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3章
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しおりを挟むサンショウウオは焦っていた。
このままでは全員食われてしまう。
サンショウウオは嘆いていた。
自分達の運命を。
元からこの周辺に沢山の巣を持っていたサンショウウオ達は、突然現れたザリガニ軍団に襲撃され、瞬く間にその数を減らしてしまった。
同じ場所をテリトリーにしたのが運の尽き。
最早これまでかと目を瞑った、
その時であった。
爆音が響くと同時にザリガニ集合地帯のど真ん中が吹き飛び、赤い殻の雨が降った。
「ヒュ~」
「汚ねー花火だ」
ロケットランチャーを構え、仁王立ちするノエルがザリガニ共を見下す。
その隣に並ぶ、自分の背丈程の長さを誇る、折り畳み式アンチマテリアルライフルを担ぐ東条。
なんと二人は、藜一派から自分の好みの武器を数個貰っていたのだ。
存分に暴れられる環境、殺しても湧いてきて、且つ適度に弱いモンスター。
二人がどれだけこの機会を待ち望んでいたかは、その無邪気な笑みが示している。
百はいるだろうザリガニ共の、黒い目が一斉に此方を向く。
次の弾を装填するノエルが、ニヤリと笑った。
「勝負」
「乗った!」
開始の合図にジャンパーを脱ぎ捨て、東条が駆ける。
銃を持つ右手を武装、ロケランが着弾した位置に飛び降り、目の前のザリガニの口に銃口を突き刺した。
瞬間、腹の底に響く様な轟音が鳴り、ザリガニが縦に爆散する。
数千m先の敵をも仕留める銃弾がその程度で止まるわけもなく、直線状にいる数十匹の命を纏めて刈り取った。
揺れる空気に、飛び出る薬莢、本来片手で扱えるはずもない兵器を支配している感覚に、
「んぎもぢぃぃぃぃいいいいいいいッ!!」
東条は絶頂した。
「あはははははははっ!!」
連続する爆殺音と、音を越える銃弾が奏でる死の戦慄。
宛ら二人は血に塗れた奏者。
観客は飛び散る肉片である。
五発を撃ち終えた東条は、一度退避してポケットから自分の手よりも大きい弾を取り出し、一つずつマガジンに装填していく。
「セミオートなのは良いんけど、五発ってのがなー。そっちあと何発残ってる!?」
「四発ー」
叫ぶノエルの声が爆音にかき消される。
彼女の弾数も残り僅か、速めに数を稼いでおこう。
東条は再びザリガニの海に身を投じた。
――ロケットランチャーの弾を使い切ってしまったノエルは、その余韻と焦げ臭い香りを存分に堪能し、ポケットに手を突っ込む。
そうして出した彼女の手が握っていたのは、鉄の拳。メリケンサック。
ノエルは飛び降り、一匹のザリガニと向き合う。
「シュっシュっ」
「カチカチカチカチ」
彼女は顔をガードしながら、素人染みたサイドステップでザリガニの鋏を躱していく。
大振りを潜り、懐に入ったら最後、
「シュッ」
振り抜かれた右ストレートが、ザリガニの頭を爆砕した。
フォームは雑、技術は皆無、ボクシングのボの字も知らない、そんな彼女が放つ拳の威力は、正に一撃必殺、鎧袖一触。
左から襲う鋏を前傾で躱し、顔面を爆砕。
勢いそのまま右から襲う鋏の内側にくるりと潜り込み、裏拳で顔面を爆砕。
上から叩きつけられる鋏より先に懐に入り、顔面を爆砕。
後ろから足元を薙ぐ様に振るわれた鋏を後ろ向きに跳んで躱し、空中で身体を捻り顔面を爆砕。
左右同時に突き出される鋏を、同じ方向に回転してやり過ごす。
のに合わせて伸ばされた第一脚を引っ張り、飛んできた二体を纏めて地面に叩き落とし、顔面を爆砕。
この間僅か三秒。
全方位から攻撃しようが意味はない。
彼女に害成す悉くの顔面が弾け飛んでいく。
爆砕の快感を知ったノエルは、青い返り血を盛大に浴びながら、嬉々として拳殺の限りを尽くした。
遠くで快進撃を続けるノエルを見て、東条は弾切れのライフルを折り畳む。
「どしよ……あ、これちょっと持っててくれる?」
「ヌムヌム」「ムヌィ」「ムニィ」
二足で立つ彼等にライフルを預けると、親切に全員で持ってくれた。子供達は手が届いていない。可愛い。
「うしっ」
大丈夫そうだと確認した東条は、腰に下げた二刀のマチェットを引き抜き、突貫。
「ラァッ!!――」
彼の刃に触れたザリガニは、切り裂かれ、砕かれ、潰され、吹き飛ばされる。
彼が振るう武器は鈍器なのか利器なのか、力任せに暴れるそれが、しかし最後に運ぶのは等しく死。
「アひゃひゃひゃひゃッ」
イカレた人間に刃物を持たせてはいけない。
その教訓を、東条は見事に体現していた。
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