どうか僕のことを、忘れて

あか

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考えてみる

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「なんで、気になるの?」

「いーじゃん、減るもんでもないし。知りたいから聞いてんの」

「うーん……」

そう言われても、なぁ。
改めて考えたことなんてないから、うーん、と首を傾げたり、反対に傾けたり。

結構、長く考え込んだけど。

隣からは、珍しく答えを催促するような様子はなく。視線は相変わらず、強く感じるものの。『彼』はただ、黙って僕の答えを待ってくれていた。

だから、ちゃんと考えてみる。
頭の中で、ぐるぐる、ぐるぐると。

一生懸命、考えてると。




ーーふいに、あの人の優しく笑う顔が、頭の中で浮かんできて。
そうして、思い出した。




「……あの人、だけだから。僕のこと、嫌がらないで、笑顔向けてくれたの」


そうだ。

あの人が、初めてだったんだ。



魔物から逃げようとした僕を、空に連れて行ってくれて。
ダメなことしたのに、笑ってくれて。
お日様みたいな匂いに、安心出来て。
他人なのに、すごく優しいから。

それが、『好き』という言葉の意味ならば。



「……うん。だから、多分。『好き』、なんだと思う」


「……ふーん。そっか」

そっかぁ、と、子供はもう一度繰り返して。
下をまた向いて、少しの間、また足をプラプラさせた。


何度か訪れた、沈黙がまた続く。
ただ、今度のものは何故か、落ち着かない感じは、しなかった。



「ちなみに、さぁ……」

と、おそるおそる、といった様子でこちらを見ながら、質問してくる。

「あの先生とは、いつ知り会ったんだよ」

「……。なんで?」

やっぱり、変なことを気にする子供だなぁ。
『君』には、関係ないだろうに。



「だってさー……気になるじゃん。あの先生、俺、見た事なかったし。俺らの担当ってワケでもないのに、いつの間に知り合ったのかな、って」

まあ、それはそう、だけど。

なんとなく言いたくないような、気もするけど。

……自分のこと、言葉にして僕に教えてくれた、『この子』には。
返さなきゃいけないのかな、って思う。



「……森の中」

「はあ?何それ、怪しすぎだろ」

「君に、怪我させたとき。森の中に入った俺を追いかけてくれたんだ」

「……あー……」

「……あの時は、ごめんね」

「……いーよ。俺も、あの時は、言い過ぎた、んだと思う」


僕の言葉に、最初ちょっと怒った様子だったけど。怪我をさせてしまった時のことを思い出し、なんとなく、もう一度謝ってみると。
ちょっとバツの悪そうな顔になってから、後ろ頭に手をやって軽く掻いていた。その後、思ったんだけどさぁ、と言葉を続けてくる。


「ぶっちゃけあの人、変じゃね?初めて会った俺に対しても優しくしたり、お菓子や飲み物くれたり。いつもそうなの?」

「……お菓子は俺も、初めてだけど。
変なのは、変、だと思う」



「変な人、だけど。すごく、優しい人。
僕なんかに、笑って、褒めてくれて。

あの人が笑うから、魔法が出来るんだ」

「……変なの」

「変でいいよ」


分かってもらえなくても、別にいい。
だって、あの人のおかげで、僕はやっと、『普通』になれた気がしたから。

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