おとぎ話の悪役令嬢のとある日常(番外編)

石狩なべ

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メニー

思春期姉妹のすれ違い(2)※

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 テリーは深呼吸をする。
 クローゼット奥に隠し持っていた色気達を試す時がきたようだ。

(いざ、尋常に!)

 セクシーランジェリーが飛び出していく。

(いざという時用に隠していた、下着達!!)

 さあ! あんた達の力を見せていただきましょうか!?

(きええええええええい!!)

 テリーがとても楽しく着替えた結果、――テリーは黙ってしまった。鏡に映った自分は、少し、なんか、イメージと違った。

(……あ、あれ……? こんなはずでは……)

 何が原因かと鏡を見てみる。あ、わかった。肌が足りないんだわ! あら! こんなところにTバック! いつか穿こうと思ってたやつ! よーし! 穿いてみよう! どやっ! セクシーランジェリーとネグリジェの効果を発動!

「……」

 なんか、イメージと違う。

(……あれ、これ、どこかで見たことある気が……)

 テリーその存在を思い出して、はっとした。

(胸小さい)
(足太い)
(ぽっこりお腹)

 あ、わかった。これは、

(赤ちゃんだ!!!!!)

 ショックから膝から崩れ落ちる。

(あ、あたしは……! 赤ん坊同然だというの!? そんなわけない! あたしはぴちぴちの18歳よ!?)

 鏡に振り向けば、かわいいBABY。

「はあっ!」

 テリーが四つんばいで地面を殴る。

(くそ! くそ! あたしにはまだ、セクシーが足りないというの!? そうだわ! だから男が寄ってこなかったんだわ!)

 子供っぽいから、リトルルビィとか、メニーとかが寄ってくるんだわ!

(……色気……か……)

 確かに、メニーには感じる気がする。キスをされる時、自分を見つめてくる時、とんでもない色気がそこから感じる。あの青い目に見つめられるだけで心臓が掴まれた感覚になる。掴まれたら最後。事が終わるまで、心臓はメニーのものになってしまう。

(……)

 姉離れではなく、自分が妹離れ出来てないだけかもしれない。

(これは深刻に考えるべき問題だわ。あたしも一度メニーと距離を置いて……)

「お姉ちゃん、借りてた本返し……」

 あ、鍵をかけるの忘れてた。

「っ」

 メニーが思わず硬直した。手の力が緩み、思わず持ってた本を地面に落とした瞬間、テリーの顔が赤から青に変わり、世界が一度終わって二回目になった気がした。

「びゃあああああ!!」

 慌てて上着を羽織る。

「は、入ってくるならノックしなさいよ! ばか!!」
「ご、ごめ……」

 テリーがクッションを投げた。

「へぶ!」
「向こう向いてて!」
「あ、はい」

 メニーが扉を閉めて、テリーに背を向ける。……そして、またちらっと目だけ後ろに向けた。

「……お姉ちゃん、なんで、そんな格好してるの?」
「お黙り!」

(くそぅ……! よりにもよって、メニーに見られた!)

 隠していたセクシーネグリジェ。

(くそう!)

 赤ん坊みたいな格好をメニーに見られた。もうお嫁に行けない!!

(どうしよう。えっと、まず、着替えて、えっと、えっと)

「……お姉ちゃん」
「なに」
「それ、見たい」
「だめ。そっち向いてて」
「なんで? 見せるために着たんじゃないの?」
「……あんたはいいわよね。何着ても似合うんだから」
「お姉ちゃん、見たい」
「だめ」
「テリー」
「っ」

 手がぴたっと止まり、テリーが首を振る。

(その魔術にはかからない)

「着替えるまでそっち向いてて」
「こんなに可愛いのに」

 後ろから抱きしめられる。

「なっ」
「こんなの持ってたの?」
「メニッ」

 耳にキスされる。

「ひゃっ」
「これ、誰のために着たの?」

 私のため? ううん、違う。リオン先輩? ううん。違う。
 テリーが欲しがってる、『彼氏』のため。

「テリーは今のままで、十分可愛いよ」
「ば、ばかじゃないの、そんなの、しって……」

 メニーの手がテリーの太ももに下りていく。

「っ」

 メニーの唇がテリーの首に落とされていく。

「あ……」

 また鳥肌が立っていく。

「……」
「テリー、そんな格好してるから、少し寒いでしょ」
「……」

 テリーがこくりと頷いた。

「そうだよね」

 メニーがテリーの手を引き、優しくベッドに導く。

「座って」

 隣に座る。メニーの手が優しくテリーの髪の毛を避けた。首に触れる。肩に触れる。そのたびにテリーの体がびくっと揺れた。メニーが、まるで肌を舐められてくるように上から下まで、全身を見つめてくる。

(……恥ずかしい)

 自分がとんでもなくはしたない女に思えてきた。

(……だめ)

 恥ずかしい。
 テリーが目をそらした。

「……もう、着替える……」
「着替えちゃうの?」

 メニーが首をかしげた。

「こんなに可愛いのに」
「き、着替える、から……」
「そっか。残念」

 メニーがくすっと笑って、テリーの膝に手を置いた。

「じゃあ、脱ぐの手伝ってあげる」

(え?)

 顎を掴まれ、メニーに顔が向けられた瞬間、唇が重なった。

「んっ」

 唇が離れる。

「……ぁっ……メニー」

 唇が重なる。

「んむ」

 動く。

「んっ」

 ついばむように。

「んっ、んっ」

 メニーがくっついてくる。

「はあ、メニー、まっ……」

 止まらない。唇がまた重なる。

「まって、メニー……息が……」

 舌が絡み合う。

「ん、んん、んん……」

 はしたない水滴の音が耳に響き、またぞわぞわしてくる。

(こ、この音、やだ……)

 唇が離れた。

「は、ぁ……」
「テリー」
「あ」

 ゆっくりと押し倒される。

「め、メニー、まって」
「うん。待つ」
「っ」
「待ってるよ」

 にこにこしたその目は、待つ間、テリーの全身を見つめてくる。

「待ってるよ」

 恥ずかしくなるほど、見つめてくる。

「み、見るんじゃないの! ばか!」
「あ、そうだよね。テリーだけが見せられるのは、理不尽だよね」

 メニーがテリーの手をパジャマのボタンに導いた。

「はずして?」
「っ」
「ね? お姉ちゃん、……ボタン、はずして?」

 にこりと微笑むメニーを見たら、なぜだろう。反論が出来ない。

「……」

 テリーの手がゆっくりとボタンを外していく。可愛らしいキャミソールが見えてくる。何も色っぽくないのに、どうしてだろう。

(なんでこんなに、心臓がうるさいの……?)

 緊張から手が震える。ボタンを全て外せば、自分と変わらない程度の胸に、露出する肌。同じ女の体。

「テリー」

 重なって、メニーの声。

「キスしよう?」
「……ん」

 キスしながら、メニーがパジャマを脱いだ。

「……ん……」

 キスしながら、メニーが下も脱いだ。

「めにー……」
「テリーも脱がしてあげるね」

 手が体の上を泳げば、またぞくぞくとしてしまって、体が揺れる。

「んっ」
「あ」

 気がついた。

「これTバック?」
「……うるさい」
「テリーのえっち」

 手が優しく触れてくる。

「ひゃっ」
「やわらかい」
「う、うるさい!」
「テリーの肌ってすべすべだね」
「うるさい! あんたのほうがすべすべじゃないのよ! 説得力がないのよ!」
「そうかな? ……でも」

 メニーがテリーを抱きしめた。

「私は、こうやってテリーとくっつくの、好き」
「……」
「私、素直で純粋だから、感じたままに言葉が出ちゃうの」
「……」
「テリー」

 なんて落ち着くんだろう。

「テリー」

 耳にキスをすれば、縮こまった体が跳ねる。

「テリー」

 頬にキスをすれば、体が力む。

「テリー」

 見下ろせば、赤らむその顔のとりこになる。

「テリー」

 もっと見せて。

「テリー、好き」
「っ」

 手が勝手に動いちゃう。だって、触れたら触れた分、テリーの顔が変わるから。

「あっ……」
「テリー、キスして?」
「ん、んむ」
「ちゅ」
「……はあ……」

 テリーの吐息を聞くだけで、メニーの心臓はテリーのものになる。高鳴って、鳴り響いて、早くなって、もう、止まらない。

「テリー……」
「あ、やだ、メニー、そこは……」
「テリーのお尻、やっぱりやわらかいね」

 手が動く。

「は、はしたないから、おやめ……」
「Tバック穿いたのはテリーでしょ」

 普段ならかぼちゃぱんつで隠れてるけど。

「すべすべ」
「そ、そんな、触り方、あんた、どこで覚えたの……」
「さあ?」

(触りたくて触ってるからなぁ)

「……でも、確かにテリーだけが触られるのは理不尽だよね」
「……そうよ。理不尽よ」
「じゃあ、テリー、私のも触って?」
「え」
「触って?」
「あの」
「いっぱい触って?」
「……」
「ね?」
「……あの、じゃあ、あの……。……失礼します……」

 メニーが横にころんと転がり、テリーが手を伸ばして、触れた。

(わ)

 やわらかい!

(な、何これ。赤ん坊みたいな肌!)

 ぎゅっ。

「あっ」

 メニーが声をあげたのを聞いて、テリーの手が驚いてすぐに引っ込んだ。

「ご、ごめっ」
「ん……」
「……痛かった?」
「……痛くないよ」

 ちゅ。また唇が重なる。

「触って?」
「……ん」

 テリーの手が動き、メニーの手も動く。変な感じがする。手が動くたびに、相手の手も動く。動いたら、尻が揉まれていく。

「はあ……、テリー……」
「ん、んん……」
「テリー、お尻、やわらかくて、……いい……」
「……うるさい……」

 沸き起こる羞恥から目を逸らすと、メニーの手が強く揉んできた。

「あぅっ」
「目、合わせて」

 優しい声だが、まるで突き刺さるような視線。

「見て」

 テリーがそろそろと視線を合わせる。そうすれば、ようやくメニーが微笑む。

「テリー」
「っ」
「テリーのおしり、マシュマロみたい」
「……うるさい……」
「かわいい」
「うるさい……」

 きゅっ。

「あっ!」
「あ、食い込んじゃった?」
「あ、だ、だめ! 触らないで!」

 割れ目に指をなぞらせれば、テリーの頬がさらに赤らんだ。

「……っ」
「ここ、気持ちいいの?」
「き、きもちよく、ないけど……?」
「ふーん」

 メニーの指が優しくなぞり、そこから離さない。指がどんどん入っていく。感じやすいポイントをめがけて、こすって来る。

「……っ」
「ん? どうしたの? テリー? 感じてるの?」
「……かんじて、ない、けど……」
「手が止まってるよ。テリー」
「……っ」

 テリーの手が弱々しくメニーの肌をなでる。メニーの指は擦ってくる。テリーの息が荒くなっていく。指をずらして擦らせたら、テリーの腰がひくりと揺れて反応した。

(あ、ここなんだ)

 もっと擦ってみる。

「あっ!」
「ここ気持ちいい?」
「や、ちがう、きもち、よくなんか……!」
「ここなんだ?」

 Tバックはもう下着の役目を終えている。

「テリー、気持ちいいんだね。もうびちょびちょ」
「ち、ちがう、ちがうんだから!」
「ここは?」
「んんっ!!」
「うふふ。可愛い声」

 色っぽい声。

「あ、そんな、そこ、だめ、だめ、めにー、まって、だめ、だめ……」
「イッていいよ」
「やだ、まだ、あ、だめ、感じてなんか、あ、やっ、あ、だめ、だっ、あっ……!」

 テリーの足のつま先がぴんと立った。

「~~~~~っっっ!!!」

(いたた)

 締め付けてくる。

(もう……)

 心が満たされていく。

(そんなに、私を離したくないの?)

 テリーったら、しょうがないんだから。

「……はあ……はあ……」
「テリー」

 脱力したテリーの手を掴む。

「私もして?」
「……ん……」
「テリーの声を聞いたら、感じちゃった」

 可愛い声で啼くんだもん。

「気持ちよくして……?」
「……」

 ふわふわしたテリーがメニーを見つめる。

(……なんか、頭が、ふわふわして……)

 気持ちよく?

(なに……? どうしたらいいの……?)

「指、動かして?」
「……うん……」

 導かれるままにメニーのぱんつの中に手を忍ばせ、ゆっくりと指を動かしていく。なんだかぬるぬるしている。

「あっ、んっ、そう、そこ……」
「……ここ?」
「うん。あっ、いいっ、テリー……」

 テリーの指が、自分のそこに触れている。

(テリーの指が、触ってくる……!)

 高揚感が一気に上昇していく。

(テリーが見つめてくる)
(テリーが見てる)
(テリーがすぐ近くにいる)
(テリーの吐息)
(テリーの指)
(あっ、いい、気持ちいい)
(テリーの指が動いてる)
(あっ、やんっ!)
(テリーったら、えっちなんだから……)
(あ、テリー、もっとほしい……)

「テリー、指、入れて……?」
「い、入れるの?」
「うん。入れて?」
「……こう?」

 ゆっくり入ってくる。

(あっ!!)

 テリーの指。

(あっ、私の中に、入ってくる!)

 テリーがいる。

(すごい、これ、気持ちよくて、どうしよう、これ、すごい……!)

 テリーの指が動く。

(あっ、そんな、動いちゃ、だめだよ)
(やっ、気持ちいい! 気持ちいい! 気持ちいい!)
(テリー、そんな、激しい)
(あっ。すごい、もう、だめっ……!)

「んっ……!」

 どろりとしたものが中から出てきて、テリーの指を濡らした。テリーが驚いて、びくっと肩を揺らした。

「あ……えっと、……ティッシュ……」

 テリーがふらふらとティッシュを取り、メニーの濡れるそこを拭った。

「だ、大丈夫? メニー……」
「……」

 メニーがテリーを抱きしめた。

「わっ」
「好き」

 耳に囁かれる。

「テリーだけ」
「め、メニー」
「好き。ちゅ」
「んっ」
「好き」
「あの」
「テリー、好き……」

 メニーが自らぱんつを脱いでいく。

「あの、メニー?」

 メニーがテリーのTバックを奪い、ぽいと捨てた。

「ちょ、あたしのセクシーぱんつ!」

 壁に押し倒す。

「ふへっ」

 股間同士が直に当たっている。

「テリー……」
「め、メニー? あんた、目が、なんか、あの」

 揺れた。

「っ」

 擦れる。

「あっ」
「えへ」

 擦れる。

「あっ」
「んっ」

 擦れる。

「あっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
「あ、いい、テリーの、あたってる……」

 擦れる。

「まっ、あっ、やっ、あっ、あっ」
「あ、あたる、これ、あたる、あっ、いいっ、テリィ……」

 擦れる。

「やっ、やっ、あっ、あっ、あっ、あっ」
「テリー、かわいい、かわいい、もっと、もっと見て、もっと……」

 擦れる。

「んっ! んっ! んっ! んっ! んっ!」
「いきそう? うん、わたしも、わたしもね、あのね、いき、そ、あっ、いく、いくっ……」
「あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! あっ! あっ!」
「あっ! だめっ! テリー! テリー! テリー!」
「っ、っ、めっ」
「あっ」

 二人の眉間にしわが寄った。体が力んでしまう。

「「っ」」

 絶頂した。

「……あ……♡」

 メニーが脱力した。

(……くっつきたい……)

 姿勢を戻して、気絶して倒れるテリーを抱きしめる。

(もう、テリーったら……色気むんむんなんだから……)

 弱々しくキスをする。

(気持ちよすぎて、気絶しちゃったの? ……もう……可愛い……)

 またキスをする。

(テリー……)

 またキスをする。

(好き……)

 またキスをする。

(テリーしか見えない)

 この色気は自分だけのもの。

(テリー)

「彼氏なんていらないよ」
「テリーには私がいるんだから」
「忘れないでね」
「テリー」
「テリーは愛されてるんだよ?」
「私がいっぱい愛してるから」
「だからいらないよ」
「彼氏なんか」
「テリーを知ってるのは私だけだよ」
「テリーのこと、愛してるのは私だけだよ」
「好き」
「ちゅっ」
「テリーの全部が好き」
「一生懸命なところも」
「おばかなところも」
「テリーが好き」
「ちゅっ」
「テリー」
「好きだよ」
「ちゅっ」
「テリー」
「ちゅっ」
「えへへ」
「ちゅっ」
「……好き……」

 抱きしめて、絶対に離さない。
 これは、自分だけの姉だ。
 これは自分だけの恋人だ。

 絶対に離さない。


 この愛を、離してたまるものか。


「私が全部から守ってあげるからね。テリー」
「だから」
「私だけを、愛してね」


 また、優しいキスを送った。


(*'ω'*)


「……」

 夜中、目を覚ますと、きれいなパジャマに着替えた自分とメニーが川の字で安らかに眠っていた。

(記憶がない……)

 とんでもない色気を醸し出したメニーに犯されたことだけは覚えてる。

(……あたし、またやってしまったか……)

 こんなのだめだってわかってるのに。

(……)

