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「待って、待って! 石神ちょっと待って! ストップ」
いまだ西島は石神の腕に腰を抱かれたままの体勢でいる。
少しでもいいから距離を取ろうと思い、石神の胸筋を両腕で思い切り押してみたが、多少の隙間ができるくらいの距離しか取れず、これではなんの意味もなさない。
最後の悪あがきとばかりにジタバタしつつ、必死になってキスされないように顔を下に向けていたら、やがて頭の上からため息の音が聞こえた。
「ったく、西島、いいから少し冷静になれ」
「は? 冷静じゃないのはおまえの方だろう?!」
カッとなり、思わず顔を上げてしまった西島の顎を、石神の右手が掴んだ。左腕は当然、相変わらず西島の細い腰にがっちりと回されたままである。完全に逃げ道をふさがれてしまった西島は、ビビリながらも震える声で石神に言った。
「は、離してくれ。いや、話そう、話せば分かる!」
「いいよ、俺も話がしたいと思ってた」
「えええっ?! 俺と石神がなにを話すことがあるって言うんだよ?!」
「……大丈夫かよ、西島。相当混乱してるな。言ってることが支離滅裂じゃねーか」
やれやれ、と石神が呆れ顔をするが、西島はそれどころではない。
なにせファーストキスを奪われそうになっているのだ。一生の思い出になる大切なイベントなのだ。それを男とのモノにされようとしているのだから、できる限り抗おうとするのも当然のことである。
だから必死になって西島は言った。
「俺、さっきも言ったけど、ファーストキスは女の子としたい!」
「そのことだけど、おまえさ、今ここで俺とのキスを逃したとして、次は何年後にキスのチャンスが来ると思う?」
「え」
「五年後? 十年後? 下手したら一生来ないかもしれないぞ?」
「い、いくらなんでも、そんなこと……」
「ないって言いきれるか? ん?」
「…………。」
言い切れるわけがなかった。
ズーンと西島の気分は暗くなる。
これまでクラスなどという集団の中で、同じ割合の男女が毎日一緒に共同生活をしていた中でさえ、特別に親しい異性を作ることができなかったのだ。この先大学に入り、社会人になると、更に人間関係は希薄になっていくばかりだろう。そんな中で、果たして自分は彼女なんてものを作ることができるだろうか?
嫌な予感しかせず、西島は心の中で汗をかく。
いやしかし、そうは言っても大学に入ればサークルにも入るだろうし、バイトだって始めるだろう。もしかすると、新しくできた友人に合コンに誘われることもあるかもしれない。そこで出会った相手と親しくなって、ゆくゆくは交際に発展することもあるのではないだろうか。
うん、そうだ。きっと新たなる出会いが俺には待っている。そうに決まってる。そう信じたい。そう信じさせて!!
神様、お願いします!
西島は心の中で土下座して神に祈った。
いまだ西島は石神の腕に腰を抱かれたままの体勢でいる。
少しでもいいから距離を取ろうと思い、石神の胸筋を両腕で思い切り押してみたが、多少の隙間ができるくらいの距離しか取れず、これではなんの意味もなさない。
最後の悪あがきとばかりにジタバタしつつ、必死になってキスされないように顔を下に向けていたら、やがて頭の上からため息の音が聞こえた。
「ったく、西島、いいから少し冷静になれ」
「は? 冷静じゃないのはおまえの方だろう?!」
カッとなり、思わず顔を上げてしまった西島の顎を、石神の右手が掴んだ。左腕は当然、相変わらず西島の細い腰にがっちりと回されたままである。完全に逃げ道をふさがれてしまった西島は、ビビリながらも震える声で石神に言った。
「は、離してくれ。いや、話そう、話せば分かる!」
「いいよ、俺も話がしたいと思ってた」
「えええっ?! 俺と石神がなにを話すことがあるって言うんだよ?!」
「……大丈夫かよ、西島。相当混乱してるな。言ってることが支離滅裂じゃねーか」
やれやれ、と石神が呆れ顔をするが、西島はそれどころではない。
なにせファーストキスを奪われそうになっているのだ。一生の思い出になる大切なイベントなのだ。それを男とのモノにされようとしているのだから、できる限り抗おうとするのも当然のことである。
だから必死になって西島は言った。
「俺、さっきも言ったけど、ファーストキスは女の子としたい!」
「そのことだけど、おまえさ、今ここで俺とのキスを逃したとして、次は何年後にキスのチャンスが来ると思う?」
「え」
「五年後? 十年後? 下手したら一生来ないかもしれないぞ?」
「い、いくらなんでも、そんなこと……」
「ないって言いきれるか? ん?」
「…………。」
言い切れるわけがなかった。
ズーンと西島の気分は暗くなる。
これまでクラスなどという集団の中で、同じ割合の男女が毎日一緒に共同生活をしていた中でさえ、特別に親しい異性を作ることができなかったのだ。この先大学に入り、社会人になると、更に人間関係は希薄になっていくばかりだろう。そんな中で、果たして自分は彼女なんてものを作ることができるだろうか?
嫌な予感しかせず、西島は心の中で汗をかく。
いやしかし、そうは言っても大学に入ればサークルにも入るだろうし、バイトだって始めるだろう。もしかすると、新しくできた友人に合コンに誘われることもあるかもしれない。そこで出会った相手と親しくなって、ゆくゆくは交際に発展することもあるのではないだろうか。
うん、そうだ。きっと新たなる出会いが俺には待っている。そうに決まってる。そう信じたい。そう信じさせて!!
神様、お願いします!
西島は心の中で土下座して神に祈った。
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