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3章 合流

23話

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 ――「とまぁ、こんな感じですね」

「……いや、有難う。……しかし、大変だったな……、」

「ふふっ、それでズボンがのうなったんやなぁ、ふふっ」

「あざっす、……そんなに笑わんといて下さいよ」

「かんにんなぁ、ふふっ」

「……ゴブリンに狼か、厄介そうだな」

「うちはその漆黒とやらが見てみたいなぁ」

「分かりました」

 突然現れた球体に、凜がギョッとする。

「……確かに魔法には見えへんなぁ」

「……話を聞く限り、私の能力と似てますね」

「え?」

 まさか、特別ではなかったのか?東条は佐藤の言葉に驚く。

「いや、能力の効果自体は全く違うんですが、何かこう、概念的なものが」

「詳しく聞かせて貰っていいですか?」


 ――「……強いですね。それに魔法も使えるのか、……羨ましい」

 一通り自分達の境遇を話し終わり、次いで彼は屋上の一角に居を構えていいか聞く。

 正直東条自身は、食料も自らで調達する気の上、来たくて来たわけではない。
 何処に誰が住もうが関係ないと感じているのだが、もめるのも嫌なので体裁的に振る舞っていた。

 しかしそんな彼に、

「あの、そのことなんですが、此方で寝床もプライベートも御用意するので、木から降りて頂くことはできないでしょうか?」

 佐藤が低姿勢に頼み込んだ。

「……なぜです?」

「ここに来たということは、ここにいた人達も食べてるんですよね」

「確かに、新しい服が沢山張り付いてたんで、そうなりますね」

「あの木々は仲間達の墓でもあるんです。せめて私達の元にあるまでは、大事に扱ってあげたいんです」

「……あぁ、……なるほど」

 東条の目が力なく細まり、本心から謳っているのだろう佐藤を見据える。

「今まで大変な思いを共に過ごしてきた、大事な住居だとは思いますが、どうか「断ります」……」

 鋭い一言が空気を凍らす。四人の視線が東条に向いた。

「……佐藤さんの言い分も分かります。
 けど、俺があの木を選んだのは、姿を隠せて、且つ快適に過ごせるからです。

 別にそんな思い入れはありませんし、あの木を越える良物件があるならすぐにでも移ります。
 ですが今や四方を木々に囲まれて、防御もプライベートもいっそう固くなりました。そちらにあれ以上を用意することはできないと思います。

 勝手で申し訳ないですが、俺は情より自分の命を取ります。……すみません」

 東条は申し訳なさそうに頭を下げた。

「い、いえ、勝手を言ったのは私です。こちらこそすみませんでした」

 一瞬剣呑な雰囲気を見せたかに思えた東条だが、自分の意見をしっかり持っているだけか、と三人は安心する。

(……俺ってこんな頑固だったか?)

 対する東条も机を見ながら一息つく。

 何はともあれ穏便に話も終わり、今後手伝って欲しい時は呼んでくれと笑顔で伝え、東条はその場を去った。



 ――帰り道、自分を見る視線に気づかな振りをしながら、東条は溜息を零す。

(…………めんどくせぇ)

 ドストライクな美女も、善を押し付けてくる優男も、それに合わせる自分も、全てが面倒だ。

 彼は再び一人の時間を求め、林の中へ入っていった。
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