虎子の戦場

夏少年四十番

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プロローグ

精鋭達

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 仏界。
「おい、ガラシャお前、堕ちるぞ」
 話しかけられたガラシャが振り返る。
「仏の最期はいつだってこうさ。気にするな」
 話しかけた阿修羅は仏界の下を覗き、言った。
「お前もあの子達に葬られるのだろうな」
「ああ」
 すると、ガラシャが急速に正気を失い、黒く変色していった。
 阿修羅がその背中を叩く。
「行ってこい」
「が、が、があああああ!!!」
 そして、ガラシャは「堕仏」となり、地上へと降り立った――。


 この世には、虎がいる。
 虎と呼ばれる人々だ。遺伝や突然変異で生まれてくる。
 虎は昔から堕仏をほふるために戦い、人々を守ってきた。だが、虎は虎。人だって殺しかねない。
 人々は虎を封じるように学園という名目の実質監獄を作り、そこで道徳や戦い方を叩き込んで飼いならした。
 これは、悲しくも雄雄しい虎達の物語である。

「第弐号虎隊、出撃せよ!」
「第弐号虎隊、出撃!」
 その日、天の仏界からガラシャが堕ちてきた。「虎子学園」はすぐさま三つの虎隊を出撃。

「――弥生! ガラシャの足を止めて!」
「まっかせろぉおお!!!」
 弥生、近藤弥生は封仏術に長けている家系の出だ。他の虎隊がガラシャの気をそらしているうちに、弥生が陣を張り、ガラシャを中心として円形の陣が浮かび、そこから飛び出した赤い鎖がガラシャの足を封じた。
 後は――、
「もらった☆!」
 斥候を兼ね先行していた井之頭鞘が巨大な斧を振るい、
「ぎゃああああぁぁぁ」
 ガラシャの首を切り裂いた。
 
 ――本日の獲物、ガラシャ一体。
 虎隊三隊出撃。負傷者一名。死者なし。討伐、完了――。
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