 メニーの脱力しきった顔を見ると、ため息が出てしまう。

(繋ぎの恋人なんてやめちゃおうかな)

 そんな中途半端なこと、なんで提案してしまったのかしら。

(……あたしの妹が、ちゃんとした恋愛をできるようになるまでよ)

 仕方ない。最後まで付き合おう。

(はあ……。なんか体が痛い……。特に腰が……)

 身を捩じらせれば、メニーがうなった。

「ん……」

(あ)

 メニーの目が開かれた。

「……ん……」

 だが、すぐに閉じられ、メニーの横にぴったりとくっついた。

「すやぁ」

 いらっ。

(てめえよくも安らかな顔で寝やがって……!!)

「……どうしたの?」
「っ」
「眠れない?」

 青い目が自分に向けられる。

「……ちょっと、起きちゃったのよ」
「……そっか」
「寝なさい。まだ早いから」
「……うん」

 メニーが身を寄せてくる。

「……」

 テリーがメニーの正面に寝返り、メニーを抱きしめた。

「はぶっ」

(あ、抱き枕みたい)

 ぎゅっと抱きしめてみる。

(こいつ、抱き心地までいいまで? 何よ。それ、むかつく……)

 少女マンガでイケメン男子がよく言う台詞だわ。こいつ、抱き心地最高じゃん。何それじゃん。ぜってえこいつのこと守らねえとじゃん。じゃんじゃん。

(きいいいいいいいいいい!!)

 恨みを持って締め付ければ、メニーの顔がどんどん赤らんでいく。

「……お姉ちゃん……」

(むかつくむかつくむかつくむかつく窒息しろ窒息しろ窒息しろ窒息しろ)

「そ、そんなに、締め付けられたら……」

 ぎゅぅうううううううう!

「……もう、……仕方ないんだから……」

 メニーがテリーに身を委ねる。こんなに激しく求めてくるなんて。あっ。だめっ。つぶされちゃう。……好き。
 テリーがメニーを潰す。抱きしめて潰そうとする。ふんぬ! むかつく!

 どこかかみ合わない姉妹の夜が、ゆっくりと更けていく。


(*'ω'*)


 最近、メニーに色気がついたらしい。

「リオン先輩と付き合い始めてからじゃない?」
「きっとあんなことやこんなことをしているんだわ!」
「ああ、素敵。メニーさんとリオン先輩のカップリング……じゅるり」
「憧れる……!」
「色気がむんむん!」

(ふん!!)

 テリーが廊下をずかずかと歩いていく。

(メニーよりも、あたしのほうが色気があるわよ! なのにあの男子ども!!)

 男子だけではない。女子までもメニーに夢中だ。

(何よ! いいもんね! あたしはね! まだ目覚めてないだけなのよ! きっと目覚めたらすごいのよ! 本気出したらすごいのよ! もうね、一瞬だからね! 世界があたしを求めるんだからね!!)

「あら、メニーさんが立ち上がったわ」
「みんな、見てないふりよ」
「ああ、歩く姿も美しい……じゅるり」

(畜生! ばかたれどもが! 焼肉のたれが頭からかかっちまえ!!)

「お姉ちゃん」
「っ!!」

 テリーが振り返ると、メニーがとてとてと小走りで走ってくる。

「追いついた」
「何よ。なんか用?」
「移動教室?」
「ええ」
「あと五分くらい?」
「そうよ」
「三分だけ時間ちょうだい」
「何!? カップ麺でも作ろうっての!? 上等よ!」
「こっちきて」

 女子トイレに手を引かれていく。

「何!? 連れションでもしようっての!? 上等よ!」

 個室トイレに入れられる。

「ちょっと、一体何……」

 唇で唇を塞がれる。

「っ」
「しぃ」

 また唇が重なる。

「ちょ」
「だって……テリーが歩いてたから……」
「メニ」
「三分だけ」

 キスをする。

「愛し合おう?」

 メニーの愛が押し寄せてくる。テリーが思った。どうやって受け止めようか。でも受け止め方はわかってる。だって小さい時からメニーは妹だったから。

(……三分で終わるかしらね?)

 細い腰を掴んだら、メニーが嬉しそうに微笑み、テリーの腰を掴んでくる。そして、また身を寄せて、誰にもばれないように、愛しい姉と、愛しく唇を重ね合った。







 思春期姉妹のすれ違い END
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