車屋異世界転生記

ライ蔵

文字の大きさ
上 下
53 / 76

三章 銀色の乙女、これからの事を三人で相談する。

しおりを挟む


 きれいに掃除され美しいカーペットが敷かれている廊下をウィリアムさんに案内される。

 [こちらが女性用の浴室でお隣が男性用の浴室でございます。]

 [ありがとうございます、ウィリアムさん!]

 案内してくれたウィリアムさんに三人で礼を言い、女性用の浴室に入ろうとすると慌てた様子のウイリアムさんに止められる。

 [あの、そちらは女性用だと先程説明をさせて貰ったのですが...]

 ウィリアムさんが私の方を見ながらそう言ってきた。

 私は今の自分の格好を確認する。

 うん、男物の服に仮面姿のジャエル使用だ。

 [大丈夫です。一応私も女性なので。]

 私の言葉を聞き少し驚いた顔になるウィリアムさん。

 [私は毎日この方とお風呂を共にしているので本当に大丈夫ですよ?]

 そうシルビアに言われウィリアムさんが頭を下げる。

 [...これは失礼をしました。どうぞお許し下さい。着替えの方は侍女がご用意いたしますのでそれをお召し下さい。]

 [分かりました。何から何までありがとうございます、ウィリアムさん!]

 初老の執事がペコリと頭を下げ、浴室の前から去っていくのを見届ける。

 [さあ、お風呂に入ってさっぱりしましょうか!!]

 [そうだね!!]

 [はい!]

 三人で浴室に入り旅の汗を流した後湯船に浸かる。

 [はあー、立派な浴室ですよね~。湯槽も広いですし!!]

 [うん!!こんなに広いお風呂は公衆浴場以外に入ったこと無いよー!!]

 [なんと言いますか立派すぎて逆に落ち着きませんね...]

 お湯に浸かりながらこれからの事を少し考える。

 [...お風呂から上がったら私達は街で宿屋を探しましょうか。ヴェルディッドさんのご家族にこれ以上の迷惑は掛けられないですからね。]

 [...うん、その方が良いね...。]

 [私もそちらの方が良いと思います。]

 あの様子では今、ヴェルディットさんは家族で大揉めでしょうからね...

 アルネやリーザも居るから明日から借りれる一軒家を探した方が良いでしょうね。

 魔術学園には寮があるらしいのですが流石に動物の持ち込みは無理でしょうから...

 [明日から借りられる家を探しましょう!!]

 私がそう言うと二人は無言で頷いた。

 暫くの間三人でお風呂を楽しんだ後、お風呂から上がることにする。

 脱衣所に私達の着替えらしき服が置いてあります。

 えーと、サイズ的に一番小さいこの服が私の用意された服かな?

 この屋敷の侍女さんが用意してくれたであろう服を見ると白いワンピースでフリルがふんだんに使われたこれぞ女の子と言わんばかりの服がある。

 フリフリの服を手に取りドライヤーの魔導具で私の長い髪を乾かしてくれているシルビアに見せながら尋ねる。

 [...この服、私に似合うと思いますか?]

 手を止めずにシルビアが私が握っている服を見ながら答える。

 [ええ、とてもお似合いになると思いますよ!!]

 ええー!!マジですか!!スカートだとしてももうちょっと控えめな方が好みなんですけどね...

 既に着替えが終わっているルリシスちゃんが私とシルビアのやり取りを聞いた後に苦笑いしながら言う。

 [あはは...ジュエルちゃん、フリフリした服が昔から苦手だもんね。でも私も似合うと思うけどな~。]

 [そうですか...まあ選択肢は無いですしこれを着ましょうかね~。]

 [では気合いを入れてこの服に似合う髪形にしますね!!]

 気合いを入れなくていいですよシルビアさん....

 服を侍女さんが用意してくれていた物に着替え髪形をツインテールに結ってもらった私は鏡に自分の姿を映して眺める。

 鏡に映った自分の姿は白いフリルがよく似合うワンピース姿の少女とも大人の女性とも言えないまさにこれから花を咲かせ始める蕾のような姿だ。

 深いブルーの瞳が自分でも綺麗だと思いますね!

 ....うーん、どうしてこれで醜女なのでしょうね...。

 この世界における美人の基準が分からない。

 [よし!!ではヴェルディットさんと息子さんに御礼をしてから街で今日の宿を探しましょうか!!]

 [うん、そうだね!!]

 [はい!]

 ヴェルディットさんが息子さんに絞られているであろう応接間に戻ることにした。

 応接間の前に着き、ドアの前で待機しているウィリアムさんが私達を見た後少し驚いた様な表情になった後直ぐに普段の表情に戻り、部屋の中へと促される。

 [さあどうぞ、お嬢様方を旦那様達がお待ちです。]

 [ウィリアムさん、ありがとうございます!!]

 [...とてもお美しいですよ、ジュエル様。]

 そう言われ私は苦笑いを浮かべながらウィリアムさんに返す。

 [あはは、....お世辞でもそう言われると嬉しいものですね。]

 そう言うと私以外の三人が微妙な顔をする。

 何故そんな顔をするのでしょうか?

 私が頭を捻っているとウィリアムさんがドアを開き[どうぞ]と言うのでその言葉に従い部屋へと入っていった。


しおりを挟む

処理中です...