こんなスローライフは想定外!~いつの間にか、親友を虜にしてしまっていたようで!?~

うみくも

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Step8 縁切り魔族降臨!? 強制テレパシーで大混乱!

別の意味でも〝ごちそうさま〟


 想定外の事態に頭は痛くなったけど、これほど重症であってくれたのはありがたい。


 自分がきっかけで破局なんてことになっていたら、フィレオトールたちにもゼクにも顔向けできなくなるところだった。


 ……なんて本音はしまっておき、ジノンは溜め息混じりに二人を見つめる。


「久々に見たわ。そこまでの純愛。」


「当たり前。この程度で愛想を尽かす程度なら、魔領にまでついてこねぇよ。何年かけて仕込んできたと思ってんだ。」


「あんた、逆の意味ですごいわね。普通、本人を目の前にして〝調教しました〟って暴露する?」


「だって、もうばらした後だし。その分きちんと幸せにするつもりだし。」


「あ、そう……」


 もはや、ツッコミにも疲れたらしい。
 ノクスのドヤ顔を、ジノンはスルーするだけであった。


「ねぇ、フィル。話は変わるんだけど、今度ゼク様に会ったらコレを渡してくれない?」


「へ? どれ?」


 恥ずかしい話から脱却したと分かった瞬間、すぐに顔を上げて振り返ってくるフィレオトール。


 あまりにも分かりやすい態度に危うく噴き出しそうになりながらも、ジノンはフィレオトールに丸めた紙片を渡す。


「城への直通テレポートスクロールよ。あんたに全部任せるのも忍びないと思って、城に戻ってから作ってきたの。」


「なるほど、分かった。魔族用ロープでぐるぐる巻きにした上で使ってあげる。」 


「助かるわ。それと―――」


 ぽん、と。
 ジノンがフィレオトールの肩に両手を置いたのはその時。




 それを疑問に思ったフィレオトールがスクロールから顔を上げたところで―――ジノンは、問答無用でその唇を自分のそれで塞いだ。




「~~~っ!? ◎◇△#□%~っ!?」


 とっさのことにフィレオトールが暴れそうになるが、ジノンの両手はその顔をがっちりとホールド。


 結果的に、彼の抵抗は手をバタバタさせることで終わり、パニックの奇声だけがむなしく響く。


「おい! 何してんだ、てめえっ!?」


 当然ながら、突然恋人の唇を奪われたノクスは激怒。


 しかし、悪夢はまだ終わらない。


 フィレオトールを解放したジノンは、よろよろと崩れ落ちていく彼には構わず、飛び付いてきたノクスの胸倉を引き寄せる。


 そして、フィレオトールにした熱烈なキスをノクスにもお見舞いしたのだ。


「んんんんんんんんん、んんん―――っ!?」
(何考えてんだ、お前―――っ!?)


 まさかの展開に、ノクスも大混乱。


 しかし、十秒ほどが経過したくらいで、その抵抗は一気に消えることに。


 その後ジノンが唇を離すと、ノクスもフィレオトールと同じように床に膝をついてガックリとうなだれた。


「あ~っ♪ おいっし~♪」


 一方、ジノンは赤らんだ頬を両手で挟み、恍惚とした表情で息をつく。


「やっぱり、恋人たちの精気って最高! 久々だからか、余計に身に染みるわぁ~♪」


「だからって、容赦なく持っていきすぎだ…っ」


「普段はちゃんと配慮してるって、本当のことだったんだね……」


 有頂天のジノンにノクスが物申し、フィレオトールは覇気のない声で呟く。


 初めて精気を吸われたけど、これはやばい。
 体に力が入らないし、頭もぼーっとして何もしたくない。
 これはもはや、精気じゃなくて生気を吸われてません?


 以前遠目に紹介されたジノンのお気に入りカップルが大層元気だったので、精気を吸われるという現象を軽く見ていた。


 彼女が無尽蔵に精気を食らうような性格だったら、何人もの人間が彼岸を拝んでいたかもしれない。


「安心しなさいよ。あんたらほどの仲なら、あっという間に精気も回復するって。それにしても、こんな身近にご馳走ができるなんてラッキー♪ これからは何でも相談して。あんたらのラブラブ維持のためなら、喜んで協力するわ。」


「あんなにノクスをまくし立ててたのに、協力はするのね……」


「精気を吸うなとは言わんが、口からの摂取だけはやめてくれ。いろんな意味でダメージを食う……」


「オッケー♪ でも、ここまで精気が甘くなるくらいだから、テレパシー自体はまんざらでもなかったんじゃいの?」


 そこでよからぬ笑みをたたえたジノンは、ノクスの前にしゃがんで顔を寄せる。


「実際のところ、どうだったの? 心の声ダダ漏れの夜は?」
「あー…」


 途端に、くうへと視線をらすノクス。
 そんなノクスに、ジノンはにやにやである。


「あんたら、朝までよろしくやってたそうじゃない。そーんなによかったのぉ?」
「いや、な……」


「ふむふむ?」
「真面目な話、ガチで最高の一言に尽きるっていうか……」


 語るノクスはゆめうつつといった表情だ。


「確かに、いい機会ではあったわ。仕草や態度で分かってたつもりなんだけど、実際にあんなことやそんなことが聞けるとなぁ……」


「こらこら、脳内リピートはやめなさい。音声だけなら、あたしにも届くんだっての。まあ、よかったんじゃない? ちゃんと気持ちいいって思ってたのが分かったんなら。」


「ほんとそれ。いつもわんわんと泣くから、本当にたまにちょっとだけ不安になるんだけど、それも昨日で綺麗に解消だわ。」


「泣かせてやるんじゃないわよ……」


 ドサッと。
 やたらと重たげな音が響いたのはその時のこと。


「お願い……やめて……やめて……」


 ノクスとジノンが視線を巡らせた先では、床に倒れたフィレオトールが耳までどころか全身を真っ赤にして目を回していた。


 そして、数秒と経たずに気絶。


 精気を存分に吸われた後だからという要因もあるだろうが、恥ずかしさに耐えられなかったようだ。


「あ、フィルが死んだ。」


「やっぱりウブっ子なのねぇ。そんなディープな話したっけ? 免疫なさすぎない?」


「これでも、多少はマシになったんだぞ? とりあえず、ベッドに寝かせてくるか。」


 苦笑しながら、ノクスは軽々とフィレオトールを抱いて立ち上がる。
 リビングを去っていくノクスを見送り、一人取り残されたジノンは……


「あらやだ。ちょっと昨日のことを思い出しただけで、もう立てるくらいまで精気が回復したわけ? どんだけベタ惚れなんだか。……でも、ありがとう。」


 かなり頑丈かつ極上のえさたちに、全力のグッドサインを向けるのであった。


 フィレオトールとノクスは、まだ知らない。


 この後、二人の精気に味を占めたジノンによって、定期的に強制テレパシーの刑に処されることになろうとは。

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