推しの悪役令息が嫌々結婚させられる田舎貴族の冴えない中年モブに転生してしまったので、せめて無害な紳士になろうと思います。

槿 資紀

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第六話

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 ひく、と、喉奥が震える。くちゅくちゅ、ちゅこ、ぐちゅ、と、自分の体の一部から出ているなんて信じたくない、酷く淫猥な音が、茹るように全身を熱くする。

 あんまりに居たたまれない、未知の感覚が、腰を包み込むように痺れさせ、今にも泣き出してしまいそうだった。ソコを触られれば触られるほど、疼いてしまってたまらない。

「っ、あ、ぅう……、っく、ふ、ふぅ……っ、ぅ゛……!」

「この僕が手ずから解してやっているんだ。そう苦しそうな顔をしてまで声を我慢しようとするな、往生際の悪い。感じていることくらい、見ていれば分かる」

「でっ、でも……っ」

「いいから声を出せと言っている」

 真珠のネックレスのような歯列を剥き出しに笑い、それまでの穴を広げることに専念する指使いから、ある一点を狙ってねっとりと指で揉む動きに切り替えるシリル。俺が気付いていなかった俺の弱点を、彼はもう知っていたらしい。思わず甲高い声を上げて、腰を跳ね上げてしまった俺を、意地悪く見下ろしながら、シリルはクツクツと笑う。

「やればできるじゃないか、ふふっ……いいぞ、ロッド。もっとはしたなく善がるところをさらけ出してみろ」

「やっ、ぁあア……ッ! は、ハッ、ひ、やぁッ、シル、シルっ、おねが、そこばっか、あァッ……♡ ぁう゛♡ う゛ぅ゛♡ ふぅう゛ッ♡」

「息子のように思っていた元妻の指で淫らに喘ぐ気分は? 下心は無いなどと思いあがっていたくせに、二回りも年下の僕を相手に股を開いて腰を跳ねさせる己をどう思う」

「っぉ゛……ッ、ごめ、なひゃッ、ゆるして、やぁ、いやだぁっ♡」

「違う、気持ちいい、だろ? 嬉しいだろう、幸せだろう? なあ、ロッド、ロディ……僕の愉悦のために、尊厳を捧げることが出来て、お前はこの上なく幸福なんだ。そうだろう」

 そう、だろうか。そうなのかもしれない。いやしかし、待て、今の俺は冷静じゃない。すっかり流されてしまっているが、どう考えても、こんな醜態で彼の海馬を穢していい筈がない。

 そもそも後ろの穴に彼の優美で穢れなき指を挿入されて、あろうことか感じるなんて、俺はどこまで浅ましいんだろうか。やはりこれを嬉しいと思うのは違う。これ以上、冒涜的な快楽に心を委ねては……!

「返事はどうした、簡単なことだろう。どうなんだ、ロディ」

「……っ、~~~~~~ッッ♡ おぇ、おれ、はぁっ♡ っふ♡ こんな、こんなっ、こと……! おぉ゛……♡」

「はぁ?」

 シリルは眉間にきつく皴を寄せ、口角を引き攣らせながら苛立ちを露わにする。ドッ、ドッ、と、激しい鼓動に合わせて視界がチカチカと明滅した。しかし、ここで彼の思い通りになってしまっては、彼の庇護と復権のため奔走した純粋な真心までも見失ってしまう。

 つまりは、なけなしの、年長者としてのプライドである。こればっかりは、例え彼の望みであっても、捨てられないのだ。彼をかけがえのないひととして尊ぶ、俺の人生の喜びの、根幹にかかわるものだから。

「そう……そう、か。マスクの他にも、まだ、お前のなかに、邪魔なものがあるんだな。ならば、二度とそんなものを抱かないように、とことん叩き壊してやるまでだ」

 じっくりやろう、と、昏くぎらつく目を細め、シリルは首を傾げた。その傾国の色香に、じりじりと喉がひりつき、渇いていく。しかし、俺も負けじと奥歯を噛み締め、浴びるだけで今にも酩酊してしまいそうなその眼差しに、それでも抗う意志を示すべく、真っ直ぐと見つめ返した。

