118 / 125
Step12 世界一愛しい日に贈る最高の誓い
色んな意味でデレデレの主役
しおりを挟む……とまあ、極秘で会議はしたものの、誕生日パーティーの会場はブルペノンの研究場。
必死に隠したところで限界があるので、ノクスは正直にパーティーのことをフィレオトールに伝えた。
レアルや精霊たちに加えて、今年はゼクやジノンもパーティーに参加してくれると知ったフィレオトールはキラキラ顔。
ここ数年は二人でささやかにお祝いしていたので、親しみを持っている人しか集まらないパーティーにテンションが爆上がりようだ。
すぐにノクスを連れて買い出しに向かったフィレオトールは、ものすごくご機嫌で食器や食材を選んだ。
途中でゼクたちの好みが分からないことに思い至り、慌てて精霊たちをスパイにして情報を集めていたけれど。
そして、誕生日当日は誰に起こされるでもなく日が昇る前から起きて、いそいそと客人を迎える準備をしていた。
レアルの呼び掛けで集まった旧グレイス商会の人々や精霊たちの協力もあって、本番前から大層な盛り上がりようだったとも。
そして、日が傾き出した頃―――
「はーい、お疲れさーん。」
「お呼ばれに来たぞー。」
第一陣の客人として、ゼクとジノンが研究場を訪れた。
「ゼク、ジノン、いらっしゃーい。」
パタパタと彼たちに駆け寄るフィレオトール。
その姿は、まさに一家のお嫁さんである。
「今日はわざわざありがとー♪」
「わ…っと。」
突然抱きついてきたフィレオトールに、ジノンは目を丸くする。
「ジノンが来るって聞いて、本当に楽しみだったんだー。ちょっとした物しか用意できてないけど、ゆっくりしていってね。」
「え、ええ……」
フィレオトールに抱き締められた体勢のまま、横目で彼を見つめるジノン。
その目が、そろそろとノクスに移る。
「……急に子犬? 一気に距離感が縮まったんだけど。」
「猫のスーパーデレモードだと思ってくれ。」
「ああ……なるほど?」
「ついにジノンもそのレベルに到達したかー…。俺も、初めてそれをやられた時にはビビって固まったのなんの。」
ノクスの解説を聞きながらも疑問符を飛ばしまくるジノンに、ゼクがだめ押しでそう言ってうんうんと頷く。
「ちなみに、一度そこまで気を許した相手には、常時こうなるから。」
「マジ?」
「まあ、じいちゃんたちが来れば分かるさ。」
ノクスはやれやれと息をつくだけ。
どうやら、あとは自分の目で確かめろということらしい。
それを察したジノンは、にこにことしているフィレオトールの前に二つほどの紙袋を掲げた。
「ノクスに聞いたんだけど、あんたって辛味か酸味が効いた料理が好きなんだって? レアルも魔獣料理で悩んでたから、魔王城の城下町でそういう料理に強いシェフに作らせてみたんだけど、食べる?」
「うわぁ、本当に!? 食べる食べる!!」
さすがはノクスのチョイス。
それを聞いた瞬間、フィレオトールの表情がより一層輝いた。
「嬉しいなー。魔獣ってそのままだとくせが強いから、そういう味付けが合うんじゃないかって思ってたんだよ! ……うん、香辛料が効いてそうないい匂い~。食べるの楽しみー♪ 美味しかったら、ぜひともシェフを紹介してね!! 衣食住込みで受け入れるから!!」
るんるん気分でジノンから紙袋を受け取り、フィレオトールはスキップで台所へと引っ込んでいく。
「ご機嫌な耳と尻尾が見える……」
「本当は、ああいうフィルを見せるの嫌なんだけど……今日だけ特別だからな。」
「って言ったって、今後あたしにはああなんでしょ?」
「うっ……仕方ない。自重しろって言っても、あれは直らんからなぁ……」
心底複雑そうなノクス。
そして、その複雑さはこの三十分ほど後に大きく膨らむことになる。
「フィルや、久しぶりじゃのう!!」
次に訪ねてきたのは、ジェアンとアイザック・セレン家族だ。
「お祖父様! 会いたかったー♪」
これまた健気にお出迎えに向かったフィレオトールは、ジノンと同じようにジェアンにも抱きつく。
じじバカのジェアンはジノンのように戸惑いはせず、普段の強面からは想像もつかないほどに表情をとろけさせてフィレオトールに頬ずりをした。
「この馬鹿孫め。二年以上も手紙だけで済ませおって。じい様がどれだけ気を揉んだと思っとる!!」
「ごめんねー、のんびりしすぎて。これからは、定期的にこうして会おうね。」
ベタベタに甘えまくる双方。
こうなった二人は長いからと大半が遠慮する中、そこに切り込む猛者が二人。
「フィル、お誕生日おめでとう。シェリーが長くは起きられないから、先に挨拶させてもらっていい?」
「もっちろん! セレンも久しぶりだね。」
ハイテンションながらも完全に理性を忘れているわけではないフィレオトールは、すぐに意識を切り替えてセレンに向き合った。
「シェリーちゃんも久しぶり。……って、覚えてないよねー? 会ったっていっても、生まれたばかりの時に一回だもんねー。こっちに来るー?」
「………?」
セレンに抱かれているのは、生後一歳の娘であるシェリー。
パチパチと瞼を叩いたシェリーは、どこか不思議そうな表情でフィレオトールを見つめた後……
「う!」
にぱっと笑って、小さな両手をフィレオトールに伸ばした。
「はあぁ~、やっぱり可愛い♪ 人見知りしないなんて、シェリーはコミュニケーション能力が高いんだねぇ。」
「それ、あなただからよ。本能的に分かるんじゃないかしら。精霊の加護の一部を分け与えてくれたのがあなただって。他の人がだっこすると結構派手に泣き喚くのよ?」
「ええー? そうなのー?」
「あうー……フィー、フィー。」
「あら、すごい。もう僕の名前を呼ぼうとしてる。ママに僕のことをたくさん聞いたのかなー? シェリーは賢いねー♪」
早くもデレデレのフィレオトール。
おじバカルートは確定のようだ。
「シェリーにフィルのことを教えてるのは、フィルが守りにつけた精霊たちなんだけどね……」
「ん? シェリーって、精霊が見えるのか?」
「そうみたい。聖女の子供ってことに加えて、生まれた直後にフィルが祝福を授けたおかげかしら。言葉を話し始めてからは、よく空中に向かっておしゃべりしてるわよ。」
「ほほぉ……」
「おい、ノクス。気楽に構えてる場合か?」
セレンと話しながら感嘆の息をつくノクスの脇腹を、アイザックが複雑そうな表情でつつく。
「このままだと、シェリーや領主様にフィルを取られそうだけど? 二人きりの時間を確保する準備はしてんだろうな?」
「……あ、やべ。フィルを喜ばせることに集中しすぎて、そこまでは考えてなかった。」
「ちなみにだが、フィルと付き合ってることを領主様には……」
「………」
アイザックが問うた瞬間、ノクスの額から滝の勢いで冷や汗が噴き出す。
答えは明白であった。
「とりあえず、祝いの日に大噴火は避けないといけないよな。手分けして、周りに口止めしまくるか。」
「……すまん、助かる。」
全てを悟った兄貴分がそう告げると、弟分は両手を合わせて彼を拝む。
結果として、セレンとシェリーの割り込みはファインプレーとなったのだった。
5
あなたにおすすめの小説
転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される
Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。
中1の雨の日熱を出した。
義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。
それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。
晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。
連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。
目覚めたら豪華な部屋!?
異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。
⚠️最初から義父に犯されます。
嫌な方はお戻りくださいませ。
久しぶりに書きました。
続きはぼちぼち書いていきます。
不定期更新で、すみません。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です
新川はじめ
BL
国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。
フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。
生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
魔王様が子供化したので勇者の俺が責任持って育てていたら、いつの間にか溺愛されているみたい
カミヤルイ
BL
顔だけが取り柄の勇者の血を引くジェイミーは、民衆を苦しめていると噂の魔王の討伐を指示され、嫌々家を出た。
ジェイミーの住む村には実害が無い為、噂だけだろうと思っていた魔王は実在し、ジェイミーは為すすべなく倒れそうになる。しかし絶体絶命の瞬間、雷が魔王の身体を貫き、目の前で倒れた。
それでも剣でとどめを刺せない気弱なジェイミーは、魔王の森に来る途中に買った怪しい薬を魔王に使う。
……あれ?小さくなっちゃった!このまま放っておけないよ!
そんなわけで、魔王様が子供化したので子育てスキル0の勇者が連れて帰って育てることになりました。
でも、いろいろありながらも成長していく魔王はなんだかジェイミーへの態度がおかしくて……。
時々シリアスですが、ふわふわんなご都合設定のお話です。
こちらは2021年に創作したものを掲載しています。
初めてのファンタジーで右往左往していたので、設定が甘いですが、ご容赦ください
素敵な表紙は漫画家さんのミミさんにお願いしました。
@Nd1KsPcwB6l90ko
天使のような子の怪我の手当てをしたら氷の王子に懐かれました
藤吉めぐみ
BL
12/23後日談追加しました。
=================
高校の養護教諭の世凪は、放課後の見回り中にプールに落ちてしまう。カナヅチの世凪は、そのまま溺れたと思ったが、気づくと全く知らない場所にある小さな池に座り込んでいた。
ここがどこなのか、何がどうなったのか分からない世凪に、「かあさま」と呼んで近づく小さな男の子。彼の怪我の手当てをしたら、世凪は不審者として捕まってしまう。
そんな世凪を助けてくれたのは、「氷の王子」と呼ばれるこの国の第二王子アドウェル。
冷淡で表情も変わらない人だと周りに言われたが、世凪に対するアドウェルは、穏やかで優しくて、理想の王子様でドキドキしてしまう世凪。でも王子は世凪に母親を重ねているようで……
優しい年下王子様×異世界転移してきた前向き養護教諭の互いを知って認めていくあたたかな恋の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる