184 / 218
3章
18
しおりを挟む――談笑しながら食事を終えた三人。
そろそろ帰ると言う朧を、二人はベッドに寝っ転がりながら見送っていた。
「じゃあ帰ります」
「ん」
「気をつけてなー」
お互いに淡白な挨拶を交わす。
朧がさっさと窓から飛び降りようとした時、
「……なぁ朧」
「はい?」
東条が彼を呼び止めた。
「俺が暇すぎて死にそうな時なら、鍛錬とか戦闘スタイル、一緒に見てやってもいいぜ」
「……どういう風の吹き回しですか?」
「いやなに、恩を売っとこうと思ってね」
一瞬訝しんだ朧だったが、予てから自分が望んでいた事だ。素直に受け入れることにした。
「じゃあ早速ですけど、俺に足りないものは何ですか?」
「単純に魔力量とスタミナだな。今のままだったら、ミノ三兄弟に殴られたら一撃でミンチにされるな」
「……何をすれば?」
「そーだな。……とりあえずこれから毎日五時間、ぶっ通しで全力の身体強化を維持し続けろ」
「……嘘だろ」
「本当。別にやってもやらなくても自由だけど、まぁできたら連絡頂戴や」
「…………分かった」
意を決したのか、そう言って朧は窓の外に姿を消した。
聞いていたノエルが驚いた様に東条を見る。
「まさ変。熱でもある?」
「ねぇよ」
それも当然。彼女の知る東条は、面倒なことを何よりも嫌う。とりわけモノを教えるなど、最も向いていないことだ。
しかし東条はそんなノエルを気にした風もなく、天井を眺める。
「ただなー、分かっちまったんだよ俺ぁ」
ずっと引っかかっていた、心の中のモヤモヤの正体。
それは、
「あいつ、俺に似てるんだわ」
鏡に映る自分自身であった。
「あれが?まさに?」
「厳密には、ノエルと出会う前の、佐藤さんや葵さん、凛さんに、紗命とも会う前の俺だな」
自分一人で全てを敵にまわしていたあの頃に、朧はそっくりなのだ。
「親近感てやつ?」
「そんなところ。何かほっとけなくなった」
「ふーん」
自分にこんな感情が湧いたことに驚きだが、言ってしまったのだからしょうがない。口に出した以上、きちんと考えてやりたい。
一人で生きると突き進んでいた自分は、かけがえのない仲間を得て、仲間の温かさを知った。
そして最後は、大切な者を失う冷たさを知った。
自分に足りなかったものは明白。
力だ。
力があれば、個だろうが群だろうが、双方に道が開ける。
朧がどちらの道に進むかは分からないが、あの時の自分を鍛えたらどうなるのか、単純に興味がわいてしまったのだ。
楽しみが一つ増えた。
東条は嘗て自分に課した鍛錬を記憶から掘り起こしながら、頬を緩めるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる