追放されし『異端者』、レオンの異世界革命奇譚

露月ノボル

文字の大きさ
56 / 95
【第二章】私の、悪夢

第56話 フェンローゼ家

しおりを挟む
 翌日、市庁舎の方から職員の人がわざわざ泊っている私達の宿まできて、「婚姻届けと、シェラさんがこちらに引っ越された時の異動届が見つかったので来てください、と呼ばれて、私とフェブリカ先生は市庁舎へと向かった。

 市庁舎までの道は賑わっていて笑顔に溢れていた。親子連れの子供達のやんちゃに、母と父が微笑みを浮かばせている。

 私はこれが父が、パパが護ったものだ、という誇りと寂しさに挟まれて少し早歩きし、先生はそれに歩調を合わせて察したようだった。

 私達は市庁舎につき、受付のかたに挨拶をすると、お待ちしていました、と「受付番号38番」の札を手渡した。3階に上がると1人は昨日の衛視のかたで、もう一人は初めて会う衛視のかただったが、多分お話を聞いたのか、2人とも最敬礼をして、「どうぞ!」と通してくれて、頭を下げて護民官室へと行く。

 コンコンコン。「ああ、どうぞ!」と声がしたので扉を開けると、副官のロンドさんが「お二人でしたか!」とデスクから慌てるように立ち上がる。

 先生が、「お時間を取って頂いてすみません、ロンドさん」と挨拶をして、ロンドさんはソファに座り、「いえ、仕事も…その、リンドル村の事を、多少見通しが付いたので…って、気付きませんで、お二人ともソファへどうぞ!」と私達2人も座る。

「それでシェラさんについての書類が見つかった、とお聴きしましたが…?お手間が相当かかったでしょう」

 と先生は、先生は悪くなく、私が悪いのに、そう言い、ロンドさんは答えた。

「いえ、インデックス化っていうんですか、全部そうするようにしている途中で、インデックス済みの書類なので手間もなく見つかりました」

 と笑いながらロンドさんは書類をテーブルに乗せた。

「これがその、婚姻届とその婚姻証明書、異動届です」

 そういわれて、私達2人はその書類を見ると、「ロイ・フィングル」、父の名だ、絶対に何があっても忘れない、父の名だ。そして…「シェラ・ルウ・フェンローゼ」という名前が書かれていて、住所も書いてある。ルピシエ州…王都に近い州だったはずだ。

「これは……シェラさん、貴族だったとは聴いていたけど、フェンローゼ公爵家とは…」

 先生は驚いた顔をし、「私も本当に驚きましたよ」とロイドさんが相槌をうつ。

「フェブリカ先生とロンドさんは、その、フェンローゼ家というのを御存じなのですか?」

 そう私が尋ねると、2人は顔を見合わせて、少し考えたかのような後、先生が言った。

「うーん、そうだねぇ、僕ぁ詳しくなくてゴシップで聴いただけだけど、いわゆる王国の三本柱のひとり、と言えばいいのかな?領内にファース経済を支える商業都市や金鉱を始めとした資源を持ち、大蔵大臣や商工大臣は当然、首席宰相も何人も排出してる。今の首席宰相閣下もフェンローゼ家で、名門だよ」

 そうフェブリカ先生は、冗談っぽい大げさなリアクションで「こりゃぁ参ったな」的に手のひらを頭に当てた。

「ただ、ロイ護民官との婚姻には、必須でありませんが親族の同意は、夫側、つまりロイさんの父親のしかありません。本当に、大恋愛の上の駆け落ちだったんでしょうね…」

 そう、ロンドさんは言い、2人とも、そして私も、しばらく声が発せず思いにふけった。

 父を本当に愛してくれて、父も母を本当に愛していて……どうしてその生活が、あんな事に…あんな救いのない、神などいない残酷なことに…!?

 私は思わず、ダン!と机を拳で叩いてしまった。2人ともびっくりし、先生は「大丈夫ですよ」とロンドさんの方を見ないまま、優しい穏やかな声で言った。

「また、思い出してしまったんだね…。そう、思い出して怒ったり泣きわめいたりしても、それは罪じゃない。ただ、絶対にそれで誰かを巻き込んじゃいけないよ?リィズ君も含めてね」
 翌日、市庁舎の方から職員の人がわざわざ泊っている私達の宿まできて、「婚姻届けと、シェラさんがこちらに引っ越された時の異動届が見つかったので来てください、と呼ばれて、私とフェブリカ先生は市庁舎へと向かった。

 市庁舎までの道は賑わっていて笑顔に溢れていた。親子連れの子供達のやんちゃに、母と父が微笑みを浮かばせている。

 私はこれが父が、パパが護ったものだ、という誇りと寂しさに挟まれて少し早歩きし、先生はそれに歩調を合わせて察したようだった。

 私達は市庁舎につき、受付のかたに挨拶をすると、お待ちしていました、と「受付番号38番」の札を手渡した。3階に上がると1人は昨日の衛視のかたで、もう一人は初めて会う衛視のかただったが、多分お話を聞いたのか、2人とも最敬礼をして、「どうぞ!」と通してくれて、頭を下げて護民官室へと行く。

 コンコンコン。「ああ、どうぞ!」と声がしたので扉を開けると、副官のロンドさんが「お二人でしたか!」とデスクから慌てるように立ち上がる。

 先生が、「お時間を取って頂いてすみません、ロンドさん」と挨拶をして、ロンドさんはソファに座り、「いえ、仕事も…その、リンドル村の事を、多少見通しが付いたので…って、気付きませんで、お二人ともソファへどうぞ!」と私達2人も座る。

「それでシェラさんについての書類が見つかった、とお聴きしましたが…?お手間が相当かかったでしょう」

 と先生は、先生は悪くなく、私が悪いのに、そう言い、ロンドさんは答えた。

「いえ、インデックス化っていうんですか、全部そうするようにしている途中で、インデックス済みの書類なので手間もなく見つかりました」

 と笑いながらロンドさんは書類をテーブルに乗せた。

「これがその、婚姻届とその婚姻証明書、異動届です」

 そういわれて、私達2人はその書類を見ると、「ロイ・フィングル」、父の名だ、絶対に何があっても忘れない、父の名だ。そして…「シェラ・ルウ・フェンローゼ」という名前が書かれていて、住所も書いてある。ルピシエ州…王都に近い州だったはずだ。

「これは……シェラさん、貴族だったとは聴いていたけど、フェンローゼ公爵家とは…」

 先生は驚いた顔をし、「私も本当に驚きましたよ」とロイドさんが相槌をうつ。

「フェブリカ先生とロンドさんは、その、フェンローゼ家というのを御存じなのですか?」

 そう私が尋ねると、2人は顔を見合わせて、少し考えたかのような後、先生が言った。

「うーん、そうだねぇ、僕ぁ詳しくなくてゴシップで聴いただけだけど、いわゆる王国の三本柱のひとり、と言えばいいのかな?領内にファース経済を支える商業都市や金鉱を始めとした資源を持ち、財務卿や商工卿は当然、首席宰相も何人も排出してる。今の次席宰相もフェンローゼ家で、名門だよ」

 そうフェブリカ先生は、冗談っぽい大げさなリアクションで「こりゃぁ参ったな」的に手のひらを頭に当てた。

「ただ、ロイ護民官との婚姻には、必須でありませんが親族の同意は、夫側、つまりロイさんの父親のしかありません。本当に、大恋愛の上の駆け落ちだったんでしょうね…」

 そう、ロンドさんは言い、2人とも、そして私も、しばらく声が発せず思いにふけった。

 父を本当に愛してくれて、父も母を本当に愛していて……どうしてその生活が、あんな事に…あんな救いのない、神などいない残酷なことに…!?

 私は思わず、ダン!と机を拳で叩いてしまった。2人ともびっくりし、先生は「大丈夫ですよ」とロンドさんの方を見ないまま、優しい穏やかな声で言った。

「また、思い出してしまったんだね…。そう、思い出して怒ったり泣きわめいたりしても、それは罪じゃない。ただ、絶対にそれで誰かを巻き込んじゃいけないよ?リィズ君も含めてね」

 私は急に冷静になってきた。リィズ………何をしているだろう…。もう、来ないと言っていた。私がそういったのだから、来るのを願うなんて、そんな虫の良い事はできないだろう、冷静になるべきだ、そして謝って仲直りを…。

 12神柱…こんな悲劇を見落とすなんて、リィズが降り立った段階で分かっただろうに、何故……!!落ち着こう、待った、今はそういうことを考えるべきじゃ……!!

 私はまた、思考の迷宮に入り、同じところをグルグルしては騒ぎ散らして泣き叫ぶ、そういう事を、先生やロンドさんの前でしたくない、と私は自分の腕を握って強くひねり、痛みで思考をそう流れないように落ち着かせた。

「レニーナ君、大丈夫かい…?」

 と先生が尋ね、ロンドさんは下を向きながらも、気遣ってくれた。

「本当に、お父さんとお母さんの件、すまなかった。この街は、ロイさんとシェラさんに、二度助けられたんだ」と顔を上げ遠い目をしている。

 私は、「もう大丈夫です、すみませんでした、フェブリカ先生、ロンドさん」と頭を下げた。

 二人は頭を上げるよういい、先生は言った。「問題はこれからどうするか、だね」と。

「フェンローゼ公爵家はね、王都に近い、商業が盛んなローゼクォート市とその周辺の市や町村が多数ある、ルピシエ州を治めている家なんだ。ここからローゼクォート市間では…乗合馬車で、5,6日かなぁ…?」

 とフェブリカ先生は言い、「乗合馬車の旅は、楽しくも苦しい、本当5,6日を昼は馬車の中で過ごして、夜には野営してテントを張って寝る、まあレニーナ君が大丈夫か心配だが…」と先生が呟いていると、はロンドさんがふと思い出した顔をしてテーブルに身を乗り出して言った。

「実はロイ護民官のための馬車が、市庁舎にはあります。ぜひそれを使ってください、多少は快適なはずです。御者も手配できますが、フェブリカ先生は馬車を運転した経験は…?」

 と尋ねるロンドさんに、フェブリカ先生は少し照れ笑いしながら頭をかきながら言った。

「僕ぁ貧乏学生次代に友達と旅行するのに、共同で買った馬車を乗り回してましたよ。今考えると、費用は5等分にしたはずなのに、御者をやる確率は5分の1どころか毎回私がしていましたねぇ」と遠い目をして、「御者、できますよ。でもお借りしていいんですか?」と聴く。

 ロンドさんは笑いながら言った。

「確かに護民官の備品になるのですが…言いづらい事ですが、私が今回、法律上繰り上がって護民官になっていますから、私の権限で、どうかお使いください」

 そう頷いて言い、フェブリカ先生は立ち上がり、深々と頭を下げて、「助かります。ありがとうございます」というのに私も合わせ、「ありがとうございます、ロンドさん!」と言った。

--------------
※よろしければ作品のお気に入りでご評価して頂けましたらとても嬉しいです!励みにすごくなります!よろしくお願いします!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

八百万の神から祝福をもらいました!この力で異世界を生きていきます!

トリガー
ファンタジー
神様のミスで死んでしまったリオ。 女神から代償に八百万の神の祝福をもらった。 転生した異世界で無双する。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

処理中です...