 シリルは猛獣の威嚇のように喉を鳴らし、徐に指を引き抜いた。煮えたぎるような快楽が蓄積した下腹部が、それだけで引き攣ったように痙攣する。浅く息をしながら、目をきつく閉じてグゥと呻き、どうにか声を堪えた。

 目を開けた瞬間、俺のほの赤くなった穴の入り口に、シリルのペニスが宛がわれた。ギンギンに勃ち上がった状態だと、彼の華奢で引き締まった体躯に釣り合わない、凶悪な逸物だ。

 ジン、と、脳の奥が痺れる。意識して呼吸を落ち着かせようとするも、余計に震える呼気。すっかりグズグズにされた後ろに、こんなものがブチ込まれたら、一体どうなってしまうのかと、打ち震えずにはいられない。

 風船が膨らんで破裂する寸前のように、恐怖感が最高潮に達したころ、シリルは容赦なく、おのれを俺のナカに埋め込んだ。グッ、グッ、と、押し開くような蹂躙。悲鳴を上げるが如く迸る疼痛が、腰を甘く甚振る。

「ひぃ゛ッ……♡ ふっ、ひゅ、ふぅぅ゛~~~~♡ ぅう゛♡ うぁ゛……ッ♡」

「生意気に睨みつけてきた割に、随分と余裕のない顔で、おぼこい声を出すものだ……まだ全部挿入ってないんだがな。早めに認めるなら少しは優しく躾けてやってもいいが」

 溢れ出る涙を振り落とすように首を振って見せる。なんのこれしき、ブラックで十年以上理不尽に耐えてきた俺がこの程度で音を上げるなんて見くびってもらっては困るのだ。

「へえ? それなら、手加減は不要だな」

「ッ⁉ お゛……ッ♡ ほ、ぉ……♡ い゛ッ、かは、はひゅ……♡」

 みちみち、と音がしたような。シリルは青筋を立て、憤るまま、自身を奥まで一気にはめ込み、ぐりぐりと押し付けた。いたく強引なやりかたに、ナカも電流が走ったように痛み、ひくひくと引き攣った。しかし、どうしてか、その恐怖と痛みを快楽に変えようと、誤作動を起こす自身の脳のバグ挙動に、悶絶しながら途方に暮れる。

「き、つ……ッ、ロディ、おい、一度力を抜け、いい子だから」

 乱暴な異物を排除しようときつく蠕動するナカに締め付けられてか、シリルは息を乱して呻き、俺の下腹部を撫でた。いつになく焦った様子の彼に、「苦しい思いをさせてはいけない」という俺の本能的欲求がたちまち反応し、考える前に、体が彼の言葉に従おうとつき動く。

「はぁ……ッ♡ ぁア゛♡ ん、ふぅ……ッ♡ ふ、うゥ……♡♡」

「ふふ……ッ、口では、反抗しても、体のほうは、相変わらず健気だな……自分の役目が、よく、分かっている、ようだっ」

「ッ♡ ぉ゛♡ んぉ゛♡ ほっ♡ はッ♡ はひゅ♡ ひうぅ゛ッ♡♡♡」

 俺のナカがあっけなく雌伏したのが分かるや否や、シリルは勢いをつけて腰を振り始めた。熱くかたい彼の先端が、繰り返し、俺の弱点や奥を抉るたび、ビリビリと激しく、しかして甘美な快感が背骨をなぞるように駆け巡る。

 ただそれだけのことで、俺の脳裏に、屈服の二文字が浮かんだ。心の中とはいえ、あれだけの啖呵を切ったのに。それだけ、夥しいまでの未知の快楽が、想定以上で、鮮烈すぎたのだ。

