなかったのか、ひとりですることもなかった。それがこんな形で……。どういうめぐり合わせなのか見当もつかない。


「ふ、っ、ん……ぁ……ぁ……」


そうこうしている間に唇を割って舌が滑り込んでくる。分厚い舌に歯列をなぞられ、一層甘い声が出る。自分からこんな声が出るなんて驚きだ。

落合恭哉は驚きばかりくれる。

ガタッと音がして、後ろの机に身体を押し付けられる。太腿を割る脚が、ぐっと女の中心を押し上げられる。
粗暴なやり方に女の本能みたいなものが疼くのがわかった。
ずり上がったスカートの合間から、落合恭哉の手が入ってくる。素肌に感じる落合恭哉の熱が上がっているのに気付いて、わっとまた熱が上がる。

下履きの縁に指が引っかかって、ずるりと下ろされる。手付きの素早さ、慣れにこちらばかりが焦っているに違いない。目も開けないのに、心臓ばかりがどんどん足早になっていく。
中途半端に下ろされた下着。一番大事な部分に指先が触れた瞬間、びくりと四肢が震える。
くちゅと水音が鳴り、甘やかされているかのようなキスで濡れそぼってしまったことをまざまざ見せつけられたようで、熱が高まる。それに気付いたのか、キスが深くなる。



「ぁっ、ふ……んっ……ンン……っ」


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