罪の風~忘却の言葉~

夏の地蔵

文字の大きさ
上 下
1 / 27

指先の夢

しおりを挟む

私は自慢じゃないけど

美容師だ

おしゃれだなと友人達は褒めてくれる

自慢じゃないけど

昔ピアノをやっていた

美術も

芸術センスを褒められていた

専門学校の大会でも優勝じゃないけど賞をとった

働いてお金を貯めてやっと自分のお店を持てた嬉しい


ある日開店するのは数ヶ月後なのだが

店となる場所の前に

黄色の絵の具が落ちていた

拾うと

ーいやなんでしょー

えっ

一瞬女の子の声が聞こえた

足下に絵の具は落としてしまった

だがない

足先にぶつかったのに

その日は気にも止めなかった

そして開店間近になったあと2週間

急にめまいがしてベットに倒れ込んだ

夢を見た

学生のときの夢だ

確かピアノいやいや弾いていたんだっけ

学校の曲ばっかだし

プッレシャーが重たかった

ーいやなら指いらないよねー

えっ?

目が覚めた

スマホ持とうとすると

落としてしまった

なにかぬめりがあるし

手を見ると全ての指がないのと

鉄の匂い

急な激痛が走って

目の前には白いワンピースの少女が笑顔で立っていた

誰?


あれから友人が救急車を呼んでくれた

私の指は見つかることなく

開店する夢を諦めた

学生の頃私は

嫌だ曲弾く気分じゃない

なら指いらない

弾きたくない

と言ったことを思い出した
しおりを挟む

処理中です...