「っお゛♡♡ う゛♡ ぉんッ♡♡ ぉほ♡ ほッ♡♡ ふ♡ ひぃ゛~~ッ♡♡」

「あは……ッ♡ おいおい、どうしたロディ、もう限界か? さっさと認めれば楽になるぞ。気持ちいいんだろ、僕に犯されて嬉しいだろう♡」

「ちがぅ゛♡♡ うれしぐないぃ゛♡♡ シルぅ゛♡♡ ゆるひへぇ゛♡♡ も゛♡ やらぁ゛ッ♡♡♡」

「こんなにいやらしく媚びておいてよく言うなぁ♡ ふふ♡ 口ではどう言っても、お前のナカは僕のペニスに絡みついて、せっせと奉仕しているというのに♡」

「ッ♡♡ ~~ッ♡♡ ふッ♡♡ ふぅ゛♡♡♡ ひぐ♡♡ ひゅッ♡♡♡」

 シリルは初めてとは思えない巧みな腰使いで、浅いところの弱点を執拗に責め立て、着実に俺を追い込んでくる。破壊的なナニカがみるみる込み上げてくる底知れない感覚に慄き、必死で快感を逃がすことに躍起になり、いたく情けない声が出た。

「シルっ♡♡ シルぅ゛♡♡ も、むりッ♡♡ やめで♡♡ なか、へん、こわいぃ゛♡♡ ゆるひてっ♡♡ たひゅけ、んお゛ぉ゛~~~~ッッッ♡♡♡」

 シリルは目を細めて何も言わず、俺が助けを乞おうとした瞬間、ごちゅ、と、奥まで、強かに腰を打ち付けた。

 一瞬、キィン、と、甲高い耳鳴りがしたかと思うと、全てが真っ白になり、とてつもない虚脱感が襲い掛かってくる。抗うことなどできないまま、それに身を委ねていれば、唐突にゾワゾワゾワ、と鳥肌が立ち、追って、ガツンと殴られたように強烈な絶頂を自覚した。

 同時、心の大事なところに、取り返しのつかないヒビが深く入った、いっそ冷静なまでの確信が全身を支配する。天地がひっくり返るような絶望感があった。

「初めてにしては随分と堂に入った、盛大なナカイキだな♡ 恐れ入ったぞ、ロディ……見込んだ通りだ、やっぱり、僕の肉便器が、お前にうってつけの役目なんだよ♡」

「ぅ、う……ッ♡♡ ひゅ……♡ ふ~~~~っ♡♡ ふ……ッ♡♡」

 認めてしまえと、彼の声をした悪魔の言葉が、俺の脳内に木霊する。これほど盛大にイっておいて、これほどの無様を晒しておいて、今更年上としての守るべきプライドなど残ってはいないだろう、と。

 ボロボロと決壊したみたいに涙が溢れ出す。ヒビが入った心の隙間から、俺を求める彼の激しい言葉が、毒となって浸潤し、精神を苛んだ。

 シリルは追い打ちをかけるように、ふたたび激しく腰を振り始める。絶頂の余韻が抜けていない、すっかり冒されきったナカが、過敏なまでに快感を拾って、徐々に腰の感覚を麻痺させていく。ぼやける視界に、萎えてプルプルと震える情けない俺の息子が、いつの間に出したか分からない白濁を陰毛にまき散らしているのが見え、眩暈のあまり卒倒しそうだった。

「ほぉ゛~~~~~~~~♡♡ ぅぉ゛……♡♡ ぉお゛……♡♡♡」

「……ッ、なんで、泣くんだよ……なあ、ロディ……気持ちいいんだよな、どうして認めない? なあ、ロディ、ロディ……ッ」

 茫然自失で痙攣する俺の体に圧し掛かり、奥までずっぽりと嵌めこんで、ぐりぐりと押し付けてくるシリル。イカレた体は、またもや呆気なく果て、彼の蹂躙を甘受するしか用をなさない。ナカだけは、まるで俺の意思から独立したみたいに、きゅうきゅうと甘ったれるようにシリルのペニスを食んで悦んだ。

 シリルはそのまま息を詰まらせ、ブルリと震えた。じわ、と、奥で広がる湿った情熱の迸り。場違いにも、麻薬のような充足が込み上げてきて、恍惚の吐息を零してしまったのだった。
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