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愛谷光晴視点
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アインに恋人ができた。幼なじみで親友なら喜ぶべきなのは頭では分かってる。けど俺は生憎と、そこまで割りきれているほど大人では無いんだよ。
なんでだよ。なんで俺は
アインに告白しなかったんだよ。なんで俺じゃなかったんだよって心はぐちゃぐちゃで。楽しそうに羅漢って名前の恋人の話をするアインを見てて。悲しくなってくる。顔では祝福してアインは幸せだなって作るけど。
「ねえ、光晴さ。なんか様子可笑しくない?元気無いし。」
普段自分に向けられる好意だとかに鈍いくせして、辛そうにしてるのには敏感だよな。だから好きだった。好きだったのに。
「何でもないよ。」
そう、何でもないんだ。何も。なんでアインだったんだろ。
『そうだった……。』
アインの事を何でも知ってたつもりでいたんだ。アインの母親の事だって。全部。知ってたかぶりしてただけ。だけど好きなのは本当だったんだよ。
俺とアインの出会いは今思えば最悪なものだった。小学校の入学式で見付けた流れる綺麗な金髪、瑠璃色の瞳に真っ白な肌。女子よりも綺麗な顔してたアインは男子と分かったらついつい言ってしまった。
「え、女子じゃねえの?」
「……。お前、すげえ失礼なヤツ。」
何時オレが女子だって言ったんだよ。って軽蔑した目を向けられてアインから無視されたのが始まりだった。けど好きなアニメだとか漫画が同じなだけで仲良しになったんだった。しかも家が近所で何時も一緒に遊んでた。だからアインの母親がどんなヤツなのかも直ぐ分かった。
「アイツは理想通りの子供に育たないオレを子供と認めて無いんだよ。」
アインは母親を何時もアイツと呼んでた。それこそ小学生の時から。なら
「宿題とか俺の家でやろう!」
「いいの?」
「良いから良いから!俺とアインは友達だろ!」
小学生の頃までは。親友だった。そう思ってた。アインが辛かったら一緒にいようって子供ながらに支えようとしたくらいには。
なのに、何時からだったのかは。今となっては思い出せない。アインが好きだと気持ちが変わったのは。きっかけは
「親父とアイツが離婚したよ。」
そう言ったアインは。儚げに見えた。それで
「オレ、なんで産まれたんだろ。」
なんでこの顔だったのかなって初めて言った弱音を聞いて。俺には何が出来る?そう思ったけど、結局何も出来なかった。なのにアインは
「光晴がいてくれて良かった。」
そうだった。俺がいてくれて良かったって言ってくれたから。それだけじゃない。アインのお人好しなところ、優しいところに、見返りを求めないでいるところに俺は惹かれてた。好きだって気付いたけれど。俺もアインも男で、そういう風に見てはくれないって分かってたから。だから俺は
想うだけにしておこうと決めたんだ。アインは何時も俺を一番に頼ってくれる。それだけで良いじゃないかって。それで満足してた。中学卒業して、高校に入学しても。何時もアインの一番近くに、側にいたのは俺だった。友達はたくさんいたけど親友なのは俺だけだった。俺もアインも彼女も作らないでいて油断してたと思う。高校3年の春、アインから親父さんが再婚すると聞いて。何もかもが壊れたのは。
再婚してから間もない時にアインが恋人を作った。しかもサラリーマンと。
正直なんで、どうしてって思った。どうして俺じゃないのって。ずっと隣にいたのは俺じゃないかって。そう考える度に心はぐちゃぐちゃになって、見たこと無いアインの恋人に嫉妬する。
女ならまだ良い。そうだ、付き合ってるのが女なら。まだ納得できる。そう思ってた。だけどその淡い期待も打ち砕かれた。
「……………………。」
参考書を買うために書店に行こうと駅前にいて。それで見たのは幸せそうに笑うアインと。年上の男だった。アインは俺が見てるとも気付いてないみたいでソイツに夢中だった。
「あんな、顔…………。」
ずっといたのに見たこと無かった。ああ、そうか。そうだったのか。最初から俺はアインの親友以上にも以下にもなれなかったんだ。こんな事にも気付かないなんて。そして気付かされた。入り込む隙なんてどこにも無いって。相手の男はさりげなく車道歩いてたりして、年上の男の余裕を感じさせる。
それに本当に心から愛しいって目をアインに向けてる。まるで。夫婦にすら見えてきた。アインも一緒にいられて幸せってかんじで笑って、楽しそうにお喋りしてた。
今になって後悔した。どうして俺は。アインに告白しなかったんだろ。本当はあんな風に隣で歩いてデートしたりしたかったのに。なのに、なんで。
しないで後悔するよりして後悔した方がずっと良かった。
それなら。俺は今さら遅いけど。アインからどんな答えを言われても。告白しよう。
そう思ったら早かった。放課後の屋上でアインに
「俺、アインが好きだ。アインの親友としても。1人の人としても誰より特別になりたいんだ。」
「え……。…………。ごめん。」
オレ、羅漢が好きだからって答えられた。羅漢って。それ、アインの義理の兄じゃないか!どうして、どうしてだよ!!
「なんで、なんでだよっ!!なんで再婚相手の連れ子が好きなんだよ!俺が一番近くにいたのに!なのにっ!」
「違う!羅漢は……。羅漢は。」
オレの夫だったんだよ!って叫んだアイン。夫って、どういう事だよ。
「夫って、そんなわけ。」
「あるんだよ!オレだって再会してやっと思い出したんだ!オレと羅漢は前世は同性婚した夫婦だった!ずっと一緒に幸せになろうって約束したのに!なのにっ!オレは病気になって先に死んだんだ!死ぬ時に約束したんだよ!また生まれ変わったら今度こそ幸せになろうって!なんであんな大切な約束も全部忘れてたんだよって。光晴、確かにオレとお前の付き合いは長いけど。光晴とは親友以上には思えない。」
ああ、そうか。そうだったのか。俺は本当にダメだったんだな。あの日、アインとデートしてて夫婦に見えたのはそういう事だったんだな。立ち入る隙なんて無かったのも。
「そっか。バッサリふってくれてありがとな。」
これでやっとアインを諦められる。俺はどこかで諦めないといけなかった。じゃなきゃ、何時までも。アインを祝福出来なかったから。
それにしても。初恋は叶わないってよく言ったもんだよな。だけど、俺はどうやらシツコイみたいだから。
釘指しとしてアインを悲しませて泣かせたら略奪してやるからって言っておいた。そしたら。
「言ってろ。一生無理だな。」
「その言葉、肝に銘じておけよ?」
今ではアインのノロケ話を聞きつつも相談にも乗ってる。それからアインとアイツとの秘密はアインの為に内緒にしてる。アインが幸せでいられるなら秘密くらい守っておくのが親友だもんな。
なんでだよ。なんで俺は
アインに告白しなかったんだよ。なんで俺じゃなかったんだよって心はぐちゃぐちゃで。楽しそうに羅漢って名前の恋人の話をするアインを見てて。悲しくなってくる。顔では祝福してアインは幸せだなって作るけど。
「ねえ、光晴さ。なんか様子可笑しくない?元気無いし。」
普段自分に向けられる好意だとかに鈍いくせして、辛そうにしてるのには敏感だよな。だから好きだった。好きだったのに。
「何でもないよ。」
そう、何でもないんだ。何も。なんでアインだったんだろ。
『そうだった……。』
アインの事を何でも知ってたつもりでいたんだ。アインの母親の事だって。全部。知ってたかぶりしてただけ。だけど好きなのは本当だったんだよ。
俺とアインの出会いは今思えば最悪なものだった。小学校の入学式で見付けた流れる綺麗な金髪、瑠璃色の瞳に真っ白な肌。女子よりも綺麗な顔してたアインは男子と分かったらついつい言ってしまった。
「え、女子じゃねえの?」
「……。お前、すげえ失礼なヤツ。」
何時オレが女子だって言ったんだよ。って軽蔑した目を向けられてアインから無視されたのが始まりだった。けど好きなアニメだとか漫画が同じなだけで仲良しになったんだった。しかも家が近所で何時も一緒に遊んでた。だからアインの母親がどんなヤツなのかも直ぐ分かった。
「アイツは理想通りの子供に育たないオレを子供と認めて無いんだよ。」
アインは母親を何時もアイツと呼んでた。それこそ小学生の時から。なら
「宿題とか俺の家でやろう!」
「いいの?」
「良いから良いから!俺とアインは友達だろ!」
小学生の頃までは。親友だった。そう思ってた。アインが辛かったら一緒にいようって子供ながらに支えようとしたくらいには。
なのに、何時からだったのかは。今となっては思い出せない。アインが好きだと気持ちが変わったのは。きっかけは
「親父とアイツが離婚したよ。」
そう言ったアインは。儚げに見えた。それで
「オレ、なんで産まれたんだろ。」
なんでこの顔だったのかなって初めて言った弱音を聞いて。俺には何が出来る?そう思ったけど、結局何も出来なかった。なのにアインは
「光晴がいてくれて良かった。」
そうだった。俺がいてくれて良かったって言ってくれたから。それだけじゃない。アインのお人好しなところ、優しいところに、見返りを求めないでいるところに俺は惹かれてた。好きだって気付いたけれど。俺もアインも男で、そういう風に見てはくれないって分かってたから。だから俺は
