王太子妃は決定事項?承諾してない!何でこうなった?!

御伽夢見

文字の大きさ
38 / 56

クラーク公爵は暴走し、夫人は楽しむ

しおりを挟む
 その日城から帰ってきたクラーク公爵の顔色は青白く、屋敷内に浮遊霊かのように彷徨っていた。

 オリヴァーも公爵夫人も面倒くさいことが起きそうな気がして、刺激を与えないよう静かに傍観することを選んだ。

 だが、夕食の席で面倒くさいことは起きた。

 「・・・・・うう、どうしよう。」

 ボソッと呟く公爵。二人はとりあえず聞こえないフリで食事を続ける。

 「なぁ、オリヴァー。」


 えっ!僕?!!

 オリヴァーは口の中のものをごくんと飲み込んだ。

 「お前は親の我々が、政略結婚ではあるけど実は恋愛結婚というのは知ってるよな?むしろ恋愛が先で曖昧な関係をはっきりさせたくて正式なお付き合い申し込もうとしたら政略結婚の話が王命としてきた。」

 「何度も聞かされてますよ。そもそも父上の本来の家系が消えたレイルズ国の王家な訳で。アドリウス国と一緒になった時、クラーク公爵家と同等の筆頭公爵家扱いとなってますが、本来ならば同等ではなくもっと上でしょう。レイアルズ公爵領がありえないくらい広いのはレイルズ国土そのものだから。戦争で生き残った元レイルズ貴族が領地の色んなところを管理してくれてるんでしょう?と、いうかレイルズ国があればそのままレイルズ貴族としてそれぞれが管理しるはず形。
 普通に公国状態じゃないですか。もしくは連合国レベル。経済も当時アドリウスが介入して助けたとはいえとっくに回復してる。他国に侵略されそうになって抵抗した戦争の傷は人々の心に残ってますがね。

 父上は合併後の誕生で、その後もし弟が生まれたら子供のいないクラーク公爵家へ養子にとの約束だった。お祖父様が自分達はアドリウス国の一員になったとの意思表示で、アドリウス王家の家臣であると他国に示すことも含まれた。

 クラーク公爵家は王家の親戚筋で、その一族から妻を娶れば合併後も問題なくアドリウスは平和だと。」


 「今更それがどうしたの?あなた。」

 公爵夫人が不思議そうに尋ねる。

 「オリヴァー、できれば恋愛結婚の方がいいだろ?」

 「貴族である以上、政略結婚は余程の事がない限り受け入れますよ。問題なければ相手と信頼関係、愛情関係結べるよう努力します。そりゃあ本音でいえば父上たちみたいに上手く恋愛でいければ嬉しいですけどね。」

 「そうだよね?オリヴァーはそういう優等生な人間。でも可能なら貴族以前に一人の人間として恋愛結婚考えるよね?!」

 「だから、どうしたんです、父上。」

 「つまり・・・、シルヴィアだってそうだよね?!」

 「「シルヴィア?」」

 何故ここでシルヴィアの名前?と、二人は首を傾ける。

 「シルヴィアが王女になっちゃったら、他国からみたらいい政治の駒だよね。特にレイルズを襲ったタイール国なんか!」

 「王女?貴方、何言ってるの?!それにシルヴィアはイーサン殿下が自分にとってどういった存在なのか答えを出そうとしてるし、答えによってはそのまま王太子妃直線コースでしょうが。
王女って、一体何の話よ!」

 「よくわからないけどシルヴィアが王女なら・・・。」

 嫌な予感がしてオリヴァーは顔色の悪い父をみる。

 「その通り。お前は王子だね。でもそれ以前にクラーク公爵家跡取りだけど。」

 「ちょっと待って、父上。本気で何の事言ってるのかわからない。」

 「お前の父上である私でさえ話についていけてないんだよ!お前のお祖母様なんかこの話について前国王のこと黒タヌキって言ってる!」

 「貴方、順番に話してくれる?」

 内容がかなり大きな事なのはこの時点で理解できるが、何やら面白そうと自分の愛する旦那さんのコミカルな言動を観察しはじめる公爵夫人であった。公爵のコミカルな言動は時に腹が立つこともあるが基本、夫人のツボにハマっているのであった。

 
 当時レイルズ王太子は、戦争で苦しんだ国民を早く救うためにアドリウスとの合併後も尽力を注いだ。レイルズ国王は大病で闘病していたが結果的に国が喪に服す事になった。その後の落ち着かない最中に奇襲攻撃を受けた。
 国王としての儀式を行う時間もなく、就任書類手続きをする暇があるならば戦を終わらせ国を守る事を優先し、王太子のまま奮闘した。
 アドリウスとの昔からの友好関係を活かし、敵国は去る形となり戦争は終わった。
 国の形が変わっても、人々が平穏に生きることを王太子夫妻は望んだ。
 一方、当時のアドリウス王は、大昔に逆にレイルズに助けられた歴史もあり、仲良くやっていけるのならば何も合併しなくてもとの姿勢。だが、レイルズ王太子は奇襲攻撃を受けたとはいえ被害を重くみて、レイルズ王家なりのケジメだと突っぱねる。結果、合併。ここまでは国民の知ること。

 ところがアドリウス王家はレイアルズ公爵を裏では国賓扱いしようとしていた。世代が変わってもレイアルズ公爵を、丁重に扱うように王家の者は言われて育った。
 ここがレイアルズ公爵夫人がタヌキといったことに関係してくる。

 前国王はレイルズ国復活を裏で計画していた。既にレイアルズ公爵はこの世にはいないので話は夫人に。残された夫人が納得しなければせめて連合国としての新たな国の誕生を。

 レイルズ、アドリウスのどちらが倒れても助け合い必ず復活してくると他国に示せば愚かな考えを持つ国への牽制にもなる。

 レイルとアドリウスズの位置は他国との行き来に非常に影響する位置。そこを狙う欲深い国はアドリウス前国王として許しがたいのであった。

 ほとぼりがさめただろうとレイアルズ公爵夫人、いや、元レイルズ王太子妃に裏話が伝えられたのはシルヴィアがアドリウスでのデビュタントを無事に済ませた後だった。

 その話を本日クラーク公爵は実母から聞かされたのだ。ちなみにクラーク公爵家の義両親はすでに知らされていた模様。

 「ね?わかるでしょう?これが実現しちゃったらシルヴィアが狙われちゃうよー!!
しかも弟も今は結婚準備でそれどころではないからレイアルズ公爵の跡取りとしてならまだしも、レイルズ新王なんて向いてないからお前がやれとか言い出しちゃってるしー!でも私はクラーク公爵だから困るでしょうが。今から頑張って神様がもう一人子供を増やしてくれてもややこしいでしょう?!
 シルヴィアは好きな人と一緒になって欲しいよぅ。イーサン殿下はちょっと・・執着心がやばいから父としては避けたいけど。」


 妻と息子は思った。娘可愛さで暴走してるが、悩みは娘を政治に使いたくないというのが主か?と。それよりも復活した場合、お前がこのままだと王だぞ?そっちをまずどうにかしないか?と突っ込みたくて仕方がなかった。

 非常に難しい案件だが、人生何が起こるかわからない。公爵夫人はワクワクしてきていた。
そう、もし夫が王なら自分は王妃になってしまうことはコミカルな夫の様子を楽しむあまり、気付いていなかった。夫が夫なら妻も妻である。

 「とりあえず、頑張って子供をもう一人というのは保留でお願いね。」

 公爵夫人は笑った。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)

透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。 有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。 「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」 そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて―― しかも、彼との“政略結婚”が目前!? 婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。 “報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。

処理中です...