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4章
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しおりを挟む――「おまたー」
「ん」
数分もかからず返ってきた東条を確認し、ノエルは立ち上がる。
二人が向かって来るのを確認し、縛られている者達も再び呻き始めた。
しかし、
「ちょっと寒いからこいつらの上着借りたいんだけど」
「……あげたの?」
「いや、ちゃんと後で返してもらうよ」
「……ならいい」
彼等のことなど当然の様に無視し、東条は寒い寒いと肌を摩る。
一度としてまともに取り合おうとしない二人に対して、仮面達も怒りよりも疲れが勝ってしまっていた。
「なんだなんだ。せっかく一緒に選んだのに、って悲しくなったか?お前も可愛いとこあんじゃおいっ!?」
ピエロのコートを引き千切って投げ渡すノエルに、苦言の眼差しを向ける。
彼女はふんすと鼻を鳴らし、ようやく簀巻き達に目を向けた。
「アジトまで案内して」
唐突にカメラを向けられたピエロは一瞬唖然とするが、猿轡を外されたと同時に溜まりに溜まった怒りを爆発させた。
「テメェ等只じゃ済まさねぇ!!殺すッ、ゼッテェ殺してやンゴっ!?――」
「うるさ」
騒々しさに耐え切れず、仮面をぶち抜いて木片を口に突っ込んだノエルは、次いで下っ端にカメラを向ける。
「教えてくれたら、生きたままモンスターに食わせるのはやめたげる。早い者勝ち」
その言葉に、下っ端達は自分に待っている未来を察す。
怒りなど霧散し、恐怖と懇願に俺が俺がと身を捩る。
「はい君」
一際激しくアピールした一人が猿轡を外され、歓喜の表情を浮かべた。選ばれなかった他は絶望している。
「お、教えます!教えますからっ、命だけは助けて下さい!」
「んー」
「――ッ!!(こいつッ)」
部下の醜態に激怒するピエロだが、今の彼には威厳も何もない。部下が言うことを聞くはずもないのだ。
「まさこれ持って」
「結局俺が運ぶのかよ……」
簀巻きから伸ばした蔦を、一本に纏めた物を渡された。歩けば全員が引き摺られてついてくる。
運び方が雑にも程があるが、こいつらに同情することなど何もない。
下っ端の言う道を進もうと彼等に背を向けた、直後、
(舐めてんじゃ、ねぇッ!!)
バレないよう静かに形成され、打ち出されたた二本の水の槍が、東条の背中を捉えた。
(ッ死にやが……は?)
ピエロが幻視したのは、貫かれ、血を吹き出す東条の姿。
しかし実際に目に映ったのは、背中に衝突すると同時に弾け飛んだ、水魔法の残骸であった。
「魔法食らったの久々だわ~!うわ、穴開いちゃってんじゃん。濡れたし!」
「この程度なら強化しなくても怪我で済んだ」
「怪我はやだよ」
魔法が直撃したにも関わらず、楽しそうに会話する二人。
その異質さに、ピエロはようやく恐怖を感じたのだった。
細やかな実験を終えた東条は、無言でピエロに近づき膝を曲げる。
慌てて形成される水魔法を平手打ちで叩き壊し、そのまま無言で髪の毛を掴み、丘の縁まで引き摺って行く。
「面倒臭いから、抵抗しないことっ」
「――っ!?」
言うが早いか、ピエロの頭部を水面に押し付けた。
数秒藻掻き苦しませた後、引き上げる。
「――っブふっ、グフゥ、ブフッ」
「……抵抗しないこと」
「――っ!?」
ピエロは二度目の潜水の後、また引き上げられる。口に木片が詰まったままのせいで、全く息ができない。
脳内を支配するのは、何の躊躇いもなく水攻めをするこの男への恐怖と、焦り。
「抵抗しないこと」
「んんッ――っ!!」
三度目の潜水の瞬間、ピエロは必死に魔力を練った。
「……おお」
その結果に、東条が少しだけ驚く。
彼の顏の周りだけ、水が避けていた。他の場所に顔を押し付けるも、またも避けられる。
精密且つ、大胆な魔法操作技術。荒く鼻呼吸を繰り返すピエロを、純粋に勿体ないと感じた。
「……抵抗しないこと」
「ブガっ!?」
足元のぬかるんだ土に、顔面を押し埋めた。
――「大人しくなってくれて良かったよ」
完璧に戦意喪失し、茶色く汚れたピエロを引き摺って元の場所に戻る。
待機していた他の簀巻きは、拷問とも呼べる光景に声すら出せなくなっていた。
「そうだ。お前水魔法使いなら服の水とれんだろ?」
「……」
「どーもどーも。んじゃ行くか」
「ん」
煩わしい喧騒が無くなり、心地よい静寂が訪れた後、何事もなかったかのように歩を進める二人であった。
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