車屋異世界転生記

ライ蔵

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三章 銀色の乙女、夜会での目的の食べ物にありつけたそうです。

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 「私、変じゃ無いよね!?」

 頻りにルリシスちゃんがそう尋ねてくる。

 緊張のせいで自分の格好がおかしくないか気になるようですね。

 「全然おかしくなんて無いですよ!!凄い美人さんにしか見えません!!私が男性でしたら確実に結婚を申し込んでますよ!!」

 「...うん。」

 私がそう言っても緊張で何処か上の空の様子の返事が返ってくる。

 「師匠、晩餐会の流れを軽く説明しておきます。会場に着いてからは暫くは自由時間で晩餐会に呼ばれた貴族は大体が談笑しています。料理などが出ているので食事はこの間にしてもらいたい。その後、王族と今回の晩餐会の主役である第二王女が会場に入るので折を見て挨拶。最後にダンスと言う流れです。師匠の歌はおそらく王と第二王女への挨拶の時になる筈です、準備をよろしくお願いします!」

 「はい!分かりました!!」

 魔導車を運転しながらジョルダーノさんが晩餐会の流れを説明してくれました。

 王族への挨拶と歌以外は基本的に自由な感じっぽいですね。

 私はダンスをする気もないですし。

 「俺が側に着いているから緊張しなくても大丈夫じゃよ。そもそも呼ばれて来てやっているのだから気に入らなければ帰れば良い。お嬢ちゃん達はこの国の貴族ではないのじゃからな!!」

 「概ねこのおっさんの言っている通りです。」

 私達、三人はヴェルディットさんとジョルダーノさんの言葉に頷く。

 何も問題は無さそうですね。
 ただ問題があるとすれば私がヒールの高い靴に馴れていないと言うことでしょうか。

 歩きづらく足を捻りそうです...。

 「そろそろ到着するからジュエルお嬢...いや、クラリスはこのベールを着けておくように。やはり素顔だと目立つからのう。」

 黒いベールをヴェルディットさんから手渡されるが正直つけたくは無いですね...、料理が食べづらそうです。

 「私もベールをしていた方が良いと思うよジュエルちゃん!」

 「同じくその様に思います。」

 ルリシスちゃん、シルビアからつけた方が良いと言われ仕方が無しにベールを着けることにする。

 大きな城門の前で門番の兵士に一旦止められるがジョルダーノさんの顔を見た瞬間に顔パスです。

 まあ、魔導車の時点で顔パスなのでしょうが一応の確認でしょうね。

 大きな正面玄関に到着し、助手席に座っていたウィリアムさんが先に降りドアを丁寧に開くと順に魔導車から降りていく。

 女性達が降りる番になるとシルビアはジョルダーノさん、ルリシスちゃんはヴァルザスさん、私はヴェルディットさん、それぞれ手を取り車からゆっくりと降りる。

 流石は皆さん貴族ですよね。

 普段貴族に見えないヴェルディットさんもこう言う場では貴族の出を伺える様な滑らかな仕草だ。

 「では私は魔導車を移動させてくる。直ぐに戻って来るので待っていなさい。」

 ジョルダーノさんが自ら馬車待機場に魔導車を移動させるようだ。

 ウィリアムさんが言うには普段の登城の時にも自ら移動させ、他人に魔導車を触らせ無いらしい。

 見事なクルマバカに育ってますね、ジョルダーノさん。

 ジョルダーノさんが戻って来るとヴェルディットさんが皆に言う。

 「よし!!城に攻め込むとするかの!!野郎共、突撃じゃー!!!」

 ヴェルディットさんが右腕を高々と突き上げお城へと入って行く。

 「じじい...マジかよ...」「あのおっさんは本当に...」「旦那様、その様な物騒な事は...」

 ヴェルディットさんの行動にコルトレツィス家の面々が頭を抱えている中、私達は苦笑いしながらお城の中へと入るのだった。



 広く大きな廊下を歩いていく。

 流石は王様が住むお城ですね。

 きらびやかでいて派手すぎず、かつ古く時代を感じさせる重厚な調度品がバランス良く配置されている。

 ジョルダーノさんの屋敷で幾らかは馴れましたがやはり凄いですね!!

 キョロキョロと辺りを見渡しながら歩いていると前を先導していた男性陣が大きなドアの側に居る衛兵の前で止まる。

 「コルトレツィス卿御一行様ですね。皆さま方どうぞおくつろぎを。」

 ドアが開き部屋の中へと案内され足を踏み入れると、そこには結構な収容人数のありそうな大きな部屋だった。

 既にかなりの人が到着していたらしく部屋の中央の方にかなりの人数が集まり思い思いの者達と話に花を咲かせているようだ。

 「かなりの人数がおるのう。俺達は料理の近くの端の方にでも陣取るとするかの!」

 ヴェルディットさんが人気の無い料理を並べてある机の近くに行き、ソファーに腰を掛ける。

 「皆もこっちに来い!!ここを俺達で占領するぞ!!」

 料理の近くで陣取ると料理を食べる人の邪魔になら無いかと見回したがどうやら他の料理の場所も人気がなくガラガラだ。

 「ヴェルディットさん、他の方はあまり料理を口にはしないのですか?」

 「うむ、大体こう言う晩餐会等はあまり食べない奴が多いな。他の目的で忙しいじゃろうし。」

 他の目的?うーん、接待に忙しいのでしょうか??前世でも普通の飲み会しか経験していないので貴族の飲み会は良くわかりませんね。

 「俺は王の所に報告があるから少しこの場から離れるぞ。おっさん、ヴァルザス、後は任せたぞ!!お嬢さん方は楽しんで下さい。」

 ジョルダーノさんが会場から去って行くのを皆で見送り皆で料理の前に居座る。

 「さあ、料理を食うぞい!!」

 「「「はい!!!」」」

 料理をウィリアムさんが料理の配膳係から受け取り私達に配ってくれ皆で食べ始める。

 様々な揚げ物がお皿の上にあり、まずサツマイモっぽい芋を揚げた物を食べた。

 うん、美味しい!!!

 美味しいものを食べると幸せな気持ちになりますね!!



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