どうか僕のことを、忘れて

あか

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出逢い

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歩き続けて、どのくらい経つだろう。
そろそろ、日が傾き始めた。
野宿は初めてだけど、おじさんの家で読んだ本を思い出せばなんとかなるか。
そのおじさんは、もう僕の傍にいないことを思い出して、何だか胸が苦しくなった。
でも、そんなことを気にしても仕方ない。
とりあえず食べれるもの何かないかな…と、周りを見渡した、その時。


どこからか、こちらに近づいて来る足音が聞こえてくる。
魔物?野盗?……どちらにしろ、厄介なことには違いない。
咄嗟に近くにあった大きめの石を拾い、足音がする方へ投げつけた。




「……うわっ!? 待って、待って!大丈夫、怪しい者じゃないから!!」

さっきの石を何とか避けたらしい、その足音の主は、どうも人だったらしい。しかし、その声は思ったより若く、野盗にしては声が細いように感じた。

様子を見るために、だんだん大きくなってくる音の方を黙って見ていると、木々の間から人が現れた。

僕よりは年上だけど、おじさんよりは若そうな人だった。その人が来ている服は、教室の先生が着ているものに似ていた。でも、今までその人を見たことは無かった。

「……誰?」
「あ、うん。それはそう、だよね……ボクも、君と会うのは初めてだね」

警戒して後ずさる僕に、顎に手を当てて、少し考えたようにしてから。彼は俺と同じ目線まで腰をかがめて、目を細めながら口元を緩めながら話しかけてきた。

「はじめまして。君の学校で先生をしている、ロナウド・ケヴィンズだよ。
君が学校から飛び出して森に入っていったのを見たから、慌てて追いかけたんだ」

これで信用してくれる?と手を伸ばしてくるその人から、さらに俺は後ずさる。
嘘かもしれないからだ。

「……なんで?僕を追いかけてきても、いいことないよ」
「いいこと、とかじゃないけど。子供が危ない森の中に入ったら、ちゃんと連れ戻すのは大人の役目だよ」

思ったのと違うことを言われて、少しだけ肩の力を抜く。僕のこと、知らないのかな。

「……僕、魔法が出来ない、ダメな奴だよ。もう、帰る場所もない」

ひとりぼっち、と思わず言ってしまうと、頭の中におじさんの背中が浮かんできた。

胸の中が、また苦しくなる。
頭をふるふる振ってから、そのまま逃げ出そうと、踵を返してから。




(ーーーまずい)



さっきまで、全然気づかなかったけど。
獣の足音が複数、こちらにやってくる音がどんどん近くなっていた。




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