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一章 元オッサン異世界で困惑する。
しおりを挟む今日、アルセンスの封鎖が終わった。
長い間足留めをされていた商人達が列を成して足早に街から出ていくようだ。
俺達も近い内にリーンベルへ帰るそうだ。
俺はジャミル、キャロライン、ヴェルディットとはここで別れるのかと思っていたのだがリーンベルまで一緒に来るらしい。
うーん、リーンベルに帰れるのは嬉しいのだが馬車でみんなに迷惑を掛けるような事にならないようにしないとなー。
帰りの準備で忙しいようでみんなが飛び回ってる中、俺はセリーヌさんと一緒に借りていた家を掃除していた。
[ジュエルちゃん、中庭で少し見てもらいたい物があるんだけれど。]
うん?エメリッヒが中庭側の窓から俺を呼んでるな。
セリーヌさんと目が合うと[エメリッヒから離れないのなら行っても大丈夫よ。]とのお許しが出たので中庭へ行こうとするとフードをセリーヌさんが被せてくれた。
[一応ね!]
その言葉に笑顔で返し中庭に出ると、いた!エメリッヒが馬車の側にいる。
[エメリッヒさん、どうかしたのですか?]
[どうにか帰るまでに間に合ったからジュエルちゃんに見て欲しかったんだよ!]
そう言いながらエメリッヒは馬車を指差す。
うん?...おぉ!?まじか!!!馬車が魔改造されてんじゃねえか!!!
俺は興奮しながら馬車に近づき、即行で馬車の下廻りを覗く。
ちゃんとした頑丈そうなラダーフレームにトーションビームの足回り、ショックにコイルスプリングも付いている。
マジかよエメリッヒ!!お前神だな!!!
[.....すごい、凄いですよ!!!エメリッヒさん!!!!]
興奮してはしゃぐ俺を見ながらニコニコしているエメリッヒが[ちょっと馬車に乗って乗り心地を確かめて見てよ!]と俺を抱き上げ馬車に乗せてくれた。
少し馬車の上で跳び跳ねて見るとしっかりとサスが沈んで役目を果たしている。
完璧だなエメリッヒ!!よくあの前衛的な絵と俺の説明でここまで作れたな!!!
[よく作れましたね!!]
[いやー、ジュエルちゃんの設計図と説明を参考にして設計図を僕なりに書き直して見たんだよ!!]
エメリッヒが設計図を鞄から取りだし、見せてくれる。
うぉ、完璧な設計図じゃねえか!細部は想像していたものと違うが良く出来てやがる。
こいつ、これを作ってたから最近見なかったんだな。
[でも作るのは大変でしたでしょ?]
俺の言葉を聞いたエメリッヒは後ろ頭を少しかきながら[大丈夫だよ!ジュエルちゃんが帰り道に辛いことにならないようにするのはダグラスさんの弟子である僕の仕事でもあるからね!!]
と照れた様子で柔らかく笑った。
おっさん、感動した!!なにかエメリッヒにお礼をしたいが俺は何も持って無いな~。と考えていると
[エメリッヒさん、少し屈んで貰えますか?]
うん?考えてる最中で喋っていない筈なのに勝手に俺が喋り始めて体が動いてる...
一体俺に何が起きてんだ?
[うん?どうかしたの?]
エメリッヒが不思議そうな顔をし、俺に返事をしながら屈む。
すると、俺の体がエメリッヒの左頬に引っ張られるように口付けをした。
はあぁぁぁーーーーーーー!?なんじゃこりゃーーーーー!?!?!?
[.....ジュエルちゃん...ありがとう。]
エメリッヒが突然の俺の行動に驚いた後、左頬をさわりながらいつものようにニコニコ顔に戻っている。
おっ、体の自由が戻った!?うーん、なんだったんだ今の?まあいっか、いや、良くねえよ!!....しかしやっちまった事は仕方ねえか。
今の俺は女の子だしエメリッヒから文句は言われなかったしな。
気にしたら負けだ....帰ったらリーザに相談しよ...。
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