想うだけにしておこうと決めたんだ。アインは何時も俺を一番に頼ってくれる。それだけで良いじゃないかって。それで満足してた。中学卒業して、高校に入学しても。何時もアインの一番近くに、側にいたのは俺だった。友達はたくさんいたけど親友なのは俺だけだった。俺もアインも彼女も作らないでいて油断してたと思う。高校3年の春、アインから親父さんが再婚すると聞いて。何もかもが壊れたのは。
再婚してから間もない時にアインが恋人を作った。しかもサラリーマンと。
正直なんで、どうしてって思った。どうして俺じゃないのって。ずっと隣にいたのは俺じゃないかって。そう考える度に心はぐちゃぐちゃになって、見たこと無いアインの恋人に嫉妬する。
女ならまだ良い。そうだ、付き合ってるのが女なら。まだ納得できる。そう思ってた。だけどその淡い期待も打ち砕かれた。
「……………………。」
参考書を買うために書店に行こうと駅前にいて。それで見たのは幸せそうに笑うアインと。年上の男だった。アインは俺が見てるとも気付いてないみたいでソイツに夢中だった。
「あんな、顔…………。」
ずっといたのに見たこと無かった。ああ、そうか。そうだったのか。最初から俺はアインの親友以上にも以下にもなれなかったんだ。こんな事にも気付かないなんて。そして気付かされた。入り込む隙なんてどこにも無いって。相手の男はさりげなく車道歩いてたりして、年上の男の余裕を感じさせる。
それに本当に心から愛しいって目をアインに向けてる。まるで。夫婦にすら見えてきた。アインも一緒にいられて幸せってかんじで笑って、楽しそうにお喋りしてた。
今になって後悔した。どうして俺は。アインに告白しなかったんだろ。本当はあんな風に隣で歩いてデートしたりしたかったのに。なのに、なんで。
しないで後悔するよりして後悔した方がずっと良かった。
それなら。俺は今さら遅いけど。アインからどんな答えを言われても。告白しよう。
そう思ったら早かった。放課後の屋上でアインに
「俺、アインが好きだ。アインの親友としても。1人の人としても誰より特別になりたいんだ。」
「え……。…………。ごめん。」
オレ、羅漢が好きだからって答えられた。羅漢って。それ、アインの義理の兄じゃないか!どうして、どうしてだよ!!
「なんで、なんでだよっ!!なんで再婚相手の連れ子が好きなんだよ!俺が一番近くにいたのに!なのにっ!」
「違う!羅漢は……。羅漢は。」
オレの夫だったんだよ!って叫んだアイン。夫って、どういう事だよ。
「夫って、そんなわけ。」
「あるんだよ!オレだって再会してやっと思い出したんだ!オレと羅漢は前世は同性婚した夫婦だった!ずっと一緒に幸せになろうって約束したのに!なのにっ!オレは病気になって先に死んだんだ!死ぬ時に約束したんだよ!また生まれ変わったら今度こそ幸せになろうって!なんであんな大切な約束も全部忘れてたんだよって。光晴、確かにオレとお前の付き合いは長いけど。光晴とは親友以上には思えない。」
ああ、そうか。そうだったのか。俺は本当にダメだったんだな。あの日、アインとデートしてて夫婦に見えたのはそういう事だったんだな。立ち入る隙なんて無かったのも。
「そっか。バッサリふってくれてありがとな。」
これでやっとアインを諦められる。俺はどこかで諦めないといけなかった。じゃなきゃ、何時までも。アインを祝福出来なかったから。
それにしても。初恋は叶わないってよく言ったもんだよな。だけど、俺はどうやらシツコイみたいだから。
釘指しとしてアインを悲しませて泣かせたら略奪してやるからって言っておいた。そしたら。
「言ってろ。一生無理だな。」
「その言葉、肝に銘じておけよ?」
今ではアインのノロケ話を聞きつつも相談にも乗ってる。それからアインとアイツとの秘密はアインの為に内緒にしてる。アインが幸せでいられるなら秘密くらい守っておくのが親友だもんな。
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